吉野山花の句会報告(2023年4月9,10日)
4月9日
・王淑英選
〇俳諧も花も西行ありてこそ 一爽
〇花吹雪生きて死すそれだけのこと 和華子
〇花冷の山は大きく胡坐かく りえこ
〇花散つてやさしき緑吉野かな 沙羅
〇薄紅の丸さがゆかし八重桜 淳子
〇つばくらのやうに自在の一句欲し 美津子
花追うて奥へ奥へとゆきし人 美津子
修験道駆け抜けて花の句会へと 史生
蔵王堂の方より春の太鼓かな 美智子
下りてゆく花の名残やロープウェイ 史生
マスクとり奥千本の花を見に 洋子
もつれあふ風のたのしき桜かな 久美
花ざかりいつしか過ぎて夕桜 洋子
花な散りそ花な散りそ思へど 二本
今散りし花もあるらん吉野山 りえこ
それぞれの花持ち寄りて今日の句座 雄二
神さぶる古道分け入る花の奥 遊歩
花散つてすまなさそうな女将かな きよみ
葉ざくらの句座熱中の二十人 みさ子
花惜しむ心を山へ置きしまま りえこ
花追ふて花の庵のその奥へ 史生
吉野山さつさと春を追ひ出すか りえこ
山の木になりゆく花の中千本 竜樹
花過ぎの水冷たさよ吉野川 光枝
・村松二本選
〇花ふぶく櫻花壇の朽ちゆくも 光枝
〇またきみに会へるよろこび花の山 一郎
〇笠一つ置かれて軽し花の上 櫂
〇山は吉野花は木花咲耶姫 櫂
〇大岡忌吉野百句を参らせん 沙羅
〇しろがねの花の朧といふべかり 櫂
〇ひとすじの蛇垂れてゐる花の昼 陽子
〇花追つて象の小川を大鰻 雄二
百歳の岡野先生花の旅 櫂
花守のこころを辿る奥千本 一郎
淋しろの烏が鳴くよ花の庵 陽子
奥の奥千本の花のこりけり 一爽
この宿の灯のなつかしき桜かな 竜樹
それぞれの花持ち寄りて今日の句座 雄二
こんにやくの草いろ春の愁ひかな 竜樹
旅衣桜吹雪にすすがばや 櫂
・長谷川櫂選
〇花ふぶく櫻花壇の朽ちゆくも 光枝
〇野馬の大塊ならむ吉野山 陽子
〇花冷や思案の円座ひとつ欲し 久美
仏とも鬼ともなれず花の塵 りえこ
花冷のしじまに櫻花壇かな 雄二
厨事ひと日忘れて花の旅 陽子
花の塵総出で拭ふ貯木場 史生
あをあをと葉桜ゆるゝ吉野建 光枝
大岡忌吉野百句を参らせん 沙羅
この闇のどこかが花でありにけり 一郎
われを待つただ一本の桜あり 一郎
4月10日(月)
・王淑英選
〇若葉して五郎兵衛茶屋の昼の酒 忠雄
〇千年の花の具足も散り散りに 竜樹
〇つばくらめ吉野にあそぶ人見おろす 沙羅
〇花のころ逝きし詩人の心意気 遊歩
〇うぐひすのこゑ跳ね返る朝日かな 竜樹
〇六地蔵花の奈落の隅にあり みさ子
〇南朝の物語せむ花の露 陽子
花散つて吉野の風となりにけり 二本
思ひ出は花のこもれびばかりかな 櫂
葉桜といふ安けさを家包に 忠雄
꾀꼴(ケッコル)と鳴く鶯が新羅より りえこ
薄墨で花の一句や花の宿 洋子
存分に花に遊ばん塵の世ぞ 和華子
西行につづけつづけと花を追ひ 沙羅
くらくらと命を揺らす山桜 雄二
さくらばな白すさまじく更けゆきぬ 和華子
花過ぎの山朗々と日が登る 光枝
一本の桜に眠る吉野かな 一郎
春寒やひとくせ違ふ吉野山 一爽
詠みかはすみ吉野の山漉きこまん 久美
うぐひすの峰から峰へこゑ伸ばす 竜樹
吉野建枕の下の花の声 久美
・村松二本選
〇一椀の茶粥に花のふぶきけり 美津子
〇神宿る花の一枝かざしけり 光枝
〇幾度も花の吐息に目覚めけり 陽子
再会やさくらふぶきを乗り継いで 一郎
葉桜へ漕ぎ出す渚吉野建 遊歩
꾀꼴(ケッコル)と鳴く鶯が新羅より りえこ
一枚のおぼろを漉きて吉野紙 美津子
奥駆けのいまどのあたり桜かな きよみ
揮毫せし句々うたひ出す花月夜 遊歩
佐保姫の寝息かそけし吉野山 久美
千歳の恋の衣や花の中 陽子
・長谷川櫂選
〇一椀の茶粥に花のふぶきけり 美津子
〇千年の花の具足も散り散りに 竜樹
〇鶯は頭上一尺吉野山 雄二
〇一本の桜に眠る吉野かな 一郎
〇しまひ湯の空に大きな春の月 美津子
〇櫻花壇大看板も花の塵 竜樹
六地蔵花の奈落の隅にあり みさ子
日の暮れて花冷一気吉野建 雄二
吉野紙花の一句をつぎつぎと 光枝
朝ざくら天を揺らして吉野かな みさ子
花冷の五臓六腑へ桜粥 光枝
花の旅けふは寝待ちの月の下 美津子
囀りや朝日に並べ杉の箸 美津子
神宿る花の一枝かざしけり 光枝
花冷の我が身いたはる茶粥かな 洋子
꾀꼴(ケッコル)と鳴く鶯が新羅より りえこ