古志金沢ズーム句会(2023年1月15日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
らくがんやかんと打ち出す花の春 飛岡光枝
花びら餅ほのかに春の透けてをり 稲垣雄二
寒気団空の渚を軋ませて 玉置陽子
怖きことあつけらかんと手毬唄 藤倉桂
ぐいと首伸ばして寒さ払けり 密田妖子
愚かなる人の世なんの冬樹の芽 越智淳子
風花の彼岸より来て彼岸へと 氷室茉胡
愚かなる人類にして初笑 田村史生
ぼんやりと見ゆる天国薄氷 氷室茉胡
ビル群や冬青空を凸凹に 密田妖子
【入選】
厳寒の音残し去る郵便夫 花井淳
凍てし真夜いらつしゃいませと自販機 川上あきこ
初空のかなたに暗き戦地かな 間宮伸子
繭玉やそよりと戦ちかづき来 安藤久美
子の春着手伝ふ妻の春着かな 稲垣雄二
抱きしめる冬木息づく深山かな 梅田恵美子
山ひとつ雪にうもれて蕪寿し 飛岡光枝
大氷柱熱き涙をしたたらす 趙栄順
初旅や運転席の斜め横 宮田勝
地獄絵の炎となりし焚火かな 橋詰育子
松過ぎの本屋にわれを忘れをり 橋詰育子
寒卵平和祈りし掌 松川まさみ
伸び上がる鳥のかたちの樹氷かな 趙栄順
禍々しい世に喜寿てふ春あらた 越智淳子
凍星や恐竜眠る岩襖 花井淳
蕪寿し氷見の白雪連れてきし 近藤沙羅
三日はや刷毛もつ塗師の背中かな 泉早苗
四温晴れ絹裂く声で鳴き交はす 密田妖子
帯ぽんと叩けば響く春着かな 長谷川櫂
太陽に泣き出しさうや雪うさぎ 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特選】
山ひとつ雪にうもれて蕪寿し 飛岡光枝
踏み込みを深く深くと寒稽古 稲垣雄二
大氷柱熱き涙をしたたらす 趙栄順
振出しに戻る心地よ初句会 田村史生
三日はや刷毛もつ塗師の背中かな 泉早苗
【入選】
老犬を寿ぎ集ふ初雀 山本桃潤
まつ白な葉牡丹にあるしじまかな 間宮伸子
みな育ち座敷がせましお正月 酒井きよみ
子の春着手伝ふ妻の春着かな 稲垣雄二
白山の神の目覚むる初日かな 趙栄順
巌のごとき師の胸借りん初句会 趙栄順
きしみつつ廻る輪蔵厄払ふ 泉早苗
あらたまの光集めて蕪寿し 飛岡光枝
第二句座(席題:節分、大根干す)
・長谷川櫂選
【特選】
福豆の掌に乗りきらぬこと目出度 佐々木まき
方丈をぐるりと囲み大根干す 飛岡光枝
その奥に月もあらはれ懸大根 田村史生
大根のかくも萎れる日数かな 佐々木まき
五十年大根を干す女かな 趙栄順
【入選】
風の道ここと定めて大根干す 清水薫
節分や新人芸妓のお酌受く 花井淳
大根干す親父の背中今もなほ 清水薫
福豆の五色をえらぶ祇園下 泉早苗
大根干す白山からの風の中 清水薫
ここの村軒先どこも干大根 越智淳子
太陽や笊にきのこと干大根 梅田恵美子
痩せ村のそこだけ青き掛け大根 安藤久美
健やかに萎びて嬉し干大根 玉置陽子
大寺や太き丸太の大根稲架 酒井きよみ
年の豆一桁ひきて頂きぬ 佐々木まき
江の島のみどり遥かに大根干す 飛岡光枝