古志金沢ズーム句会(2022年12月18日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
結ばれて海鼠と海月初詣 山本桃潤
冴ゆる夜の底ひへ母を置きて来ぬ 玉置陽子
すつぽりとビル抜けし空年の暮れ 密田妖子
繙きていくたび会はん冬すみれ 宮田勝
鷹の眼の一閃ささる世界地図 宮田勝
一陽来復釜の飯噴き始む 酒井きよみ
鮟鱇の口の中なる怒濤かな 玉置陽子
蕪寿し日に日に白き山一つ 飛岡光枝
【入選】
障子開け流星群を待ちゐたり 田村史生
皺動き象立ち上る冬日かな 長谷川櫂
綿虫や我が吐く息と遊びをり 梅田恵美子
おまけ楽しみグリコ百年の冬 間宮伸子
冬晴や優美な富士の釘隠し 近藤沙羅
喘鳴も命の証し雪しんしん 田中紫春
日溜りに遊ぶ子どもや冬すみれ 飛岡光枝
乾鮭や眼いまなほ語るかに 越智淳子
身の内の悲鳴確かに霜の夜 藤倉桂
冬ざるるものに手の爪足の爪 趙栄順
人ならぬものが背押す十二月 趙栄順
日向道選んで歩く初詣 佐々木まき
初雪や花のごときを草の上 橋詰育子
山茶花や人の行き来に咲いて散り 佐々木まき
うぶすなの門松ならん剱岳 酒井きよみ
クリスマスローズ無言の襟たてて 松川まさみ
少年に母の面影冬すみれ 趙栄順
薦掛けし土塀と謡加賀の粋 密田妖子
冬の鷺一枚の田を守るごとく 橋詰育子
白鳥はちぎれし雲のひとひらか 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】
寒晴や海の果なる大砂丘 田村史生
繙きていくたび会はん冬すみれ 宮田勝
鮟鱇の口の中なる怒濤かな 玉置陽子
蕪寿し日に日に白き山一つ 飛岡光枝
しのびよる戦の気配日向ぼこ 梅田恵美子
【入選】
いつしかにかさねし齢柚子湯かな 橋詰育子
峡の村おそき初日を拝みけり 安藤久美
その嶺に三日月氷る山一つ 飛岡光枝
喘鳴も命の証し雪しんしん 田中紫春
松飾る手に風花の散り始む 越智淳子
掻きよせてけふ一日の落葉かな 安藤久美
一陽来復釜の飯噴き始む 酒井きよみ
甘露煮用鯊釣ることも年用意 近藤沙羅
初雪や夕べに焚きし反故の上 松川まさみ
冬虹を見つけて会議中断す 田村史生
日向道選んで歩く初詣 佐々木まき
雲上に白より白し初白山 清水薫
昼すぎてすぐに夕方雪婆 山本桃潤
友逝きて早や十五年落葉掃く 清水薫
冬霧をまとふて冷ゆる山の木々 梅田恵美子
第二句座(席題:寒禽、春着)
・鬼川こまち選
【特選】
父の胸に抱き上げらるる春着かな 長谷川櫂
脱ぎ捨てて春着の海となりにけり 趙栄順
寒禽と出会ひし吾も孤独なる 氷室茉胡
肩揚げのとれて春着や花となる 泉早苗
寒禽やちぎれんばかり風の声 安藤久美
寒禽の飢えに飢えたる声ならん 趙栄順
【入選】
きしきしと抜く仕付け糸春小袖 玉置陽子
波荒き海のひと日や冬の鳥 梅田恵美子
寒禽の二羽きてすぐに飛び立ちぬ 近藤沙羅
胸去らぬ飢餓や戦争晴着かな 松川まさみ
日あたりに丸き塊冬の鳥 松川まさみ
母縫ひし春着嬉しく飛び跳ねる 橋詰育子
寒禽の啄む風の河口かな 山本桃潤
飛びゆける速さや風と冬の鳥 花井淳
棒立ちの吾娘組み立てる春着かな 藤倉桂
赤い実をこぼしてゆきぬ冬の鳥 酒井きよみ
寒禽や苦吟の脳へ一撃を 密田妖子
嫁ぐ日も近き娘の春小袖 清水薫
五十年昔の晴れ着広ぐ妻 山本桃潤
脱ぎ捨てて走り出したり春着の子 梅田恵美子
春着の子花のごとくに眠りけり 飛岡光枝
・長谷川櫂選
【特選】
脱ぎ捨てて春着の海となりにけり 趙栄順
胸去らぬ飢餓や戦争晴着かな 松川まさみ
寒禽の飢えに飢えたる声ならん 趙栄順
【入選】
寒禽のつぎつぎに来てとまる枝 橋詰育子
きしきしと抜く仕付け糸春小袖 玉置陽子
街をゆく春着の妻やひらひらと 飛岡光枝
梅桜桃咲き満ちる春着かな 越智淳子
遊ぶには春着の裾が気にかかる 間宮伸子
寒禽の二羽きてすぐに飛び立ちぬ 近藤沙羅
肩揚げのとれて春著や花となる 泉早苗
まづ猫に出来栄へを聞く春小袖 稲垣雄二
飛び立ちて知る寒禽のをりしこと 近藤沙羅
競ひては姿見に立つ春着かな 玉置陽子
春着の子花のごとくに眠りけり 飛岡光枝