第一句座　　　　　　　　　　　　　　
・矢野京子選　
【特選】
我が祖国よ捕はるるより凍え死なん　　　米山瑠衣
大冬木裸一貫の力かな　　　　　　　　　安藤文
聞くまじと耳をなくせし海鼠かな　　　　菅谷和子　
【入選】
あをあをと穭伸びをり枯るるため　　　　矢田民也
くれないのセーターを着て母の冬　　　　安藤文
ブラボーのこゑ列島に十二月　　　　　　大場梅子
まず犬が陣取るこたつの戦かな　　　　　ストーン睦美
一生の初めと終わり蒲団かな　　　　　　石塚純子
煮凝は大きな鍋の形かな　　　　　　　　斉藤真知子
生や死やゆきわたりたる寒暮光　　　　　城山邦紀
大綿や見つけてくれぬかくれんぼ　　　　神戸秀子
日向ぼこ蠅獲蜘蛛の虎丸と　　　　　　　長谷川櫂

・長谷川櫂選　
【特選】
ワイパーでさつと払ふて初時雨　　　　　矢野京子
冬晴れや子に歩を合はす象の母　　　　　夏井通江
鮟鱇や混沌として袋詰め　　　　　　　　米山瑠衣
【入選】
安産と護摩木に記す小春かな　　　　　　河本秀也　　　
改めて戦争を知り年惜しむ　　　　　　　安藤文
枯るるものうつくしければ壺に挿す　　　神戸秀子
虎河豚の憤怒の顔を捌きけり　　　　　　斉藤真知子
天翔くる麒麟となれや花の春　　　　　　大場梅子
冬めくや引潮速き厳島　　　　　　　　　河本秀也　　
聞くまじと耳をなくせし海鼠かな　　　　菅谷和子
北国の冷えを放ちて林檎在り　　　　　　夏井通江
朴落葉おほきな音を一度きり　　　　　　神戸秀子

第二句座（席題：山眠る、絵双六）
・矢野京子選　
【特選】
双六や窓にもありて富士の山　　　　　　神戸秀子　　　　　　　　　　　
波のかなた雲のかなたへ絵双六　　　　　長谷川櫂
列島は沸き立ち山は眠りけり　　　　　　安藤文
【入選】
コサックが勝ちてあがりや絵双六　　　　菅谷和子
ふかぶかと力を溜めむ山眠る　　　　　　石塚純子
何時か火を噴くとも見えず山眠る　　　　岡村美沙子
絵双六なぜかとまれぬ箱根の湯　　　　　ストーン睦美
好きなだけ日にふくらんで山眠る　　　　神戸秀子
人の世のこととはしらず絵双六　　　　　長谷川櫂
人生は死んで上がりよ絵双六　　　　　　ももたなおよ

・長谷川櫂選　
【特選】
絵双六ひとり上がれば寂しけれ　　　　　矢田民也
絵双六三年ぶりに孫とせん　　　　　　　安藤文
山眠る道ふたまたに岐れゆき　　　　　　矢田民也
【入選】
しんしんと大佐渡小佐渡眠りけり　　　　安藤文　
はらからの逝きし今年や山眠る　　　　　石塚純子
まわり道してこそ愉し絵双六　　　　　　ももたなおよ
花抱き吉野の山の眠りけり　　　　　　　斉藤真知子
若き日の母ゐるごとく絵双六　　　　　　斉藤真知子
人生は死んで上がりよ絵双六　　　　　　ももたなおよ
孫に負け振り出しうれし絵双六　　　　　城山邦紀
同じ景行きつ戻りつ絵双六　　　　　　　原京子