古志広島ズーム句会(2022年7月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
なすべきをなし花火師の闇の底 矢田民也
青葉木菟神宮の杜嘆きをり 安藤文
夢の世に空より青き団扇かな 長谷川櫂
【入選】
かぐわしき大地に放つ牛の尿 高橋真樹子
さくらんぼ一人欠けてもさびしいよ 大場梅子
ドナルド・キーン展片蔭を拾ひつつ 飛岡光枝
へらへらと骨無し団扇世を煽ぐ 原京子
もの捨てることが引つ越し青葉風 矢田民也
曲線美見せつけてゆく蚯蚓かな 安藤文
小鰯の銀光る梅雨入かな 河本秀也
数人の誰へともなく団扇風 神戸秀子
戦争は水鉄砲でやればよし ストーン睦美
虫干しの本に埋もれて抜け出せず ももたなおよ
梅干すや暑し暑しと梅のこゑ 斉藤真知子
畑行けば顔召しとらる蜘蛛の糸 上松美智子
風鈴の寂びを比べて一つ買ふ 長谷川櫂
母さんの命の灯るさくらんぼ 飛岡光枝
・長谷川櫂選
【特選】
陶枕や夢に唐子の遊ぶこゑ 斉藤真知子
梅干すや暑し暑しと梅のこゑ 斉藤真知子
猛暑日を麦茶で縦に流し込み ストーン睦美
裸子のまるごといのちの重さかな 矢田民也
【入選】
けふの日も暑くなりさうトマトもぐ 夏井通江
しんかんと眠れぬ夜に青葉木菟 安藤文
ちりめん山椒炊いて今年の夏越かな 石塚純子
つつがなく二キロの梅を漬けにけり 石塚純子
へらへらと骨無し団扇世を煽ぐ 原京子
炎昼や電柱一本の影に入る 斉藤真知子
南中の片陰もなき坂のぼる 菅谷和子
芭蕉布に織り込められし嘆きかな 矢野京子
鱧ならば仲居さんよりちと詳し 原京子
第二句座(席題:夜光虫、楸邨忌)
・矢野京子選
【特選】
砕け散る月の光か夜光虫 城山邦紀
底知れぬ闇を母とし夜光虫 城山邦紀
墨の香の奈良に一日や楸邨忌 河本秀也
【入選】
しんかんと硯の海や楸邨忌 飛岡光枝
もらはれず残りし子猫楸邨忌 神戸秀子
真暗なこの世の外を夜光虫 長谷川櫂
洗ひても洗ひても手の夜光虫 長谷川櫂
夜光虫大和の眠る波高く 飛岡光枝
楸邨忌隠岐にけさ咲く合歓の花 菅谷和子
・長谷川櫂選
【特選】
しんかんと硯の海や楸邨忌 飛岡光枝
一筆の自由自在や楸邨忌 城山邦紀
砕け散る月の光か夜光虫 城山邦紀
夜光虫したたる髪をしぼりけり 神戸秀子
夜光虫足を濡らせば足も燃え 矢田民也
【入選】
ウクライナの戦終はらず楸邨忌 石塚純子
とほき世のうたうたふ波夜光虫 神戸秀子
もらはれず残りし子猫楸邨忌 神戸秀子
遺体焼く激しき炎楸邨忌 安藤文
隠岐やいま合歓の花咲く楸邨忌 大場梅子
若者はもつともの言へ楸邨忌 ももたなおよ
舟漕いでちか付けば退く夜光虫 岡村美紗子
少しずつ心削られ楸邨忌 ストーン睦美
瀬渡しの舟追ひかくる夜光虫 ももたなおよ
慕はれし楸邨の忌や蟇 菅谷和子
墨の香の奈良に一日や楸邨忌 河本秀也
夜光虫こぼれてはまた波の端 米山瑠衣
夜光虫コロナの闇を照らしつつ 安藤文
夜光虫の海を眺めて夜を明かす 伊藤靖子
楸邨忌隠岐にけさ咲く合歓の花 菅谷和子