古志仙台ズーム句会(2022年3月21日)
・第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
水温む象より若き象使ひ 森凛柚
人さらひゐるやも知れず桜陰 平尾福
傾ぎつつ大渦潮の回るなり 長谷川櫂
鉄棒の錆のにほひや卒業子 佐伯律子
春風やデスクはみ出す世界地図 森凛柚
【入選】
焼くのにも埋めるにも許可春の雪 三玉一郎
夜ノ森(よのもり)を桜並木とフレコン列と 鈴木伊豆山
水に飛び一戦(ひといくさ)して蛙いま 鈴木伊豆山
すいと押してこの世の外へ流し雛 長谷川櫂
蛤は世の愚かさに口を閉ぢ 辻奈央子
春寒し国境の子の白き頬 服部尚子
時差のなき隣国へ来て初桜 森凛柚
途中から素手で取り込む上り簗 石川桃瑪
父母に逆上がり見せ卒園す 佐伯律子
生まれきて地獄に煮ゆる寒卵 長谷川櫂
長谷川櫂選
【特選】
大き字の歳時記買うて春うごく 阿部けいこ
七十余年隻眼で見る春の山 青沼尾燈子
春泥のまたぎきれない広さかな 伊藤寛
覚めやらぬ豊かないのち朝寝妻 上村幸三
老いらくの命遊ばせ朝寝かな 川辺酸模
【入選】
飴山忌茅花一むれ供花とせん 上村幸三
冴返る日本列島夜の地震 川辺酸模
春の夢ずたずたにして震度六 石原夏生
大地震の花綵列島春の闇 石川桃瑪
春の地震追悼集会せしばかり 及川由美子
遠望すアルプスの嶺龍太の忌 青沼尾燈子
靴ズボン髪の中まで春の泥 齋藤嘉子
鉄棒の錆のにほひや卒業子 佐伯律子
雪囲ひ外して夜の地震あり 武藤主明
(ロシア兵に)銃捨てて鍬もて起こせ春の土 長谷川冬虹
・第二句座(席題=春筍、彼岸、柳)
長谷川冬虹選
【特選】
ほこほこと春一寸の筍よ 長谷川櫂
足裏にこつり筍春の山 川辺酸模
辻々に親子で舞ふや彼岸獅子 武藤主明
春筍やくづさぬやうにのどぼとけ 三玉一郎
父居れば届きし頃か春筍 佐伯律子
【入選】
あつちなめこつちなめして彼岸餅 佐伯律子
お隣の墓にも一輪入り彼岸 及川由美子
彼岸寺地震の所業の無残かな 石原夏生
店先へ豆煮る匂ひ入り彼岸 石川桃瑪
花嫁の舟の分けゆく柳かな 齋藤嘉子
春筍ともち米提げて現れぬ 及川由美子
街なかに水の記憶の柳かな 服部尚子
姫竹の皮ゆびにはめ小鬼くる 服部尚子
長谷川櫂選
【特選】
彼岸餅少しづつ水練り込みぬ 宮本みさ子
手に隠るほどの春筍いのちなが 齋藤嘉子
辻々に親子で舞ふや彼岸獅子 武藤主明
あの日から喪服のままの彼岸かな 三玉一郎
街なかに水の記憶の柳かな 服部尚子
【入選】
あつちなめこつちなめして彼岸餅 佐伯律子
北上川の柳うらやむ柳かな 石原夏生
お彼岸や閼伽桶すべて新しく 佐藤和子
マスクしてお斎もなしの彼岸かな 川辺酸模
灯ともすや柳の下の古屋台 伊藤寛
あかんぼを食べるがごとき春筍よ 長谷川冬虹
ふる里を離れて長し彼岸かな 阿部けいこ
花嫁の舟の分けゆく柳かな 齋藤嘉子
温燗に春筍の小鉢かな 伊藤寛