古志広島ズーム句会(2022年3月6日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
ほんたうに鬼はゐたんだ涅槃雪 飛岡光枝
愚かさに春暗転の世界かな 斉藤真知子
戦争と平和のはざま雛流る 大平佳余子
大渦潮海をゑぐりて動くかな 長谷川櫂
【入選】
からつぽの蛤骨の音したり 長井亜紀
きさらぎや熨斗書くための手をぬくめ 神戸秀子
げんげ田に遊び百年過ぎにけり 石塚純子
ほんたうは見たこともなき松露掘る 斉藤真知子
マスクして皆んなで歌ふ卒業歌 安藤文
渦潮といふ大いなる静寂かな 長谷川櫂
空と麦の国は戦場春嵐 ストーン睦美
国境へ春まだ痛き川渡る 飛岡光枝
妻の読む本盗み見る春炬燵 河本秀也
春の水光をすくひ顔洗ふ 夏井通江
雛納めこの世の塵を払ひつつ 飛岡光枝
大根の穴ばかりなる畑を打つ 米山瑠衣
逃げられぬやふにつつかん蕨餅 高橋真樹子
俳諧に卒業はなし骸まで 大場梅子
母追つて風となりゆく仔馬かな 菅谷和子
木道とんとん弾み子が行く春の山 石塚純子
目貼り剥ぐこの世の戦禍見据ゑんと 菅谷和子
連翹の枝にびしばし打たれけり 飛岡光枝
・長谷川櫂選
【特選】
くたびれし弁当箱と卒業す 矢野京子
ミサイルの飛ぶ大空を燕ゆく 安藤文
空と麦の国は戦場春嵐 ストーン睦美
戦争と平和のはざま雛流る 大平佳余子
龍天に昇り憤怒のトルストイ ももたなおよ
【入選】
げんげ田に遊び百年過ぎにけり 石塚純子
ひな祭り戦車は侵攻し続けり 夏井通江
ビニールの袋くもれる春子かな 神戸秀子
マスクして皆んなで歌ふ卒業歌 安藤文
大根の穴ばかりなる畑を打つ 米山瑠衣
流氷の軋む嘆きを凍の中 城山邦紀
第二句座(席題:残雪、梅の花)
・矢野京子選
【特選】
行く道の氷るとも雪残るとも 長谷川櫂
森閑と心の奥に残る雪 長谷川櫂
白梅のごとき人とはなれぬまま 斉藤真知子
【入選】
マスク取り胸いっぱいに梅の香を 城山邦紀
残雪の汚れ踏みゆく山開き 石塚純子
残雪を集めて夢中幼き子 林弘美
雪残る山を仰ぎつ出帆す 飛岡光枝
雪残る名前を知らぬ山ばかり 斉藤真知子
梅いちりん咲いて梅子と名づけられ 大場梅子
梅園のなかにちひさき天満宮 矢田民也
梅三分開きてのちのはやさかな 石塚純子
母の忌や母の紅梅いま見頃 ももたなおよ
・長谷川櫂選
【特選】
胴ぶるひせしや古木の梅の散る 神戸秀子
梅いちりん咲いて梅子と名づけられ 大場梅子
飛梅のけさ大空へ吹雪けり 飛岡光枝
【入選】
黒く深く戦車の轍残る雪 河本秀也
残雪の象のごとくや横たわり 高橋真樹子
梅の花また一人来て立ち止まり 矢野京子
雪残る名前を知らぬ山ばかり 斉藤真知子
苔むしてなほも咲きつぐ臥竜梅 大場梅子
梅三分開きてのちのはやさかな 石塚純子