古志仙台ズーム句会(2022年2月27日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
春の声エレベーターに吸ひ込まる 武藤主明
見つめられ背筋を伸ばす雛かな 辻奈央子
春の雪そのただ中へ出棺す 三玉一郎
雛には聞かせたくなき話かな 辻奈央子
【入選】
三代でやんややんやと雛飾る 辻奈央子
春の雪掃けば除染の土現るる 宮本みさ子
生き死にの一書読み了ふ梅真白 上村幸三
パンの耳残す言ひ訳寒施行 武藤主明
大いなる春に呼ばれて父逝けり 三玉一郎
とんがつた彼女のヒール春めける 伊藤 寛
原発の嘘で固めし凍土壁 武藤主明
つまんなささうにしてゐる鶯餅 長谷川櫂
地虫出てミサイルの雨見たりけり 川辺酸模
春光を丸呑みせんと大欠伸 谷村和華子
・長谷川櫂選
【特選】
突然の雪に埋もれて蕗の臺 阿部けいこ
雪の音立てて人来る忌中かな 三玉一郎
聖火消えにはかに砲火春嵐 長谷川冬虹
地虫出てミサイルの雨見たりけり 川辺酸模
太々と残りし骨の余寒かな 三玉一郎
すみれ咲くたばしる牛の尿浴びて 齋藤嘉子
いくたびのゲルニカいくたびも三月十日 鈴木伊豆山
【入選】
三メートルの雪にことばもなかりけり 那珂侑子
この十年泣いて笑うて雛あられ 長谷川冬虹
春の雪掃けば除染の土現るる 宮本みさ子
生き死にの一書読み了ふ梅真白 上村幸三
淡雪やぬくき骨壺葬れり 佐伯律子
大いなる春に呼ばれて父逝けり 三玉一郎
春の日を父を亡くした妻とゐる 三玉一郎
原発の嘘で固めし凍土壁 武藤主明
雛段へ遅れて来たる牛車かな 武藤主明
予備役兵妻に挿頭ししすみれ草 齋藤嘉子
春の雪そのただ中へ出棺す 三玉一郎
寒雷や年輪緊る檜葉大樹 及川由美子
春光を丸呑みせんと大欠伸 谷村和華子
天空へ雪の轍の交はらず 武藤主明
マンホールの蓋の花柄雪間かな 及川由美子
仰け反りてなほ日を欲りて片栗は 鈴木伊豆山
春雷や闇壊れ闇静もりぬ 上村幸三
雑木山つかまる枝も芽吹きかな 伊藤 寛
妻の雛一段一段買ひ足せり 長谷川冬虹
龍太忌を修す山々春の声 上村幸三
弟に部屋明け渡し卒業す 佐藤和子
第二句座(席題:落とし角、菜飯、万作)
・長谷川冬虹選
【特選】
さつきまで脈打ちたるか忘れ角 及川由美子
万作や越後へ続く塩の道 武藤主明
万作や試験終へたる子らの声 川辺酸模
【入選】
なかなか取れぬ心の角や落し角 森 凛柚
落し角吹かれて笛となりにけり 石川桃瑪
人の手の入らぬ山や落し角 川辺酸模
ややありて鹿跳ねまはる落し角 伊藤 寛
角落とし翁のやうになりし鹿 上 俊一
まんさくや二軒減りたる隣組 伊藤 寛
波洗ひ月が磨きし鹿の角 齋藤嘉子
・長谷川櫂選
【特選】
さお鹿の落ちたる角に眼もくれず 上村幸三
戦争や母のつくりし菜飯くふ 上村幸三
さつきまで脈打ちたるか忘れ角 及川由美子
けだるさや左の角はまだ落ちず 齋藤嘉子
菜飯食ふ何の葉つぱかわからねど 辻奈央子
【入選】
遠き日の戦の匂ひ菜飯かな 甲田雅子
うち振るや大鹿の角いま落ちん 上村幸三
落し角吹かれて笛となりにけり 石川桃瑪
鹿は角落として人を離れけり 宮本みさ子
人の手の入らぬ山や落し角 川辺酸模
鮮やかな緑が馳走菜飯かな 佐藤和子
万作を焼いて丸めて樏に 武藤主明
茎立を摘まんできては菜飯かな 齋藤嘉子
まんさくの花を喜ぶ小川かな 平尾 福
弁当へ小さくにぎる菜飯かな 阿部けいこ
杣人の小屋に並ぶる落し角 阿部けいこ
菜飯さへ食へざる頃の懐かしき 石原夏生