古志金沢ズーム句会(2022年2月23日)
第一句座(当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
スノーボード太陽へ春宙返り 長谷川櫂
朧夜のおぼろとなりて母眠る 趙栄順
たんぽぽの絮のごとしや昼の月 橋詰育子
一輪のつぼみのごとき雛かな 趙栄順
殺伐たる地へと戻りぬ揚雲雀 花井淳
雛流す怒濤のあとを怒濤かな 長谷川櫂
入学やはるかな知への旅となれ 山本桃潤
【入選】
春寒や小鳥の眠る銀の籠 玉置陽子
葛湯ねる吉野の深雪いかばかり 泉早苗
雁風呂や一人暮しの長くなり 氷室茉胡
石垣の石乱れなき斑雪 花井淳
さりげなく井伏の書あり龍太の忌 近藤沙羅
鰤半身返すは加賀のよき習ひ 稲垣雄二
龍太忌の空朗朗と鳶の笛 玉置陽子
白魚の二寸の光鮓とする 稲垣雄二
しんしんと雪ふくふくと古志の酒 稲垣雄二
蛇穴を出づうつし世の寒かりし 近藤沙羅
鳥飛んで影の速さよ春障子 間宮伸子
蝶を縫ひ花縫ひし針納めけり 間宮伸子
・長谷川櫂選
【特選】
朧夜のおぼろとなりて母眠る 趙栄順
一輪のつぼみのごとき雛かな 趙栄順
雛段の玉の顔拝すなり 佐々木まき
紙雛目鼻なくとも笑み給ふ 氷室茉胡
【入選】
青鷺の首すくめ立つ余寒かな 橋詰育子
荒海や氷の崖に水仙花 梅田恵美子
鍋傾げ残らず椀へ蜆汁 稲垣雄二
たんぽぽの絮のごとしや昼の月 橋詰育子
桃の枝すいすい伸びて龍太の忌 酒井きよみ
若狭井をくむや紙衣の僧ふたり 泉早苗
春風や吾にも欲しき再起動 氷室茉胡
西行忌いかに納めん旅心 鬼川こまち
しやきしやきと氷の菜漬朝の卓 梅田恵美子
田から田へ草青みたる遍路みち 橋詰育子
第二句座(席題:涅槃、余寒)
・鬼川こまち選
【特選】
渤海使ながれつきたる涅槃西風 泉早苗
存分に生きたまひたる涅槃かな 長谷川櫂
涅槃図を描きし僧の心はも 松川まさみ
人よりも動物優しお涅槃図 近藤沙羅
大鯉のごとき髭ある寝釈迦かな 長谷川櫂
等伯の涅槃図あまた能登の國 清水薫
【入選】
古い傷残る寒さにまた痛む 佐々木まき
涅槃会や暇持て余す蛇使ひ 花井淳
またも行く余寒の朝の救急車 松川まさみ
王の子の旅路のはての涅槃かな 長谷川櫂
負けるまじ余寒の土へ杭を打つ 橋詰育子
金沢の雪吹きとばせ涅槃西風 泉早苗
この星もかつて炎よ余寒なほ 田中紫春
み熊野を上る川舟涅槃西風 玉置陽子
ランドセル余寒を連れて帰りけり 密田妖子
百畳に広げて寝釈迦いかにせん 稲垣雄二
春寒や心ざぶざぶ洗ひたし 中野徹
・長谷川櫂選
【特選】
殺掠の世界の隅に涅槃され 山本桃潤
白き白き加賀一国の余寒かな 趙栄順
【入選】
御御足にふるる涅槃の風やさし 田中紫春
山寺のそこだけともる涅槃かな 安藤久美
涅槃絵の仏の他は誰が誰 稲垣雄二
涅槃図の隅によく似てわれの顔 清水薫
等伯の涅槃図あまた能登の國 清水薫