古志仙台ズーム句会(2021年9月26日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
あやふやな挨拶交す秋彼岸 佐伯律子
撥条(ぜんまい)のほどけて今朝のつくつくし 服部尚子
この赤はあの世の赤か曼珠沙華 那珂侑子
月天心ひとつとなりし仮設の灯 甲田雅子
山奥のそのまた奥の村歌舞伎 武藤主明
【入選】
水桶の中にも一つけふの月 平尾 福
余りもの何でも吊るす鳥おどし 辻奈央子
一匹となりて長生き金魚かな 長谷川櫂
名月や階下の妻は湯浴むらし 川辺酸模
刈田道たどれば農家レストラン 伊藤 寛
秋の蝶ゆらりと黄泉の風に乗り 上村幸三
月呑んでいや渦潮の凄まじき 齋藤嘉子
待宵や少しはがゆき君が好き 谷村和華子
鰭立てて月を拝する鯥五郎 齋藤嘉子
いちじくのかく美しく実る国 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
名月を切り分けたるか栗羊羹 長谷川冬虹
長雨が上がつて真白鰯雲 上 俊一
栗を剥き栗の形の指となり 佐伯律子
人逝きて炎の花よ曼珠沙華 長谷川冬虹
長き夜の妻に独りの顔ありぬ 上村幸三
やはらかい枕に替へて秋昼寝 平尾 福
【入選】
水桶の中にも一つけふの月 平尾 福
山椒魚睦び合ひけり月浴びて 齋藤嘉子
蓑虫や大いなる影揺らしをり 辻奈央子
月今宵雲の流れの早かりし 阿部けいこ
木犀やゆきかふ人もみな香り 辻奈央子
蹲に月をしずかに浮かべたし 佐藤和子
文のみのやり取り十年小鳥来る 及川由美子
ひやひやと吾が影のぞく鏡かな 川辺酸模
水底の動かない石秋思かな 石川桃馬
一株の唐辛子干す生活かな 阿部けいこ
串に焼くいわな劫火の炭赤し 宮本みさ子
隻眼の犬も見てゐる今日の月 青沼尾燈子
輪にするに二人がかりや通草蔓 伊藤 寛
図書館の長引く休館昼の虫 阿部けいこ
集まつてみな歌ひ出す砧かな 森 凜柚
腕を組むゴリラ一塊の秋思かな 齋藤嘉子
主なきベッドへ月の差し始む 武藤主明
山奥のそのまた奥の村歌舞伎 武藤主明
産土は被曝の坩堝すすき原 宮本みさ子
墓洗ふ線量計を揺らしつつ 宮本みさ子
芒原振り返らずに行きし人 武藤主明
第二句座(席題:茨の実、新酒、太刀魚)
・長谷川冬虹選
【特選】
潮風に研がれて赤し茨の実 上 俊一
草薙の剣とならん太刀魚よ 武藤主明
太刀魚のぽろり解れる焼身かな 川辺酸模
太刀魚やトロ箱に尾のはみ出して 及川由美子
太刀魚は月の光に生まれけん 長谷川櫂
【入選】
太刀魚にぱらり星屑降らしめよ 谷村和華子
待つことに慣れたと二人新酒酌む 佐伯律子
娘婿呼んで二人の今年酒 那珂侑子
まな板が小さし太刀の魚捌く 宮本みさ子
赤ん坊のごとく抱へて新酒かな 辻奈央子
存分にわが身中を新走 上村幸三
磐梯のすそ野に醸す新走 武藤主明
講釈はほどほどに聞き今年酒 石原夏生
太刀魚にいま包丁を構へけり 上村幸三
・長谷川櫂選
【特選】
赤ん坊のごとく抱へて新酒かな 辻奈央子
おごそかに升に口寄す新酒かな 谷村和華子
天へぐいと太刀魚竿をしならせて 石川桃馬
百年の月山水や今年酒 長谷川冬虹
【入選】
米はよし水はなほよし今年酒 石原夏生
娘婿呼んで二人の今年酒 那珂侑子
磐梯のすそ野に醸す新走 武藤主明
はじめての大仕事終へ今年酒 森 凜柚
手の届く棚にな置きそ今年酒 石川桃馬
太刀魚の骨の太さを皿の上 阿部けいこ
新走り露命幾許繫ぎたる 鈴木伊豆山
弓手には釣り竿馬手に茨の実 石川桃馬
覗きたし百の太刀魚泳ぐ様 齋藤嘉子
下戸なれど選ぶ楽しみ今年酒 佐藤和子