古志広島ズーム句会(2021年10月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
あやとりの梯子で月に登らんか 丸亀葉七子
頭から銀の走れる太刀魚かな 長谷川櫂
角伐りの鹿の目塞ぐ軍手かな 神戸秀子
香り立つ山の名前の今年酒 飛岡光枝
【入選】
やうやくの自粛解除やけふの月 安藤文
どの家もコスモスの咲く村の道 伊藤靖子
宿題は後回しにて鯊釣りに 米山瑠衣
落つるたび月ふるわせて添水かな 菅谷和子
栗ひとつ置いてけぼりや毬の中 斉藤真知子
ポケットの木の実ころころ洗濯機 大場梅子
古びゆく手よ母に似て秋袷 高橋真樹子
芋の子の月の子となる今宵かな 大平佳余子
たましひの露のひと粒一句かな 長井亜紀
鬼の子や新しき蓑欲しき日も 斉藤真知子
吊し柿痩せて甘味のいや増せり 城山邦紀
雁渡る子雁を竿の真ん中に 岡村美紗子
歌子さんの投句もうなし鰯雲 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
新しき首相やいかに秋刀魚焼く 安藤文
また一行秋思のペンを走らせる 矢野京子
宵の浜砂蟹どもも月見かな ストーン睦美
夜の底弾きて木の実降りしきる 城山邦紀
芋の子の月の子となる今宵かな 大平佳余子
親子二代互ひに祝ふ敬老日 米山瑠衣
【入選】
やうやくの自粛解除やけふの月 安藤文
藤袴今ひと時の旅の蝶 ももたなおよ
宿題は後回しにて鯊釣りに 米山瑠衣
白銀の光をまとひ新さんま 城山邦紀
乳母車下りて歩く子野菊晴 神戸秀子
椎の実の降りくるところ君眠る 大平佳余子
無花果やちょこんと二つ卓の上 安藤文
葉隠れに銀杏のまだあをあをと 飛岡光枝
古びゆく手よ母に似て秋袷 高橋真樹子
角伐りの鹿の目塞ぐ軍手かな 神戸秀子
本屋は大きな木陰秋の昼 夏井通江
潰されてまだぱたぱたと秋の蝶 安藤文
桐一葉落ちて大臣入れかはる ももたなおよ
黄葉の木漏れ日を浴びとるランチ 伊藤靖子
十月来ねこにならひてストレツチ 石塚純子
哀史とは民の叫びよ白木槿 菅谷和子
花入れとなりし徳利露けしや 神戸秀子
第二句座(席題:新蕎麦、蛇笏忌)
・矢野京子選
【特選】
しんとある黒き机や蛇笏の忌 飛岡光枝
俳諧は一気呵成や走り蕎麦 長谷川櫂
走り蕎麦ここは小さんの好きな席 菅谷和子
新蕎麦を望月のごと打ち延べん 長谷川櫂
【入選】
さきがけの黄菊一輪蛇笏の忌 神戸秀子
蛇笏忌や風ををりとる草の丈 ももたなおよ
十月の甲斐駒太し蛇笏の忌 石塚純子
山盧忌のけふわれ句座の末席に 石塚純子
すこやかに色かへぬ松山廬の忌 大場梅子
山の日のくわつと背に差す蛇笏の忌 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特選】
さきがけの黄菊一輪蛇笏の忌 神戸秀子
蛇笏忌や深き淵より鯉動く 飛岡光枝
新蕎麦の香や脳天を駆け上がる 河本秀也
山登る後すがたや蛇笏の忌 飛岡光枝
山の日のくわつと背に差す蛇笏の忌 神戸秀子
【入選】
リニアカー試運転中山廬の忌 大平佳余子
我が家では玉ねぎ添へて走り蕎麦 安藤文
政争の決着つきし走り蕎麦 矢野京子
山盧忌のけふわれ句座の末席に 石塚純子
すこやかに色かへぬ松山廬の忌 大場梅子
新そばを水の音高く洗ひけり 夏井通江
蛇笏忌や夢の中なる山廬の地 土谷眞理子
新蕎麦を互ひにすすりいのちなが 上松美智子