祇園会ズーム句会(2021年7月17日)
長谷川櫂 選
第一句座
【特選】
ひととせの思ひの鉾を建てにけり 忠雄
呼び止めて鱧包丁を砥がせけり 久美
老いて待つ二年は長し木賊山 美那子
鉾建てど巡らざること忘れめや 沙羅
蟷螂の広げぬ翅をお風入れ 悦子
遠き日の長刀鉾の廻る音 真知子
わが家を守りて古ぶ鉾粽 光枝
【入選】
鱧を焼く匂まとふや門提灯 淳子
水打つて奥へ奥へと京の闇 久美
日本中蟷螂山を待ちゐたり 一郎
勇み立つ縄の薫りや裸鉾 酸模
山鉾を建ててほんまの京の夏 初男
東山きれいな空に鉾立ちぬ 忠雄
誇り高き長刀鉾や動かずも 美那子
ひつそりと鉾建つ年や祇園さん 淳
長刀鉾睨みきかせて立ち上がる 洋子
巡行の出番無けれど建つる鉾 茉胡
躾とらぬ祭浴衣も二年目に 美那子
長刀鉾建ちて恐るるものはなし 洋子
来年は鉾巡り来よ冷し酒 忠雄
祇園会や深閑として京都御所 松太
縄一つ乱れも見せぬ祭鉾 雄二
めでたけれ京に二つの夏の月 嘉子
三日月の手拭ひ添へて水羊羹 光枝
今年また恃む虚ろな鉾粽 久美
子どもらの歌は無けれど鉾粽 光枝
檜扇やいま幻の辻回し 一郎
霰天神山の粽かけばや軒先に 初男
町中が手持ちぶたさや京の夏 雄二
素戔嗚の力をかりて鉾立てる 悦子
眠りよりさめて大輪月の鉾 光枝
祇園会や古き名句のあまたにて 淳子
まぼろしの生稚児みゆる鉾の上 悦子
昼寝覚はるかを祇園囃子かな 真知子
語り継がんコロナの年の祇園会を 美那子
第二句座
【特選】
世が変はり祭変はるも瓜を揉む 美那子
ふたとせの厄を祓はん鉾粽 崇
夏深き今年の鉾を解きにけり 忠雄
巡行の無けれど一日鉾浴衣 光枝
満天の星に眠るや月の鉾 酸模
いつまでも来るはずのなき鉾待てり 真知子
宵山の一夜の浴衣掛けてあり 雄二
鱧食ふてひととせ鉾を待たんとす 忠雄
切り落とす鱧の眼の涼しかり 嘉子
祇園会や今年しづかに東山 淳子
【入選】
疫の世やしんかんと鉾立ち上る 光枝
うつて出んこの世の闇を岩戸山 悦子
巡行なき鉾に榊はみづみづと 美那子
今年また出番なかりし祭笠 洋子
鱧茶漬け京の一日を冷ますべく 酸模
もふ一度見たき大路の鉾回し 真知子
鉾の衆今年は揃ひのマスクかけ まき
京菓子や名も涼しさの氷室なる 忠雄
疫の世も鱧骨切りの威勢よく 嘉子
うるはしき宇治のまみどりかき氷 まき
炎天やまんじりともせず大車輪 光枝
包丁で合ひの手入れん祇園囃子 淳子
鉾建や散らかる縄も二年ぶり 幸子