古志金沢ズーム句会(2021年7月18日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
船大工お国言葉も日に焼けて 間宮伸子
山繭やあすは蛾となるしづかさに 泉早苗
沢蟹をカラリと揚げて星凉し 酒井きよみ
青々と黴たる星のわれらかな 篠原隆子
涼しさや一日のいのち蓮根羹 長谷川櫂
蚊一匹眠れる琥珀夏の月 高橋慧
大鍋に赤紫蘇煮立て魔女めける 高橋慧
舞ひ降りし月のごとくや奈良団扇 趙栄順
怒り立つ大蛇翔けゆく大出水 高橋慧
【入選】
狂ひ咲く真昼ありけり凌霄花 安藤久美
爆心地訪胸に花束風死して 田中紫春
うすべにに蒸して踏まれて紅の花 間宮伸子
夜は星の塒となりぬ今年竹 玉置陽子
箱庭やこの世の仕組み並べ替へ 宮田勝
梅干して伊吹や星のうつくしき 篠原隆子
黴の世やオリンピックの立往生 梅田恵美子
てんと虫空飛ぶ車てふ敵が 間宮伸子
火蛾ひとつひそめてをりぬ胸の底 泉早苗
岩を打つ涼しき波をお菓子かな 長谷川櫂
融通のきかぬ男や扇風機 玉置陽子
月光にねぢのほどけし捩り花 梅田恵美子
団扇風花と老いたる女かな 玉置陽子
織り上がる衣の風合合歓の花 酒井きよみ
赤松を燃やさんばかり蝉のこゑ 篠原隆子
見えぬまま顔に触れけり蜘蛛の糸 越智淳子
・長谷川櫂選
【特選】
蟻地獄蟻がずかずかとほりけり 酒井きよみ
七月の空駆けめぐる馬車真白 玉置陽子
夜は星の塒となりぬ今年竹 玉置陽子
はらわたの力にせんと土用餅 佐々木まき
夏遍路白衣の下の乳房拭く 稲垣雄二
舞ひ降りし月のごとくや奈良団扇 趙栄順
【入選】
プルーストまだ読みきれず紙魚走る 鬼川こまち
雷に覚め雷に眠るなり 田村史生
山繭やあすは蛾となるしづかさに 泉早苗
うすべにに蒸して踏まれて紅の花 間宮伸子
身のうちを風通りゆく藍浴衣 趙栄順
沢蟹をカラリと揚げて星凉し 酒井きよみ
香水瓶海のきらめき閉じ込めぬ 趙栄順
黴の世やオリンピックの立往生 梅田恵美子
グラナダは遥かに遠し花石榴 鬼川こまち
蚊一匹眠れる琥珀夏の月 高橋慧
さはやかな香りは今も香水瓶 近藤沙羅
半世紀前は新妻レース編む 玉置陽子
紫陽花のたわわに雨を吸う力 中野徹
くちなしの花開きてすでに汚れゆく 高橋慧
溺れゆくヌーの群みし昼寝覚 鬼川こまち
弛ませて鵜飼の縄を干しにけり 安藤久美
香水やわたしがきれいだつた頃 趙栄順
十薬の世の片隅にうつくしく 中野徹
団扇風花と老いたる女かな 玉置陽子
長男に亡き夫重ね白絣 間宮伸子
樋の音楽しや梅雨の家に棲み 山本桃潤
見えぬまま顔に触れけり蜘蛛の糸 越智淳子
羽抜鶏あはれ機嫌の刻の声 梅田恵美子
第二句座
席題 「草いきれ、「雷」
・鬼川こまち選
【特選】
草いきれうしろに雨のまはりけり 宮田勝
雷に裂かれしタブを神として 篠原隆子
日雷箱の中からまた小箱 泉早苗
耐え忍ぶことは地球も草いきれ 佐々木まき
遠雷やアラブは水もままならず 篠原隆子
壊れゆく心の叫びはたた神 中野徹
【入選】
遠雷やダム放水のサイレンも 泉早苗
草いきれ草の命のすさまじく 趙栄順
棄てられし香水瓶か草いきれ 篠原隆子
卒塔婆の古りにぞ古りし草いきれ 佐々木まき
六道の辻を右へと草いきれ 泉早苗
遠雷や我が為に買ふ薔薇一輪 玉置陽子
雨上がり古墳の山の草いきれ 梅田恵美子
草いきれ筋通したる男たれ 間宮伸子
酒呑童子の目玉が一つ草いきれ 長谷川櫂
大岩のなかなか遠し草いきれ 近藤沙羅
水の星の水さまよへる草いきれ 玉置陽子
逢引きの二人に残る臭いきれ 山本桃潤
・長谷川櫂選
【特選】
草いきれ草の命のすさまじく 趙栄順
青春はずぶぬれで行く雷雨かな 稲垣雄二
雷鳴の腹までひびき鳴りやまず 近藤沙羅
【入選】
草いきれまとひて固く抱かれて 田中紫春
雨上がり古墳の山の草いきれ 梅田恵美子
草いきれ富士の沈黙続きをり 氷室茉胡
雷や能登より加賀に攻め上ぐる 花井淳
あの世まで持つてく話草いきれ 間宮伸子