古志広島ズーム句会(2021年6月6日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
夏痩せて源氏を写す定家かな 菅谷和子
鎌倉はカルパッチョにして初鰹 菅谷和子
蟻地獄待ちくたびれてしまひけり 斉藤真知子
泰山木雨を薫らせ花開く ももたなおよ
恋の句を付けかねてをり蟇 飛岡光枝
【入選】
おん唇の息づきほのと鑑真記 神戸秀子
その奥は唐紅や蛇の穴 長谷川櫂
ひとしきり暴れて鵜籠月の中 大場梅子
ひと突きになだれて瀧に心太 菅谷和子
ぽこぽこと花咲くやうに梅雨茸 大場梅子
まひまひの円周率やくるりと輪 城山邦紀
引越しや大蜘蛛といへ名残惜し 林弘美
夏草と日ざしの匂ひかくれんぼ 夏井通江
薫風や砲台跡はがらんどう 河本秀也
向日葵と空しか見えぬ迷路かな 丸亀葉七子
水羊羹どこの角からくづすべく 斉藤真知子
太陽の申し子ならん枇杷熟るる 大場梅子
知らぬことまだまだありし箱眼鏡 高橋真樹子
入院す大緑陰にはいるごと 長井亜紀
仏法僧この世の仮の姿かな 土谷眞理子
羞らひはこんな色かや七変化 原京子
・長谷川櫂選
【特選】
蟻地獄待ちくたびれてしまひけり 斉藤真知子
更衣包丁研ぎてもらひけり 上松美智子
子馬ぐいぐい草の匂ひの乳をのむ 飛岡光枝
子燕や空は恐いか楽しいか 矢野京子
恋の句を付けかねてをり蟇 飛岡光枝
【入選】
一万歩ゆきて一句や雲の峰 矢野京子
下校の子傘を引きずり虹の中 矢野京子
何も着ぬ心地や夏の掛布団 夏井通江
顔見たき子らへ届くるさくらんぼ 伊藤靖子
月に咲き月と遊ぶや烏瓜 飛岡光枝
薫風や砲台跡はがらんどう 河本秀也
車椅子出でて励ます田植かな 米山瑠衣
精一杯けふを生きたか髪洗ふ 矢野京子
第二句座(席題:田植え、繭)
・矢野京子選
【特選】
繭一つ命一つや繭輝く 長谷川櫂
八方は太平洋よ繭を干す 河本秀也
田植ゑする鏡のなかに手を入れて 夏井通江
【入選】
花田植え空を見上げて終わりけり 河本秀也
繭眠るかすかな寝息してをりぬ 斉藤真知子
田植女のなかなる母をすぐ見分け 神戸秀子
田を植ゑて泥のごとくに眠りけり 斉藤真知子
行きがけにお社拝む田植かな 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特選】
追ひついて振り向かせたき田植笠 矢野京子
繭かけて蚕ひっそり休み居り 伊藤靖子
葉一枚まぜて逞し山の繭 大平佳余子
【入選】
図書室の窓いつぱいや大田植 大平佳余子
花田植え空を見上げて終わりけり 河本秀也
雪の峰足で崩して田植歌 菅谷和子
人間も繭も眠るや昼深く 飛岡光枝
蚕蛾の行く末なしや繭の墓 ストーン睦美
ことことと命の音や繭を振る 石塚純子
苗束で蛭をこそげる田植かな 米山瑠衣