古志仙台ズーム句会(2021年5月23日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
陽をふふむ河馬の五月よ大あくび 谷村和華子
命日やかの世も梅雨に入るころか 上村幸三
さばかれて花の白さの虎魚かな 川辺酸模
昼寝して体大地に溶けゆかん 辻奈央子
咲ききつてほつとしてゐる牡丹かな 辻奈央子
【入選】
灯の中に蛙の喉の薄さかな 阿部けいこ
展げたる地図にばらばら滝しぶき 伊藤 寛
群青へぐぐつと立ちて五月富士 石川桃馬
青あらし賢者のごとき鷺一羽 川辺酸模
だんだんと我が香となりし香水よ 森 凜柚
虹二重ふたりの君がゐるやうな 青沼尾燈子
村挙げて屋根葺き替へる結返し 武藤主明
横向きに寝釈迦をまねて昼寝かな 上 俊一
さりながら黴させるなよ心まで 齋藤嘉子
・長谷川櫂選
【特選】
展げたる地図にばらばら滝しぶき 伊藤 寛
虹二重ふたりの君がゐるやうな 青沼尾燈子
棄てられし牛の涙や被曝塵 青沼尾燈子
父も母もゐないこの世へ昼寝覚 平尾 福
虫の子のでんぐり返るキャベツの葉 服部尚子
【入選】
籠枕いつの間にやら足元に 辻奈央子
どうせすぐ来ぬ返信や昼寝せん 森 凜柚
一蔓に一つのメロン摘果かな 武藤主明
青あらし賢者のごとき鷺一羽 川辺酸模
四人居て私の他は更衣 那珂侑子
白雲の覗いて行きし植田かな 平尾 福
さばかれて花の白さの虎魚かな 川辺酸模
吹き抜ける風に眠れず籠枕 辻奈央子
まん丸な月浮べたる大代田 平尾 福
雲の舟一つ浮かべる代田かな 及川由美子
大代田逆さ鳥海悠々と 長谷川冬虹
第二句座 「水母、石楠花、父の日」
・長谷川冬虹選
【特選】
大くらげ顔なき顔で笑ひけり 長谷川櫂
父の日や襤褸と虱の帰還兵 川辺酸模
父の日やなにもいらぬとひとり言 上村幸三
【入選】
父の日を祝はれ慣れてゐない父 森 凜柚
石楠花や伝教大師大頭 平尾 福
父の日の何事もなく過ぎにけり 平尾 福
月読のこぼせし涙海月かな 齋藤嘉子
青空を泳いでみたき大海月 上村幸三
・長谷川櫂選
【特選】
星屑の海をさ迷ふ水母かな 川辺酸模
石楠花や伝教大師大頭 平尾 福
父の日や襤褸と虱の帰還兵 川辺酸模
【入選】
父の日の軽く大きな帽子かな 甲田雅子
父の日や少し早めのビールつぐ 齋藤嘉子
石楠花や無人の家を守るかに 谷村和華子
石楠花を消したる磐梯山入日 宮本みさ子
父の日や沛然として昼の雨 川村杳平
石楠花や二手に分かる登山道 武藤主明
戦時下や石楠花の葉を煙草にす 服部尚子
父の日や犬歩ませる夕の浜 川辺酸模
父の日や遺影に手向く盃よ 長谷川冬虹
父の日や田に立つ姿まなうらに 齋藤嘉子
太古よりマスク姿の海月かな 長谷川冬虹
原発の海を漂ふ海月かな 武藤主明
遠目にも石楠花の花けさ盛り 上 俊一
水母見て一日飽きず水族館 及川由美子
石楠花を誰ゆさぶるや揺れてをり 上 俊一