第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
流鏑馬や発止と馬の土けむり 谷村和華子
死病得ていよよ愛しや草の花 川辺酸模
子と探す北斗七星賢治の忌 平尾 福
鈴虫を放つや闇を鎮めたり 谷村和華子
【入選】
絶望のガザの子の目や残暑光 青沼尾燈子
ははとゐる如く一輪曼珠沙華 那珂侑子
秋天や野良猫連れて登校す 佐伯律子
夏風邪や深眠りして死後のこと 甲田雅子
花茗荷つぎつぎ咲くや白き闇 谷村和華子
鎌倉は竹の打ち合ふ月夜かな 平尾 福
合戦跡日がちらちらと吾亦紅 谷村和華子
烏瓜空の深さのおそろしき 上村幸三
昭和より変らぬ家並赤まんま 武藤主明
長谷川櫂選(推敲例)
【ことのほか】
秋晴や幸せを呼ぶブルービー 佐伯律子
母とゐるごとく一輪曼珠沙華 那珂侑子
蘭奢待のごとき流木秋の浜 佐藤和子
秋の虹下校の子らを待つて消ゆ 平尾 福
蓬莱へもう戻れざる蓮見舟 長谷川冬虹
【特選】
妻とゐて秋の風聴く一日かな 青沼尾燈子
お隣の木へ登りゆくゴーヤかな 那珂侑子
萩咲くや軍国少女の母たりき 長谷川冬虹
踊子は風の袂を抑へつつ 武藤主明
蛇穴に入るを忘るる日和かな 平尾 福
秋の夜を眠らず原爆資料館 三玉一郎
虫のこゑ土に戻りて鎮まりぬ 佐伯律子
花茗荷つぎつぎに咲く白き闇 谷村和華子
鎌倉は竹の打ち合ふ月夜かな 平尾 福
冷まじや腹中巣食ふ巨大脾腫 川辺酸模
あざやかや電球に舞ふ稲埃 齋藤嘉子
萩咲いて紅顔可憐の昔ありき 青沼尾燈子
秋旱ねじれて乾く瓜の蔓 服部尚子
熊いまは人を恐れず茸山 武藤主明
伸びに伸ぶ暑さを力庭の草 甲田雅子
変幻の雲の形や秋の風 石川桃瑪
軍歌(いくさうた)酔へど唄はず玩亭忌 臼杵政治
うねりては庭を呑み込む萩の花 及川由美子
皿と皿カチカチ鳴らし秋来たり 佐伯律子
【入選】
石狩の空の青さよ蕎麦を刈る 齋藤嘉子
さやけしや山に向かひて深呼吸 阿部けいこ
参道は小豆煮る香や秋彼岸 川辺酸模
死病得ていよいよ愛し草の花 川辺酸模
産土に行き会ひの空落し水 佐藤和子
古戦場ちらちらと日の吾亦紅 谷村和華子
へちま忌や原発裁判証言す 長谷川冬虹
群れなして秋あかね飛ぶ吾妻山 佐藤和子
えいままよ一網打尽曼殊沙華 上 俊一
静かなり山傾けて蓴舟 佐藤和子
母逝つて今年もたわわ葡萄棚 阿部けいこ
蕎麦刈るや心もとなき一掴み 齋藤嘉子
昭和のまま変らぬ家並赤まんま 武藤主明
【第二句座】 (席題:稲雀、かりんの実、菊酒)
長谷川冬虹選
【特選】
この菊に似合ふ大杯探したり 上 俊一
次の田へ移つてゆきぬ稲雀 平尾 福
庭に出てちよつとつまんで菊の酒 那珂侑子
上々の日和となりぬ稲雀 上村幸三
【入選】
ことのほか妻とこよひは菊の酒 長谷川櫂
まほらなる国へようこそ稲雀 谷村和華子
ちりぢりに飛びちりぢりに来る稲雀 佐伯律子
飲み干して脾腫を鎮めよ菊の酒 齋藤嘉子
稲雀もんどり打ちて飛び立てり 武藤主明
花梨の実裏山のいろ風のいろ 谷村和華子
もうしばし妻と生きたし菊の酒 川辺酸模
菊の酒卒寿の母にさあ一献 齋藤嘉子
一等米二等米もなし稲雀 青沼尾燈子
菊人形見てきて干しぬ菊の酒 及川由美子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】下段は推敲例
かぎりなき思ひの母のかりんの実 三玉一郎
もうしばし妻と生きたし菊の酒 川辺酸模
【入選】
ご自由にお持ち下さい花梨の実 佐伯律子
空き腹が生きる力や稲雀 三玉一郎
脾腫を鎮めよなみなみと菊の酒 齋藤嘉子
目の前の長崎遠し菊の酒 三玉一郎
親に似て丸くは生らず榠櫨の実 臼杵政治
稲雀もんどり打ちて飛び立てり 武藤主明
菊酒に似合ふ大杯探した 上 俊一
次の田へ移つてゆきぬ稲雀 平尾 福
独り寝に慣れたる頃の菊の酒 長谷川冬虹
ひとひらがグラスに浮かぶ菊の酒 青沼尾燈子
