古志仙台ズーム句会(2024年5月26日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
蜥蜴出づ石ひんやりと残りをり 谷村和華子
はつなつの苔の杣道水匂ふ 及川由美子
見つけられ困つた顔の青大将 平尾 福
大夕焼け流れのゆるぶ最上川 甲田雅子
【入選】
青空が夢をみてゐる五月かな 長谷川櫂
マンションの十一階へ夏の蝶 那珂侑子
いくつかの名を持つ猫や南風吹く 平尾 福
田水張り磐梯山を近づけり 武藤主明
野馬追と聞かばそぞろや相馬の血 佐伯律子
古書市にページを捲る若葉風 臼杵政治
大地から怒り受けとるはだしかな 三玉一郎
長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
置かれたるぬる茶ひと口夏は来ぬ 青沼尾燈子
道楽の果て慎ましく新茶汲む 川村杳平
ごろ寝して聴く船底の卯波かな 上 俊一
【特選】
吹く風や滴りどれもみな残像 三玉一郎
目覚めては時に角出せ蝸牛 上 俊一
国滅ぶ五月の空の青さかな 長谷川冬虹
音のなき一日の家に夕立かな 上村幸三
育てたる牡丹の花を棺かな 宮本みさ子
足に手に大地の怒る田植かな 三玉一郎
【入選】
万緑の月山が見ゆ新句集 川村杳平
銭洗ふ笊へ一枚椎若葉 佐伯律子
マンションの十一階へ夏の蝶 那珂侑子
初夏や枝いつぱいに白き花 長谷川冬虹
出し抜けにほろろ打つ雉土塁址 佐藤和子
幸せの花粉まみれや花むぐり 平尾 福
初夏や大オーロラを贈りもの 長谷川冬虹
長靴を泥にとらるる田植かな 武藤主明
一滴の目薬あふれ夏はじめ 上村幸三
大夕焼流れてゆるき最上川 甲田雅子
凍み餅に一息をつく田植かな 臼杵政治
噴水やシュプレヒコール叫びし日 臼杵政治
五百句の山脈しんと岩清水 上村幸三
脳みそをアツプデートや土用干 川辺酸模
朝靄の流るる音を山の宿 甲田雅子
二人居に大き過ぎたり夏の空 三玉一郎
帯なして花栗香る山路かな 及川由美子
野馬追と聞くもそぞろや相馬の血 佐伯律子
風やんで蛇の蛻(もぬけ)のつと動く 石川桃瑪
母の日や包みは花の野良着かな 齋藤嘉子
アカシアの花から花へ山の雨 甲田雅子
滅びゆく地球にふたり冷奴 川辺酸模
卯の花や毬突きし日はつい昨日 及川由美子
山椒魚今日は機嫌がよいらしく 平尾 福
女死して晒一反遺しけり 齋藤嘉子
第二句座(席題:鮎、更衣、鉄線花)
長谷川冬虹選
【特選】
鉄線やわが寸土にも垣築き 上 俊一
えいと捨つ無用のスーツ更衣 上 俊一
選ばれてやがて悲しき囮鮎 武藤主明
愚図愚図と迷ひて今日の更衣 臼杵政治
捨て切れぬシャツまた仕舞ふ更衣 武藤主明
【入選】
朝まだき煌々として鮎の宿 及川由美子
アイロンの蒸気の白し更衣 佐藤和子
衣替え済ませた顔の守宮かな 平尾 福
鮎釣に繰り出すこゑの夜明けかな 佐藤和子
休暇中舎監ひとりと鉄線花 服部尚子
焼き鮎やここから飛騨に入る村 服部尚子
水音に迎へらるるや鮎の宿 谷村和華子
山深く光の底を鮎すすむ 三玉一郎
父の魚籠鮎おるごとく揺れてをり 甲田雅子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
衣かへて夜風に妻を見失ふ 三玉一郎
花一つ散つて鉄線残りけり 平尾 福
偏屈は今更ならず更衣 武藤主明
【入選】
鵜が鮎の夢見るころや長良川 青沼尾燈子
鉄線は長々と伸び人絶えて 上 俊一
鵜も鮎も逃ぐる術なし篝舟 青沼尾燈子
柿渋で染めて投網や鮎の漁 佐伯律子
焼き鮎やここから飛騨に入る村 服部尚子
更衣またさらばへし腕(かひな)かな 青沼尾燈子