ネット投句(2022年10月31日)選句と選評
【特選】
りんご擦り喉へ流せし別れかな 愛知 稲垣雄二
からうじて命の形鵙の贄 愛知 稲垣雄二
古酒新酒なんだかんだと添ひ遂げて 京都 佐々木まき
【入選】
住み古りしこの道にまた秋の暮 大阪 澤田美那子
ヒーヨヒーヨと津軽海峡鳥渡る 北海道 村田鈴音
手なづけしぬかみそ壺や暮の秋 北海道 芳賀匙子
音も無く雪虫となりまつはりぬ 北海道 芳賀匙子
黄落の真只中に置く忌日 北海道 芳賀匙子
長き夜や言葉探しの旅へ出む 北海道 柳一斉
駅出でてそれぞれの帰路秋の暮 北海道 柳一斉
秋雨や錆深めたる廃線路 北海道 柳一斉
初七日や林檎捥ぎても母偲ぶ 宮城 長谷川冬虹
白菊や寂聴嫌ひの母なりし 宮城 長谷川冬虹
露寒や洗ひし髪の薄きこと 茨城 袖山富美江
非力かなかぼちゃに一刀夫に乞う 千葉 芦野アキミ
かんざし揺れて千歳飴引きずりて 千葉 芦野アキミ
霧の香や人の心に人住まふ 千葉 菊地原弘美
邂逅の教え子も老ゆ秋の暮 千葉 谷口正人
ハロウィンの何か知らねど集ひけり 千葉 谷口正人
ただならぬこの世見てをり菊人形 千葉 池田祥子
蟷螂の偉大ないのち枯れ尽す 東京 神谷宣行
湯豆腐の煮くづれ掬ふ老二人 東京 櫻井滋
どこからの修学旅行秋の駅 神奈川 伊藤靖子
秋の夜や一編ずつ読む随筆集 神奈川 遠藤初惠
願ひ事叶ひさうなる林檎かな 神奈川 三玉一郎
凩の笑ふが如く泣く如く 神奈川 片山ひろし
船酔ひに悩む貧乏神の旅 神奈川 片山ひろし
泣きやすく老いしものかな菊膾 長野 金田伸一
秋寒や家毀つあり建つるあり 岐阜 三好政子
大笊を盛りこぼれたる柿日和 大阪 安藤久美
始まるも終はるも早し秋祭 大阪 高角みつこ
すかすかの国の守りか雁来たる 大阪 山中紅萼
大根を煮てふと戦争を忘れさう 大阪 澤田美那子
児が眠り我も眠たや秋の暮 兵庫 加藤百合子
秋の暮大三日月の輝きて 兵庫 天野ミチ
秋風へ踏み出す一歩退院日 兵庫 髙見正樹
針に糸通せぬ齢うそ寒し 岡山 北村和枝