ネット投句(2022年10月15日)選句と選評
【特選】
雨風に葉ごと飛び来るどんぐりよ 北海道 芳賀匙子
間引菜のいのちの丈や昨日けふ 神奈川 松井恭子
しやくとりや深く沈みてまた一歩 岐阜 梅田恵美子
干柿の日向ななめに軒深し 京都 佐々木まき
【入選】
山栗のひとつ頬張りひとつ剥く 北海道 村田鈴音
さざ波の果てる事なき秋思かな 北海道 村田鈴音
夕顔と思ひ育てて瓢箪よ 北海道 芳賀匙子
朝寒や床のラジオの告ぐ戦 北海道 柳一斉
息をかけ飛びたたせやる赤蜻蛉 北海道 柳一斉
この地球月も憂をる十三夜 宮城 長谷川冬虹
気丈の母ときに弱音も十三夜 宮城 長谷川冬虹
どこからも山のみゆる日風爽か 茨城 袖山富美江
一斉に飛び立つ鳥や葡萄畑 茨城 袖山富美江
落鮎は月の海へと戻りけり 埼玉 園田靖彦
母の背の日ごと小さく秋の昼 千葉 菊地原弘美
賑やかに車を叩く木の実かな 千葉 若土裕子
バーチャルの美術館へと夜長かな 千葉 若土裕子
山に住み笑み栗拾って二十年 千葉 春藤かづ子
刈り草の中に一匹穴惑い 千葉 春藤かづ子
子育ての昔ありしよ草虱 千葉 池田祥子
角行のごとく飛びけり秋の蜂 千葉 麻生十三
亡き人の揃えてありし冬支度 千葉 麻生十三
母生きる複雑な家秋の雨 東京 長尾貴代
熟柿食みて元気や微熱の子 東京 長尾貴代
白露や吾子の絵抱きて棺の母 東京 杜野廉司
種こぼしつつ朝顔の蔓仕舞ひ 東京 畠山奈於
草の穂や声をかけ合ふ杖同士 東京 畠山奈於
かわらけを飛ばして惜しむ京の秋 東京 櫻井滋
母よりの大梨いまは妹より 神奈川 伊藤靖子
幻住庵子らの短冊秋さやか 神奈川 越智淳子
もみ殻の田毎に燻る転任地 神奈川 遠藤初惠
翁の忌われも三里に灸据ゑむ 神奈川 遠藤初惠
いがぐりの籠よりころげ画布の中 神奈川 三浦イシ子
思ひ出が苦しい秋の高さかな 神奈川 三玉一郎
栗食みて母より父の恋しき日 神奈川 中丸佳音
酒好きの友の墓前に新走り 神奈川 土屋春樹
菊の鉢置て老の身輝かす 神奈川 湯浅菊子
草の花活けてはなやぐ十三夜 神奈川 那珂侑子
いきなりの寒さにおどろく鴉かな 神奈川 那珂侑子
山盛りの無花果眠る籠の中 新潟 安藤文
身に沁むや海の嘆きのちりあくた 富山 酒井きよみ
ひと蔓の葛も伸び来よ俺の道 石川 花井淳
袈裟懸けに大鰯雲千曲川 長野 大島一馬
とりあへず忘れてしまおふ秋昼寝 岐阜 梅田恵美子
大空の形整ふ松手入れ 愛知 稲垣雄二
我もまた秋扇とは知らざりき 愛知 稲垣雄二
ふぬけたる齢かさねて秋の風 愛知 青沼尾燈子
野菊晴れとは遠き日の遠き空 京都 佐々木まき
さきに寝てまた起きてくる夜長かな 大阪 高角みつこ
後の月こんなに烏騒ぐとは 大阪 高角みつこ
カタカタと秋のおしゃべり入歯かな 兵庫 天野ミチ
前線のあとに青空そぞろ寒 兵庫 髙見正樹
ストーマとなりて退院兄の秋 岡山 北村和枝
園児らの小さき軍手や藷を掘る 岡山 北村和枝
鳴子綱引いては走る子供かな 香川 曽根崇
兄の忌となり落ち栗の其処らぢゆう 長崎 ももたなおよ
こんもりと栗飯兄に父母に 長崎 ももたなおよ
露の世に四十余年の夫婦かな 長崎 川辺酸模
さやけしや風にふれ合ふ竹の音 長崎 川辺酸模