ネット投句(2022年6月30日)選句と選評
【特選】
刻まれし名前に触るる沖縄忌 埼玉 上田雅子
沖縄はさまよふ空母六月忌 神奈川 三玉一郎
風鈴ののたうち回る暑さかな 新潟 安藤文
掃除機で蟻吸つてゆくさびしさよ 新潟 安藤文
すれ違ふ人みな静か大祓 新潟 高橋慧
合歓の花雨をまばゆくしてゐたり 石川 松川まさみ
業平忌蛙のあまた鳴く夜かな 岐阜 梅田恵美子
はらわたは清らにま白鮎の菓子 京都 諏訪いほり
水無月の菓子の白さのあはれかな 大阪 高角みつこ
おどろいて胡瓜も肥る暑さかな 大阪 澤田美那子
火取虫こころ盗みて飛びゆけり 奈良 喜田りえこ
眠りつつ莟みてゐるや麹黴 和歌山 玉置陽子
高気圧ふたつ襲つてきて猛暑 長崎 ももたなおよ
【入選】
晴れ女落雷の如恋をして 北海道 村田鈴音
はなびらと蕊と芍薬昼暗し 北海道 芳賀匙子
喧騒を歯牙にも掛けず山帽子 北海道 芳賀匙子
北国や堕栗の雨となりにけり 北海道 芳賀匙子
鈴蘭を一家で摘みし昔かな 北海道 柳一斉
葛切や琉球弧てふ島々よ 宮城 長谷川冬虹
我が体もてあましたる昼寝かな 茨城 袖山富美江
あいまいな返事をしつつ胡瓜揉む 茨城 袖山富美江
白玉や十年ぶりに会ふいとこ 茨城 袖山富美江
仲間とはなじめぬ蛍ここそこに 埼玉 園田靖彦
炎天や三回廻す洗濯機 埼玉 上田雅子
束の間の仏間床の間居間風鈴 千葉 宮城治
八月や夫の忌日の加はりぬ 千葉 若土裕子
湯通しやゆるりと開く鱧の花 千葉 若土裕子
淀川も我も鉄橋も梅雨の中 千葉 谷口正人
夏至晴れて厨周りの大掃除 千葉 池田祥子
喫すればいちにち生きむ新茶かな 千葉 麻生十三
ソーダ水喧嘩おわって反省会 東京 小野早苗
顔に汗機械に油町工場 東京 神谷宣行
自販機の水売り切れ熱帯夜 東京 長尾貴代
晩涼の仕事帰りやファミマの灯 東京 長尾貴代
夕焼けへ向かひて航ける定期船 東京 楠原正光
堤防の白く輝く七月来 東京 楠原正光
点点と落下傘兵降る夏野 東京 畠山奈於
ヨット帰還なつかし卵かけご飯 東京 畠山奈於
猛暑きて今日も節電警報かな 東京 櫻井滋
万緑の底ひのカフエの老店主 神奈川 遠藤初惠
鉢朝顔携へ下宿に君来たり 神奈川 遠藤初惠
藤寝椅子きしれば父の大き影 神奈川 三浦イシ子
君待てば驚き易き熱帯魚 神奈川 松井恭子
紫蘇を揉む一年ぶりの力込め 神奈川 松井恭子
青嵐あつと人の名思い出づ 神奈川 中丸佳音
ジーパンを脱いで浴衣の顔になる 神奈川 湯浅菊子
大キャベツ使ひ切つたるうれしさよ 神奈川 那珂侑子
顔出さぬ六月富士に愛想つき 神奈川 那珂侑子
美しき水をはなるる河鹿笛 富山 酒井きよみ
われもまた人恋しくて河鹿笛 富山 酒井きよみ
さりげなき朝や一夜の青嵐 石川 松川まさみ
六月の風の重さや髪を吹く 石川 密田妖子
一帳羅の作務衣に替へて冷奴 長野 金田伸一
早起きの徳はありけり郭公來 長野 金田伸一
梅雨明けや地球は宙に投げ出さる 長野 大島一馬
水たまり踏んで遊ぶや梅雨楽し 岐阜 夏井通江
サイクリングロード犬とかけ行く夏の人 岐阜 古田之子
夜涼みや音なく移る飛行の灯 岐阜 三好政子
夏雲がベッドより見ゆ安息日 岐阜 三好政子
あな尊と若き人より煮梅受く 岐阜 三好政子
山蛭も一会よ脛は血にまみれ 岐阜 梅田恵美子
夕立あと蝶の水飲むにはたづみ 岐阜 梅田恵美子
精神を研ぎ澄ましゆく籐寝椅子 愛知 稲垣雄二
スプーンが砕く錠剤夜の秋 京都 吉田千恵子
打たれたり華厳の滝の轟に 京都 佐々木まき
父の日の師を父として句会かな 京都 佐々木まき
淀川をはるか眼下に草を刈る 京都 諏訪いほり
茂り踏み軍靴の音の近づき来 京都 氷室茉胡
曜変は神の戯れ五月闇 京都 氷室茉胡
旅の荷を軽う軽うとほととぎす 大阪 安藤久美
天龍の微笑む日なり田植せん 大阪 安藤久美
籐寝椅子罠のごとくに置かれあり 大阪 高角みつこ
しんどさは猛暑のせいか何なるか 大阪 高角みつこ
麻痺の手でおる折鶴や沖縄忌 大阪 内山薫
水たまりふんづけていく麦わら帽 大阪 内山薫
青梅雨や炙つてもらふ串団子 大阪 澤田美那子
戦争から目をそらすなと蟇 大阪 澤田美那子
マスク外して梔子の花の香を 兵庫 加藤百合子
一寸の心を残し蝉の殻 兵庫 加藤百合子
薄薄と粉の手に付く今年竹 兵庫 吉安とも子
梅仕込むラベルの文字に気合入れ 兵庫 藤岡美恵子
落ち柿の音に驚く暮らしかな 兵庫 藤岡美恵子
人の都合おかまひなしに梅落つる 兵庫 藤岡美恵子
紫陽花や葉の雫ひとつ落ちんとす 兵庫 福田光博
紫陽花やたどれば雨の阿弥陀堂 兵庫 福田光博
香水瓶幸せといふ澱溜めて 奈良 喜田りえこ
四十雀大きな鳥に蹴散らされ 奈良 中野美津子
食べ助けとてもらひたる胡瓜かな 和歌山 玉置陽子
いざ出む帽子に傘の炎天日 広島 鈴木榮子
村ぢゅうの藺草の乾く風軽し 香川 曾根崇
籐寝椅子去年は父と話せしに 香川 曾根崇
風鈴や浪も居眠る唐津湾 長崎 川辺酸模