ネット投句(2022年6月15日)選句と選評
【特選】
柚の花の散りて翡翠の玉ひとつ 大阪 澤田美那子
蛇の衣かつとこちらを見てをりぬ 兵庫 藤岡美恵子
雨蛙もの干し竿に並びたり 奈良 中野美津子
脛すすぐ早乙女ひとり月の中 長崎 川辺酸模
万緑やたつぷり乳の出る乳房 大分 山本桃潤
世直しの夜明のやうに代田かな 大分 竹中南行
【入選】
鬱陶しい日日にこんもり青山椒 北海道 芳賀匙子
終わりなきいくさ卯の花腐しかな 千葉 麻生十三
その白のまがまがしさや梅雨茸 神奈川 越智淳子
南部風鈴魂が鳴りにけり 神奈川 三玉一郎
風鈴のしづけさに目を覚ましけり 神奈川 三玉一郎
音がしてそこに風鈴ありにけり 神奈川 三玉一郎
本業は神官の妻実梅もぐ 神奈川 松井恭子
亜紀さんの投句もうなし梅雨に入る 新潟 安藤文
うぐいすに応へ口笛吹く泉 新潟 高橋慧
ひと杓の清水を汲みて外郎売 石川 花井淳
突き棒から花と出でけり心太 石川 花井淳
今半に厄を落とせり半夏生 石川 花井淳
武器持たず滅ぶ覚悟や露涼し 石川 松川まさみ
さはさはと風のさざなみ更衣 石川 松川まさみ
梅雨寒や大樹一葉も揺るぎなし 長野 大島一馬
やまなしの花の咲く下父の墓 岐阜 古田之子
濃尾野の田植は遅し水光る 岐阜 三好政子
毛並みよき毛虫や吾も愛づる姫 岐阜 梅田恵美子
真青なる空駆け下る那智の滝 岐阜 梅田恵美子
青春は力任せの団扇かな 愛知 稲垣雄二
似るまひとして母に似て薬狩 愛知 宗石みずえ
ハンモック浄土の風に揺れてゐる 京都 氷室茉胡
初鱧に眉間の皺の綻びぬ 京都 氷室茉胡
雪のごと幣ひらひらと御田植 大阪 安藤久美
ヨットにも愛されたりし青春よ 大阪 高角みつこ
薔薇散るやロシアの詩人いかにおはす 大阪 高角みつこ
また一枚水の入らぬ田んぼかな 大阪 内山薫
鴨川のほとり暮れゆく鱧料理 大阪 木下洋子
枇杷熟れてかをる昭和のたたずまひ 大阪 澤田美那子
雨蛙雨より生れて枝の先 兵庫 加藤百合子
梅雨曇りわれも湿気りて寝転がる 兵庫 天野ミチ
小判草愉快なほどに増えにけり 兵庫 藤岡美恵子
製鉄所夾竹桃の咲く垣根 兵庫 髙見正樹
久し振り幼き孫の昼寝顔 兵庫 髙見正樹
人類に絶望しつつ夏来たる 奈良 中野美津子
山の子に吊り上げられて蟻地獄 和歌山 玉置陽子
長き脚の先に江ノ島籐寝椅子 和歌山 玉置陽子
手をかはしほうたる風に乗りにけり 香川 曽根崇
梅雨寒や応挙の虎に睨まるる 香川 曽根崇
青空を逆さまにして実梅もぐ 長崎 ももたなおよ
病む母の窓に吊さむ螢籠 長崎 川辺酸模
一句一句無意識界より滴れる 大分 山本桃潤
栗の花かつて信じた自由主義 大分 竹中南行