ネット投句(2022年3月31日)選句と選評
【特選】
青空の麦秋戻れウクライナ 北海道 柳一斉
砂に寝てこころは空へ春の海 北海道 柳一斉
花冷えや脳裡きざまる逃避行 東京 長尾貴代
・脳裏にきざむ
入学のこころ忘れて卒業す 神奈川 三玉一郎
東京駅奥の奥まで春愁 新潟 安藤文
花便り連山丈を争はず 長野 大島一馬
体より働く音す春の昼 岐阜 夏井通江
・から?
この島は湾の真ん中白子干す 愛知 宗石みずえ
山桜全山神の供花とせむ 奈良 喜田りえこ
三月の天使舞ひ降りコブシ咲く 大阪 内山薫
今日よりはキーウと呼ばん花の冷 大阪 木下洋子
一瞬で戦場となる春の宵 大阪 澤田美那子
暁暗に音なく発てる遍路かな 香川 曽根崇
花冷の地球ふるはす戦車かな 長崎 川辺酸模
あの日より悲しと思ふ三月来 長崎 川辺酸模
人としてのこころ育てよ飴山忌 大分 山本桃潤
【入選】
洗顔の泡立つ朝や水温む 北海道 村田鈴音
学び舎はともしびの丘ふきのたう 宮城 長谷川冬虹
ふきのたう震災復興十一年 宮城 長谷川冬虹
春雨や白く大きなチェロケース 茨城 袖山富美江
・上五、再考。
早起きの理由は一つ春が来たから 埼玉 上田雅子
・から、不要。からを入れる理屈漬けの頭を改善せよ。
春雨や鳴るはずのない電話の音 埼玉 湯浅寒葵
・電話鳴る
今読まむ「ロシアについて」菜の花忌 千葉 谷口正人
何遍も見納めをして雛しまふ 千葉 谷口正人
思ふまま引きもきらずに囀れり 千葉 池田祥子
赤子の手花ひとひらを握りしめ 東京 掘越としの
冴え返る地下壕の闇呱々の声 東京 畠山奈於
麦笛や無銭旅行の若き日々 東京 櫻井滋
春の雨平らな海を濡らしけり 東京 齊藤拓
箱車今朝も鰆のあふれける 神奈川 越智淳子
・今朝〜ける、一考を。
幻の空とは知らず卒業す 神奈川 三玉一郎
菜の花の山となりたる棄てキャベツ 神奈川 松井恭子
チューリップ光のなかの静寂かな 神奈川 松井恭子
天神社の祈願鉛筆風光る 神奈川 那珂侑子
・社、不要。
質素こそ国の基ぞ目刺焼く 神奈川 片山ひろし
好奇心満ちて風船空をゆく 富山 酒井きよみ
初ものはミルクの味や春たけのこ 富山 酒井きよみ
久闊を叙すや田楽前にして 岐阜 三好政子
てらてらと猪のぬた場や春の山 岐阜 梅田恵美子
難民は日永の道を追はれかり 愛知 稲垣雄二
・ゆく
つくづくと一人の夜や独活食うて 京都 氷室茉胡
核持たぬ国に育つて花見かな 大阪 木下洋子
侵攻や命も夢も奪ふ春 大阪 木下洋子
蕗のとう味噌とみりんとフライパン 兵庫 福田光博
戦場へ響け歌声さくら咲く 奈良 喜田りえこ
どを返す音に目覚めむ蘆の角 和歌山 玉置陽子
・蘆の角では他人事。
目玉無き涙のいろの目刺かな 和歌山 玉置陽子
しぼり込む海まくれなゐ鯛網船 香川 曽根崇
かひやぐら崩し黒船現るる 長崎 ももたなおよ
鴇色のラヂオの仏語あたたかし フランス 廣瀬玲子