ネット投句(2021年8月31日)選句と選評
【特選】
なに目指し歩みし道や敗戦忌 07_福島 渡辺遊太
原爆忌浜に木の骨貝の骨 07_福島 渡辺遊太
救急車行きどころなき秋の暮 13_東京 櫻井滋
・なし
へうたんに酌みても尽きぬ酒やある 16_富山 酒井きよみ
鰯雲この長身を横たへん 17_石川 花井淳
落ち蝉の残る命を塵取りへ 17_石川 密田妖子
・に
そそくさと踊る阿呆になりに行く 26_京都 佐々木まき
蘆刈の姿のままに老ゆるかな 27_大阪 澤田美那子
・老いし
ゆつくりとこの世眺めむ秋簾 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
生身魂家震はするうがい声 50_フランス 廣瀬玲子
何の服も似合はぬ合はぬ残暑かな 01_北海道 芳賀匙子
炎帝やなほ濁流の最上川 04_宮城 長谷川冬虹
古道てふ径見え隠れ萩の花 08_茨城 馬場小零
大空の座標を探す蜻蛉かな 08_茨城 馬場小零
竹伐って父母の花筒取り替へん 11_埼玉 園田靖彦
腐れ縁すぱりと断ちて新生姜 11_埼玉 園田靖彦
焦げるまで網に転がし茄子かな 11_埼玉 上田雅子
看取られぬ死者弔はん星月夜 11_埼玉 上田雅子
新涼や滴るほどに化粧水 11_埼玉 藤倉桂
仕舞湯やまだ拙くて虫の声 11_埼玉 藤倉桂
七日ずつ薬揃えて夏果つる 12_千葉 芦野アキミ
一人膳かすかに祭り囃子かな 12_千葉 芦野アキミ
大風の揺さぶる青き蜜柑山 12_千葉 若土裕子
新豆腐食の細りし母に先ず 12_千葉 若土裕子
大家族支へし母の南瓜かな 12_千葉 池田祥子
秋めくと頷き合へる鯉泥鰌 12_千葉 池田祥子
全体重押しつけて切る大南瓜 13_東京 岡田栄美
盆過ぎて富士が一気に迫りくる 13_東京 神谷宣行
十のうち九本は曲がり胡瓜かな 13_東京 長井亜紀
誘蛾灯死ぬとも知りて落ちる恋 13_東京 長井亜紀
放課後のドッジボールやうろこ雲 13_東京 楠原正光
移住せし夫婦は若し新豆腐 14_神奈川 越智淳子
手をつけぬ絣いつぴき秋きざす 14_神奈川 金澤道子
満身にひしとまつはる残暑かな 14_神奈川 三浦イシ子
水に濡れ光に濡れて新豆腐 14_神奈川 三玉一郎
羽拾ふ九月の空のいづくより 14_神奈川 松井恭子
一木を覆う葛の葉葛の蔓 14_神奈川 水篠けいこ
源流に片手を浸し夏惜しむ 14_神奈川 中丸佳音
瑠璃蜥蜴褒むれば墓の裏側へ 14_神奈川 中丸佳音
一匹となりし目高の残暑かな 14_神奈川 那珂侑子
広告のはや節料理秋暑し 14_神奈川 那珂侑子
つぶやきが飛び交つてゐる夜長かな 15_新潟 安藤文
揺れながら子蜘蛛を狙ふ子かまきり 15_新潟 高橋慧
足裏を崩るる砂も秋の海 15_新潟 高橋慧
末成りと思つてゐしが大瓢 16_富山 酒井きよみ
白山から芒づたひに下りけり 17_石川 花井淳
それぞれに笑顔を向ける木の実かな 17_石川 花井淳
目のかすむ病を得たり秋の空 20_長野 金田伸一
かすむ目にパラリンピック熱き秋 20_長野 金田伸一
蟋蟀に大地確と共鳴す 20_長野 大島一馬
秋桜は秋桜然と戦ぎおり 20_長野 大島一馬
白昼夢たれコロナも星降る白夜とか 20_長野 柚木紀子
向日葵や悪の扉を開けし者 21_岐阜 古田之子
迢空の小暗き道や仙翁花(恵那市上矢作町) 21_岐阜 三好政子
朝顔の鉢植ゑ膝に車椅子 21_岐阜 辻雅宏
三十のバケツ田並ぶ豊の秋 23_愛知 稲垣雄二
鯊釣や隣の浮きをまた引きて 23_愛知 臼杵政治
つましくも己が内なる玉祭り 23_愛知 青沼尾燈子
大丈夫といふ無責任藪からし 26_京都 吉田千恵子
藤寝椅子死にゆくときはこの上で 26_京都 佐々木まき
爽やかや草木の名札ごとに和歌 26_京都 氷室茉胡
晩年は一日長し酔芙蓉 26_京都 氷室茉胡
恐竜の孵化ゆつくりと熱帯夜 27_大阪 安藤久美
冷や奴今日で納めとお思いしが 27_大阪 高坂泰子
定年後の長きに憂ふ晩夏かな 27_大阪 内山薫
ひときはに鮭なまぐさき残暑かな 27_大阪 内山薫
猛然と食うて太りて芋虫よ 27_大阪 澤田美那子
藍浴衣母の乳房のうすきこと 27_大阪 齊藤遼風
苦瓜の憤怒の種の熟したる 28_兵庫 加藤百合子
蜩や十秒ほどのそれつきり 28_兵庫 加藤百合子
うつし世の夜を明るく盆の月 28_兵庫 加藤百合子
星月夜兄の形見のオルゴール 28_兵庫 千堂富子
日が暮れて心底嬉しき残暑かな 28_兵庫 天野ミチ
弟に少し小さく瓜の馬 28_兵庫 藤岡美惠子
この大樹ひぐらしの木と名付けたり 28_兵庫 藤岡美惠子
祇園会の生ぬるき風京の風 28_兵庫 福田光博
盆踊り妻のまぎれて帰り来ず 29_奈良 喜田りえこ
テーブルの秋の二草朝ごはん 29_奈良 田原春
新涼やワルツのやうに踏むミシン 30_和歌山 玉置陽子
密やかな寝息香るや桃の箱 30_和歌山 玉置陽子
藺座蒲団ひとつ残りて法事果つ 34_広島 下田あつ子
苗木から育て酢橘の初成りぞ 37_香川 丸亀葉七子
ワクチンを打つも抽選秋暑し 42_長崎 ももたなおよ
敗戦日かつて眩しき民主主義 42_長崎 川辺酸模
敗戦日書棚に古ぶ堕落論 42_長崎 川辺酸模
敗戦日憲法前文今一度 42_長崎 川辺酸模
混沌のわれら何処へ秋の風 44_大分 竹中南行