ネット投句(2021年5月15日)選句と選評
・大渦の底見せて欲し観潮船(曽根崇)、特選のこの句の中七は「見せて欲し」ではなく「見えたり」としたほうがいい。
・ただ私が直すと、作者を縛るので、ご自分で句を見て、ここをこうすればいいと気づいてください。
・それを推敲といいます。
・選外を含め、ほかの句も同じです。
【特選】
山瀬来る抗う風車一基あり 01_北海道 村田鈴音
この初夏の素晴らしき日に何もせず 13_東京 森徳典
ひなげしやしばし留めん車椅子 13_東京 櫻井滋
蟻地獄しづかに数を増やしけり 14_神奈川 三玉一郎
今年まだ箱を出てこぬ夏帽子 14_神奈川 三玉一郎
夜を鳴く時鳥明日吾は歩けるか 20_長野 柚木紀子
妖精に会へずに老いし薔薇の花 21_岐阜 夏井通江
碧玉をもてあそぶ如新茶汲む 27_大阪 澤田美那子
フクシマの声なき声や五月闇 28_兵庫 千堂富子
泳ぎ疲れは父親ならん鯉のぼり 28_兵庫 藤岡美惠子
噴水を揺さぶる風や飛沫降る 28_兵庫 髙見正樹
水楢の水が誘ふや更衣 29_奈良 喜田りえこ
更衣青空近くなりしかな 33_岡山 齋藤嘉子
大渦の底見せて欲し観潮船 37_香川 曽根崇
すかんぽやみんな貧しき日の記憶 37_香川 曽根崇
散りてなほ唐紅の牡丹かな 42_長崎 川辺酸模
泰山木唐変木も花開く 44_大分 山本桃潤
【入選】
筋肉痛すこし和らぐ花水木 03_岩手 川村杳平
コロナ禍の夜逃げの店や春の暮 03_岩手 川村杳平
春キャベツ茹であがりたる朝ごはん 04_宮城 長谷川冬虹
カーネーション貧しき家に生まれけり 05_秋田 佐藤一郎
避難地は茅花流しの波の果て 07_福島 渡辺遊太
千本の薔薇を砦に籠もりをり 07_福島 渡辺遊太
手紙書くひとりつきりの緑の夜 11_埼玉 藤倉桂
産土に残る大木桐の花 12_千葉 若土裕子
憂き日々をしばし忘れん藤の花 12_千葉 谷口正人
鹿の子の眼行き交ふマスク映しけり 12_千葉 谷口正人
どたばたのコロナ対策明け急ぐ 12_千葉 池田祥子
百年の太き根のはる牡丹かな 12_千葉 麻生十三
髪洗ふ釣舟草を揺らしつつ 13_東京 岡恵
茅花まだ薄紅色や風の中 13_東京 岡恵
拳骨は父豆飯は母の味 13_東京 神谷宣行
青葉木菟日々人間を探求す 13_東京 神谷宣行
大鍋に蛸はなやかに茹で上がり 13_東京 西川遊歩
人類の流れるプール昭和の日 13_東京 西川遊歩
七階の点滴に来よ夏の蝶 13_東京 長井亜紀
濃き淡き山の闇夜が縮布に 13_東京 長井亜紀
するすると冷汁三杯胃袋に 13_東京 長井亜紀
衣更え袖も通さぬ服あまた 13_東京 長尾貴代
紫陽花やころがり走るマルチーズ 13_東京 楠原正光
石楠花はたそがれどきがよく似合ふ 13_東京 楠原正光
木苺を摘んで帰りしこの道を 13_東京 楠原正光
ベビーカー添ひつ離れつ夏の蝶 13_東京 堀越としの
ひなげしや峯なほ白き八ヶ岳 13_東京 櫻井滋
三千歩めやすは土手の花茨 14_神奈川 遠藤初惠
江ノ島の裏は荒磯箱眼鏡 14_神奈川 金澤道子
サーフボード抱へて古稀となりにけり 14_神奈川 金澤道子
留守番や開ければ灯る冷蔵庫 14_神奈川 三玉一郎
純白に散り敷く夢を山法師 14_神奈川 松井恭子
枇杷たわわ他人事なれど一大事 14_神奈川 松井恭子
新緑やカーテン一気に開けるべし 14_神奈川 松井恭子
花柄の杖引く人も薔薇の中 14_神奈川 水篠けいこ
はつ夏の磯の小石を文鎮に 14_神奈川 中丸佳音
本堂の縁借り申す目に青葉 14_神奈川 中丸佳音
オリンピツクカウントダウン五月闇 14_神奈川 湯浅菊子
筍をどつさりいれて炊飯器 14_神奈川 那珂侑子
筍は茹でて半分お返しとす 14_神奈川 那珂侑子
首曲げて斜めにあruku羽抜鶏 14_神奈川 片山ひろし
一面に植田かがやいてゐるドライブ 15_新潟 安藤文
ふらここにはるかな日々の記憶あり 16_富山 酒井きよみ
一人去り二人去りふらここに一人 16_富山 酒井きよみ
豌豆摘みつ話す烏賊釣り漁のこと 17_石川 花井淳
母の長きながき独り居水中花 17_石川 松川まさみ
野心もて一句に向かふ夏初め 20_長野 金田伸一
一年をおきて「封切る新茶かな 20_長野 金田伸一
田に川に端然とあり五月空 20_長野 大島一馬
ポストに音卯の花茎に空洞 20_長野 柚木紀子
この森にるりたては蝶おりし日日 21_岐阜 古田之子
風薫る連句のやうにアンソロジー 21_岐阜 三好政子
さつぱりと夢を忘れし昼寝覚 21_岐阜 梅田恵美子
優柔不断なところ大好き更衣 23_愛知 臼杵政治
父訪へば笑顔たふとし麦の秋 23_愛知 宗石みずえ
金色の麦刈るひとり空見上ぐ 23_愛知 服部紀子
アフガンの奇跡の麦もきんいろか 23_愛知 服部紀子
手を入れて庭の草木の梅雨入かな 23_愛知 野口優子
牛も啼かん祭中止の空しさに 26_京都 佐々木まき
夜濯やけふの憂きことけふ捨てん 26_京都 佐々木まき
睡蓮にモネの心を覗くかに 26_京都 佐々木まき
子どもの日ひとりとなりし母訪はな 27_大阪 安藤久美
弟に折りし兜を飾りけり 27_大阪 木下洋子
いちびりは今も変はらず柏餅 27_大阪 木下洋子
若葉には若葉の葉擦れ山の寺 27_大阪 齊藤遼風
肥の国は青葉時雨の中にあり 27_大阪 齊藤遼風
海鳴りに背骨まつすぐ紺浴衣 28_兵庫 魚返みりん
冷蔵庫背高く白くどつかりと 28_兵庫 天野ミチ
夏潮や錨泊船の向き変る 28_兵庫 髙見正樹
花樗鳥に混じりて嬰の声 29_奈良 喜田りえこ
明易や海界越ゆる死者の声 29_奈良 喜田りえこ
濁り水すくと出でたる菖蒲の芽 29_奈良 田原春
薔薇園や主の長靴先に立ち 29_奈良 田原春
奠供山ひときは青き立夏かな 30_和歌山 玉置陽子
薬玉や嬰に持たせる五色の緒 30_和歌山 玉置陽子
南無阿弥陀仏真つ二つなる大ミミズ 33_岡山 齋藤嘉子
梅雨寒や昼の風呂でもたてやうか 37_香川 丸亀葉七子
父と子がヨットで志度寺参りかな 37_香川 丸亀葉七子
変異株育つ卯の花腐しかな 42_長崎 ももたなおよ
袋掛民主主義つて面倒な 44_大分 山本桃潤
ひもすがら鳶は輪を描きこどもの日 44_大分 竹中南行
若き日や中也に挟む庭石菖 46_鹿児島 大西朝子
学友の墓へと続く楠若葉 46_鹿児島 大西朝子
つらつらと二年の無沙汰詫ぶ遅日 50_外国 廣瀬玲子