ネット投句(2020年9月15日)選句と選評
・すっかり遅くなりました。
【特選】
葡萄狩る乳房のごとき一房を 11_埼玉 上田雅子
浅漬やこのひと塩に母の味 13_東京 岡田栄美
・ひと塩の
ふるさとの少年となり鰍突く 14_神奈川 片山ひろし
真夜中の飛蝗と遊ぶ一詩人 20_長野 金田伸一
街なかの水路に魚影水澄める 28_兵庫 髙見正樹
しやりしやりと二十世紀や口の中 28_兵庫 天野ミチ
・澄めり
ふがふがとオルガンを弾く夜長かな 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
秋風のはやさで登るリフトかな 01_北海道 高橋真樹子
ぬるま湯にほろほろほどくはららごよ 01_北海道 芳賀匙子
歩きたし紫陽花のある旧家まで 01_北海道 柳一斉
二番花桔梗いよいよ群れ咲けり 04_宮城 長谷川冬虹
蒼穹の切り岸高し秋の蝶 07_福島 渡辺遊太
虫売りの虫に名前をつけて呼ぶ 11_埼玉 園田靖彦
・虫売は
嫁となる女性に一献菊の酒 11_埼玉 藤倉桂
・嫁となる人
団塊の我ら老人大銀河 12_千葉 池田祥子
かなかなや昨日のはやも懐かしき 12_千葉 池田祥子
・はやも昨日の
夜なべして栗むく指や懐かしき 12_千葉 麻生十三
虫売りの棲み処は誰も知らぬまま 13_東京 西川遊歩
・虫売は
自然薯の蔓を見つける一仕事 13_東京 楠原正光
・蔓探すのも
見に入むや暗渠となりし渋谷川 14_神奈川 金澤道子
・身
秋の野に泣く子走る子はだかんぼ 14_神奈川 原田みる
ドアノブに届けられたる秋なすび 14_神奈川 水篠けいこ
幼子の髪に一輪秋桜 14_神奈川 土屋春樹
牛群れて人を見に来る花野かな 14_神奈川 湯浅菊子
桐の葉や残暑の風になぶられて 14_神奈川 服部尚子
チェロ弾きが道を横切る星月夜 17_石川 岩本展乎
湿原に木道白し秋に入る 20_長野 大島一馬
・白し?
秋日和放心の蝶迷い来ぬ 20_長野 大島一馬
うすらひの絶対音感娘ハモ 20_長野 柚木紀子
恐竜の背中のやうなゴーヤ割く 21_岐阜 三好政子
露ふみてめざす山巓雲のなか 21_岐阜 梅田恵美子
山の宿水旨かりき星月夜 21_岐阜 梅田恵美子
・山宿の
森閑と耳鳴りを聴く良夜かな 22_静岡 池ヶ谷章吾
秋扇かすかに骨の音したり 23_愛知 稲垣雄二
振り向ける野良着の美貌葛の風 23_愛知 宗石みずえ
コンビニへいつもの道の虫時雨 23_愛知 宗石みずえ
長茄子に跨り父は西方へ 23_愛知 青沼尾燈子
秋風に丸ごと吹かれ大文字山 26_京都 佐々木まき
ウイルスの世に一抜けて行く夏よ 26_京都 佐々木まき
・世を
近頃は妻の言ひなりいぼむしり 26_京都 氷室茉胡
邯鄲の壊れさうなるうすみどり 27_大阪 古味瑳楓
蝶睦むきりきりと射す陽射し中 27_大阪 山中紅萼
虫売の今年は居らず虫の声 27_大阪 木下洋子
生き難き日の幾日ぞ蝦蛄を剥く 27_大阪 齊藤遼風
無花果を二三のこして白寿かな 27_大阪 齊藤遼風
ぎんどろのさやぐや白き秋の風 28_兵庫 加藤百合子
折鶴に命吹き込む秋の夜 28_兵庫 千堂富子
黙祷の一穂一穂や青田風 28_兵庫 藤岡美惠子
朝歩き玄関出ればそぞろ寒 28_兵庫 髙見正樹
上げ潮に波立つ河口秋の昼 28_兵庫 髙見正樹
初鴨の羽をやすめる水の音 29_奈良 喜田りえこ
鰯雲ラジヲの告ぐる死者の数 29_奈良 喜田りえこ
芳しき畦の匂ひや蜻蛉行く 29_奈良 田原春
稲刈るや西行庵を仰ぎつつ 30_和歌山 玉置陽子
たましひを夏のどこかに忘れけり 33_岡山 齋藤嘉子
雨粒の映える七色唐辛子 37_香川 丸亀葉七子
虚空よりひとかけの詩を水の澄む 37_香川 元屋奈那子
心中に一本の木や涼新た 38_愛媛 古志溢子
アルバムを開きしよりの秋思かな 42_長崎 川辺酸模
朗々と杜甫よむ夜学教師かな 42_長崎 百田直代
佇立して見上ぐるばかり今日の月 43_熊本 筑紫秋蘭
草の花自由の価値を知る香港 44_大分 山本桃潤
もう眠し眠らせてくれ酔芙蓉 44_大分 土谷眞理子