ネット投句(2020年9月30日)選句と選評
・思うことをいうのが句の基本。思うことを五七五に当てはめてはいけない。
【特選】
火照る身をばさと浸さん秋の風 07_福島 渡辺遊太
鬼柚子やマスクの顔も慣れにけり 13_東京 岡 惠
マスク越し沁みくるかをり葛の道 13_東京 畠山奈於
鈴虫に負けじと螻蛄の鳴く夜かな 20_長野 金田伸一
夫寝ねて灯火親しも青インク 21_岐阜 三好政子
・自分だけの時間。
あかあかや命を染める赤蜻蛉 21_岐阜 梅田恵美子
・あかあかと命染まりぬ
親の知らぬ道も行くらし草虱 23_愛知 宗石みずえ
父と来て草に隠れる小鳥狩 27_大阪 山中紅萼
・れし
アユタヤの秋恋しがる子象かな 29_奈良 喜田りえこ
のどぐろや百万石の箸に秋 29_奈良 喜田りえこ
・箸の秋
てのひらに笹舟ひとつ秋うらら 44_大分 竹中南行
小宇宙集めて葡萄大宇宙 44_大分 土谷眞理子
【入選】
飛べることうれしき空へ雁帰る 01_北海道 高橋真樹子
夕顔の実一つ畑の仕舞はるる 01_北海道 芳賀匙子
かんぺうをへろへろ剥きて真白かな 01_北海道 芳賀匙子
明日ありと閉づる眼や星月夜 01_北海道 柳一斉
白桃や乳房むさぼる赤子かな 04_宮城 長谷川冬虹
・白桃の
月代や団子積む妻たわいなし 05_秋田 佐藤一郎
・たわいなく
束の間の縁なりけり菊膾 07_福島 渡辺遊太
目が覚めて秋の呼吸になりてをり 11_埼玉 佐藤森恵
宇宙(コスモス)の色みな集め落ち葉かな 11_埼玉 佐藤森恵
新米来る田を守りゐる兄一人 11_埼玉 上田雅子
・田を守る兄一人より
姿なき遠吠えさまよふ霧の街 11_埼玉 湯浅寒葵
蒼天や毬栗笑栗出落栗 11_埼玉 藤倉桂
秋澄むや姉と口紅選ぶ昼 12_千葉 菊地原弘美
ごろごろと湯もみのやうや桶の芋 12_千葉 若土裕子
秋雨や傘で間をとるディスタンス 12_千葉 谷口正人
山雀の戻り来る垣秋高し 12_千葉 池田祥子
父背負い秋の山行く湯治かな 12_千葉 麻生十三
・ひ
自転車の曲線朱色秋めきぬ 13_東京 井上じろ
ぬくめ酒ちりめんさんしょのぴりからと 13_東京 横山直典
・さんせうぴりからと。旧仮名が読みにくければ漢字に。
手に触れし表紙ひやりと秋の暮 13_東京 岡 惠
色褪せしもんぺばかりの茸採り 13_東京 岡田栄美
蓑虫のこれ一筋のいのち綱 13_東京 岡田栄美
鬼の子の密を嗤ひて揺るるかな 13_東京 市村さよみ
骨納む何時か吾身も秋彼岸 13_東京 森徳典
大いなる自然のちから芋虫に 13_東京 神谷宣行
秋風やちりりとミント乾きゆく 13_東京 西川遊歩
土用波いよいよ富士は青くあれ 13_東京 長井亜紀
点滴がいのちのみずや滴れり 13_東京 長井亜紀
・づ
あをさぎや夏を揺らせよゆさゆさと 13_東京 長井亜紀
子等さりてあとかたもなき彼岸かな 13_東京 長尾貴代
秋風や我が身の内を通り抜け 13_東京 楠原正光
上寿まで杖一本や今日の菊 13_東京 畠山奈於
秋の朝脱ぎ着手を貸すこと多く 13_東京 畠山奈於
啄木鳥に戸を叩かれて八十路かな 13_東京 櫻井滋
不知火を待てど見えざりあの闇夜 14_神奈川 伊藤靖子
落ち葉踏む音むかふより来りけり 14_神奈川 遠藤初惠
虫売りが夕暮れ連れて来たりけり 14_神奈川 金澤道子
水澄むや空より青く映る空 14_神奈川 原田みる
後悔の雲に寝ころぶ夜長かな 14_神奈川 三玉一郎
十手先の秋を見てゐる扇かな 14_神奈川 三玉一郎
日の影にかくれてをりぬ赤蜻蛉 14_神奈川 松井恭子
味噌漬けの一切れうれし栗おこわ 14_神奈川 水篠けいこ
三畳間机代わりの林檎箱 14_神奈川 水篠けいこ
曼殊沙華恐ろしかりし下校途 14_神奈川 中丸 佳音
ちょつかいを出すなと怒るいぼむしり 14_神奈川 湯浅菊子
・ちよつかい
これぞ秋晴れどこまでも歩きたし 14_神奈川 那珂侑子
熊の仔と競いてさがす通草の実 14_神奈川 服部尚子
・ひ
車窓より富士の新雪まのあたり 14_神奈川 片山ひろし
色えんぴつ百本削り秋に入る 15_新潟 高橋慧
越中は刈田の中や西東 17_石川 花井淳
秋草やファールボールが転げ込む 17_石川 岩本展乎
鈴虫を飼へば真昼のこゑ高し 20_長野 金田伸一
鈴虫の総出に霧を吹きかくる 20_長野 金田伸一
人類は露つるかめあめつちに 20_長野 柚木紀子
「みんな長生きしないとね」炬燵猫千一つぴき 20_長野 柚木紀子
山宿の闇みづみづしずいき食ぶ 21_岐阜 夏井通江
噛んでみて絵本確かむややの秋 21_岐阜 夏井通江
稲刈や泥田の轍黒ぐろと 21_岐阜 古田之子
竜胆や龍太思ほゆ山の道 21_岐阜 梅田恵美子
雲遊ばせて金閣の秋の水 26_京都 氷室茉胡
吾が身の箍あちこち外れ木賊刈る 26_京都 氷室茉胡
こもりくの空の奥へと稲架を組む 27_大阪 安藤久美
望月は大き眼にあふれけり 27_大阪 古味瑳楓
校長は瓢箪ばかり遺しけり 27_大阪 古味瑳楓
秋の蜂信号待ちをからかひて 27_大阪 高角みつこ
涼しさや朝の戸開けの軽やかさ 27_大阪 山中紅萼
秋の日の母のリハビリ紙風船 27_大阪 内山薫
山路来て僧が手打の走り蕎麦 27_大阪 木下洋子
月仰ぎコロナ籠りもよからんや 27_大阪 澤田美那子
姿よき子芋選びて衣被 27_大阪 澤田美那子
・選びぬ
一刷毛の雲の行方や松虫草 28_兵庫 千堂 富子
家路なる暗き土手道夜寒かな 28_兵庫 髙見正樹
秋寒し舫う艀を洗う波 28_兵庫 髙見正樹
・ふ
立て札の百姓一揆彼岸花 29_奈良 田原春
大甕へばさと入れたる芒かな 30_和歌山 玉置陽子
秋風の忘れてゆきし茶杓かな 33_岡山 齋藤嘉子
秋の風すさみに削る茶杓かな 33_岡山 齋藤嘉子
青葡萄吾の資産は想ひ出の束 37_香川 丸亀葉七子
人去りて秋風ばかり天守閣 38_愛媛 豊田喜久子
うたた寝て顔なつかしき青瓢 42_長崎 川辺酸模
うたた寝の
風はるかよりはるかへと花野かな 42_長崎 百田直代
百幹の中の一幹竹を伐る 44_大分 竹中南行
おもしろや顔のゆがみし捨案山子 44_大分 土谷眞理子
生き死には表裏一体秋簾 44_大分 土谷眞理子
名月や遠回りして眼鏡橋 46_鹿児島 大西朝子
不機嫌な猫の瞳に月蒼く 46_鹿児島 大西朝子
・蒼し