ネット投句(2020年1月15日)選句と選評
・遅ればせながら、新年おめでとうございます。
・今年もまず600句の暗唱から。
・若き日の怠り(欠落?)を補うにはこれしかない。
・「読初の『折々のうた』600句」松宮京生子さん
【特選】
梵天の青年己が湯気の中 05_秋田 佐藤一郎
無垢無心無口無防備寒卵 07_福島 渡辺遊太
初晴や芝生の丘に飽きもせず 11_埼玉 牧内麻衣
筑波嶺の光手元に鍬始 12_千葉 池田祥子
・上々
寒入りや鷺の啄ばむ日のかけら 12_千葉 池田祥子
蓬莱に祀れミシンとこうもり傘 13_東京 西川遊歩
・上々
大寒の海鼠となりてものおもふ 13_東京 安藤文
食べさせる口の中まで日脚伸ぶ 13_東京 圡井緑天
・上々
鰭酒やまづは目鼻を潤はせ 14_神奈川 越智淳子
・上々
たくましきうしろ姿や女正月 27_大阪 古味瑳楓
大寒の光こぼるる牡丹かな 42_長崎 川辺酸模
・大上々
【入選】
アケマシテ人工音の御慶かな 04_宮城 長谷川冬虹
冬の夜や大地流転の音すなり 05_秋田 佐藤一郎
かろうじて油井の残る冬田かな 05_秋田 佐藤一郎
・残るとあれば上五不要
産土のどんどん遠し鳥総松 07_福島 渡辺遊太
草の戸の建て付け悪し初日さす 11_埼玉 園田靖彦
・草の戸、ダメ
われ欠伸猫も欠伸の小春かな 11_埼玉 園田靖彦
からっ風捨て子に投げた喰物は何 11_埼玉 佐藤森恵
・からつ風
浅草へ正月を見に出かけけり 11_埼玉 上田雅子
高鳴りの空に連なる凧 11_埼玉 牧内麻衣
・リズムに任せないこと。高鳴りの凧
心魂をこめ前のめり初硯 12_千葉 菊地原弘美
屠蘇祝ふ吾長幼の一番目 12_千葉 水町ゆの
見晴らせる富士よ筑波よ花の春 12_千葉 池田祥子
・これは型どおり
御嶽のリフト止まりて鼻毛凍つ 13_東京 江藤恭太
買初の青菜のしづく悦べリ 13_東京 市村さよみ
山高帽とつて白寿の礼者かな 13_東京 松宮京生子
三元号生きて八十お屠蘇かな 13_東京 森徳典
孫受験手摺頼りの初詣 13_東京 森徳典
悩む日と悩まぬ日ある海鼠かな 13_東京 神谷宣行
ペーチカに美しく脚組み替えて 13_東京 圡井緑天
大根のひやとわが手に持ち重り 14_神奈川 越智淳子
・持ち重る
鮟鱇は末期の水をたらふくと 14_神奈川 金澤道子
・と、不要。リズムに支配されないこと。
短日や蜜柑に少し残る青 14_神奈川 江藤鳥歩
・この場合、短日は中下の駄目押し。あるいは逆。こんな季語の選びからはダメです。
寒紅が強がつてゐる鏡かな 14_神奈川 三玉一郎
初旅や手術の母をはげまさん 14_神奈川 松井恭子
ドクターヘリ大寒の底飛び立てり 14_神奈川 松井恭子
正月や遠出せずとも本の山 14_神奈川 水篠けいこ
初日さす雀やわれも素のままに 14_神奈川 中丸佳音
今年こそ倅に嫁を初詣 14_神奈川 土屋春樹
寄り添いて寒さを凌ぐ奈良の鹿 14_神奈川 土屋春樹
・い→ひ
万歩計つけて一年始めけり 20_長野 金田伸一
男はラグビー天いちめんあばら骨雲 20_長野 柚木 紀子
これなるiPS細胞てのひらに大雪渓 20_長野 柚木 紀子
賽銭箱プールのごとし初詣 21_岐阜 夏井通江
鳴き交わす鴨や水輪の花のなか 21_岐阜 夏井通江
母亡くて本に学びし節料理 21_岐阜 三好政子
・学びぬ
スクラムの湯気立ち上り虹となる 26_京都 氷室茉胡
・なれ
初鶏や小学校の裏に住み 26_京都 廣川孝彦
蕎麦すすり水の桑名に年送る 26_京都 廣川孝彦
われもまた赤子のごとし初湯かな 27_大阪 安藤久美
皸の山姥泣けば山も哭く 27_大阪 古味瑳楓
読初というて二階へ消えたきり 27_大阪 古味瑳楓
境内の外に待つ犬初詣 27_大阪 山中紅萼
大旦建物のみの街になり 27_大阪 山中紅萼
寒木瓜やアンリマチスの花の頃 27_大阪 齊藤遼風
・寒木瓜、ダメ。花に花をつけては。
・こういう俳句の勘所を600句暗唱で身につけてください。
正月や現も夢も五七五 28_兵庫 加藤百合子
・現に夢に。
・この違いも600句暗唱で。
あらてめて二人の縁根深汁 28_兵庫 藤岡美惠子
原型は知らぬが仏なまこ喰ぶ 28_兵庫 藤岡美惠子
連山の冬麗にして大あくび 29_奈良 喜田りえこ
・連山の、の位置。
・これもリズムの奴隷の句。
枝添へて花びら餅や紙の上 30_和歌山 玉置陽子
御手洗に真白き手拭冬木の芽 37_香川 丸亀葉七子
一の字のあなどり難し筆始 38_愛媛 豊田喜久子
寒晴や空の深さへクレーン挙ぐ 38_愛媛 豊田喜久子
・寒晴の、深みへ、伸ぶ?
物云へばかがああとなる寒の朝 42_長崎 百田直代
はるかなる鎌倉句会春の水 44_大分 山本桃潤
みそ汁に鯉のぶち切り冬籠 44_大分 山本桃潤
億年の初日を歩むわれらかな 44_大分 竹中南行
精魂込むる円空仏や寒に入る 44_大分 土谷眞理子