【特選】
友ならぬ鴉睥睨木守り柿 12_千葉 水町 ゆの
新月や虚子にも聖戦俳句あり 13_東京 西川遊歩
@虚子に。も、不要。
半島の高き畑に大根引く 14_神奈川 越智淳子
落葉や掃けばカラリと粉々に 14_神奈川 越智淳子
終電車人数分の夜寒かな 22_静岡 池ヶ谷章吾
付け筋に四苦八苦する玩亭忌 23_愛知 青沼尾燈子
日にそよぎ月に伏せたる萩を刈る 26_京都 佐々木まき
行く秋やまた初めより砂時計 26_京都 諏訪いほり
かど立てず生きて窮屈新豆腐 27_大阪 喜田りえこ
飛入りが勝ち進むなり草相撲 27_大阪 木下洋子
台風に心あるらん向きを変へ 27_大阪 木下洋子
ひきずつて親の思ひの千歳飴 27_大阪 澤田美那子
自然薯の粘り確かや老いもまた 28_兵庫 藤岡美惠子
@老いもかく。断定しないほうがよい。
留守番も頼まれてゐる松手入 37_香川 曽根崇
@をり
銀杏に竿の打擲容赦なし 37_香川 曽根崇
海に出て方向決まりぬ去ぬ燕 37_香川 曽根崇
@行方
11月3日、三浦雅士さんの講座「大岡信の射程」
11月3日(金、文化の日)13:00~14:30、朝日カルチャーセンター新宿で、文芸評論家、三浦雅士さんが詩人、大岡信について話します。今回は『うたげと孤心』を軸に語ります。
日時:11月3日(金、文化の日)13:00~14:30
会場:朝日カルチャーセンター新宿
演題:「大岡信の射程ー後白河院・道元・芭蕉」
聴講ご希望の方は朝日カルチャー新宿のサイトから、または電話(03-3344-1941)でお申込みください。
〈俳句の相談〉名詩の一節に季語をつけるのは?
【相談】
宮沢賢治の詩が好きで「雨ニモマケズ」の詩を下敷きに、
①雨ニモマケズ風ニモマケズ吾亦紅
の俳句を作りましたが、俳句誌へ投稿してもよいでしょうか?
②太郎をねむらせ次郎をねむらせ合歓の花
のように過去の名詩にピッタリの季語をつけるという方法は私のオリジナルですが、いかがでしょうか?
【回答】
3つの問題があります。まず「雨ニモマケズ風ニモマケズ」にしても「太郎をねむらせ次郎をねむらせ」にしても名句の一節をそのまま引用してしておられますが、この手法は大きくみれば和歌・短歌では「本歌取り」、俳句では「面影」、詩では「パロディ」「警句」といわれるもので、詩歌の根源に根ざした一つの技法です。ただその場合、次のような条件があります。
(1)まず引用される詩歌は誰でも知っている有名なものであること。もし知られていない詩歌であれば、誰の作品かわからず、引用ではなく盗作になります。
(2)次にもとの詩歌をそのまま引用するのではなく、変化させること。変化させるということは、もとになった詩歌を批評するということです。
以上の観点からみると、①も②も有名な詩人の有名な詩の引用ですから(1)については問題ありません。しかし(2)については、ほぼそのままの引用であることが問題になります。それぞれ「吾亦紅」「合歓の花」だけが変化(批評)であるようにみえますが、その批評がうまくいっているか。それが次の問題です。
「雨ニモマケズ風ニモマケズ」に吾亦紅を付ける、「太郎をねむらせ次郎をねむらせ」に合歓の花をつける。これは「雨ニモマケズ風ニモマケズ」に吾亦紅を取り合わせ、「太郎をねむらせ次郎をねむらせ」に取り合わせたということです。取り合わせの大事な条件は異質のものを取り合わせるということです。異質のもの同士だからこそ、その間に「間」が生れて一句が誕生するわけです。
ところが「雨ニモマケズ風ニモマケズ吾亦紅」の吾亦紅は「雨ニモマケズ風ニモマケズ」を植物の姿にしたものです。これを「ピッタリの季語」といわれているのだと思いますが、異質ではなく同質のもの同士を並べているだけです。これでは「雨ニモマケズ風ニモマケズ」と吾亦紅は理屈(連想)でつながっているわけで「間」の生れようがありません。つまり理屈を述べただけの句ということになります。「太郎をねむらせ次郎をねむらせ合歓の花」も同様です。
本来の「ピッタリの季語」とはこのように理屈(連想)でつながる季語ではなく、直感でしかたどりつけない季語です。そのただ1つの季語を探すのが俳句の苦しみでもあり喜びでもあるわけです。
もう1つの問題は、このような方法を「私のオリジナル」といっておられますが、すでに述べたように古くから詩歌にある手法であり、無数の実験を経て、それが新たな詩歌として成り立つための条件(1、2)がわかってきたということです。
①②の句を投稿していいかというお尋ねですが、それは自由です。しかしこのような句をとる選者はたいしたことはない選者だと思ってください。
〈俳句の相談〉一物仕立てか、取り合わせか
【相談】
一物仕立と取合せとのどちらに属する句か? はっきりしない領域があるように思えます。たとえば次のような句です。
①本降りとなつてをりけり昼寝覚 黛 執
②遠山に日の当りたる枯野かな 高浜虚子
③かなしみはしんじつ白し夕遍路 野見山朱鳥
これらの句は一物仕立てか取り合わせか、どう考えたらいいでしょうか。
【回答】
すべての俳句は一物仕立てと取り合わせのどちらかに分類されます。それは内容と形によって次の4つに分けられます。
*一物仕立て
(A)1つのことを1本で詠んでいる句(句中に切れはない、典型的な一物仕立て)
例:行春を近江の人とおしみける(芭蕉)
(B)1つのことを2つに分けて詠んでいる句(句中に形だけの切れがある、一物仕立ての変型)
例:朝がほや/一輪深き淵の色(蕪村)
*取り合わせ
(C)2つのことを2つに分けて詠んでいる句(句中に切れがある、典型的な取り合わせ)
例:降る雪や/明治は遠くなりにけり(中村草田男)
(D)2つのことを1つにつないで詠んでいる句(句中に隠れた切れがある、取り合わせの変型)
例:六月の雨さだめなき/火桶かな(石田波郷)
この4つについては旧著『一億人の俳句入門』(講談社)、『一億人の「切れ」入門』(角川書店)にも書きました。このことをしっかり頭に叩きこんでいないから、『俳句』8月号のような混乱が起こるのです。
よく問題になるのは(B)と(D)です。(B)は一物仕立てなのですが、句中に形だけの切れがあるので取り合わせのようにみえます。逆に(D)は取り合わせなのですが、句中の切れが隠れているので一物仕立てのようにみえます。要は句の形に惑わされず、内容をよくみよということです。
一物仕立てか取り合わせか、はっきりしない句の例としてあげておられる①と③は(B)一物仕立てです。①は昼寝が覚めたら雨が本降りになっていたということです。③の「かなしみ」は遍路の白装束のことです。
一方、②は(D)取り合わせの句です。この句、遠山に日が当たっていて、あたりいちめんが枯野であるというのです。「遠山に日の当たりたる」のあとに切れが隠れています。
ここで虚子の枯野の句についていっておくと、取り合わせでることを明確にするためには下五には日の当たる、当たらないに関わりのないものがこなければなりません。虚子の句では枯野という日の当たりうるものを置いたために、遠山にも枯野にも日が当たっているような曖昧さが生じます。この句は名句といわれていますが、取り合わせの句としては不完全な句です。
例にあげた波郷の句は「雨さだめなき」と火桶がかかわらないので取り合わせであることがすぐわかります。芭蕉の「さまざまの事思おも出す/桜かな」も同じです。
このように一物仕立てと取り合わせの区別がわかっていないと、道しるべもなく歩いているようなもので、第一に俳句の鑑賞ができません。それはそのまま、俳句が詠めないということです。
10月22日(日)の松坂句会は台風のため中止します
10月22日(日)に開催予定の松坂句会(東海合同句会)は台風21号が直撃する恐れがあり、中止します。台風の進路に当たる地域の方はくれぐれもお気をつけください。
ネット投句 2017年10月16日 選句と選評
【特選】
角切るや白眼むく鹿組み伏せて 13_東京 西川遊歩
鶴来る大輪にして花のごと 13_東京 長井亜紀
@鶴くるや
身の上を雀に語る案山子かな 14_神奈川 三玉一郎
百年に一年加へ松手入れ 23_愛知 稲垣雄二
世に疎き人ぞ恋しき月見酒 27_大阪 内山薫
そこそこに釣れて帰れぬ沙魚の竿 37_香川 曽根崇
われも一つ灯かりともして秋の雨 38_愛媛 岡崎陽市
@灯り
ひとり酌むひとりの味の新酒かな 38_愛媛 岡崎陽市
菊の酒九十歳にして不良 44_大分 山本桃潤
古志鎌倉句会 2017年10月15日
兼題=玩亭忌(丸谷才一忌)、席題=雁、雀蛤となる
10句投句5句選
【特選】
口閉ざす蛤となる雀かな 梅子
蛤となつて雀は時を待つ 梅子
鶏頭や獣の如く我をみる 麒麟
少し欠け好みの月や玩亭忌 麒麟
歌仙まだ五里霧中なり玩亭忌 一郎
さびしさの心鍛えん玩亭忌 怜
抜歯してなんとも淋し玩亭忌 定治郎
玩亭忌祝辞も弔辞も一掌篇 遊歩
角切りの角花のごと神前へ 佳余子
草かげに向き合ふて咲く思草 伸子
【入選】
月山の水澄むころや玩亭忌 梅子
秋霖の鎌倉にあり玩亭忌 梅子
実をつけぬオリーブの木の愁ひかな 梅子
うたかたの一句捧げん玩亭忌 幸三
腰掛けが尻に馴染まぬ玩亭忌 幸三
蛤となつて雀は椀の中 洋
風狂を競ふ糸瓜と瓢かな 洋
七竈燃えあがらんと霧の中 美津子
笹枕いづこに敷かん玩亭忌 涼子
玩亭忌女ざかりはさみしき時 伸子
出羽はいま走り板蕎麦玩亭忌 遊歩
象潟のある日雀は蛤に 英樹
先づたのむこはだの新子玩亭忌 ひろし
馬追となつて再び逢ひにきし 麒麟
今夜は中秋の名月
きょうは中秋の名月です。今発売中の「俳句」(角川文化振興財団)10月号に「月」50句が載っています。ここ10年間、比叡山はじめ琵琶湖周辺で詠んだ句をまとめたものです。
ネット投句年間賞(2017年7〜9月)は越智淳子さん
ネット投句の年間賞(2017年7〜9月)は越智淳子さんの次の句に決まりました。
海の底空の果てから土用波 神奈川 越智淳子
ネット投句 2017年9月30日 選句と選評
@俳句はこんなものだと高を括っていると、現実も言葉も見えない。
@俳句に従うのではなく、闘いなさい。
【特選】
休耕地怒涛の如く葛繁る 13_東京 柴田清栄
老教師脱線もよき夜学かな 14_神奈川 南川閏
良夜よ透明な錯綜体よ 20_長野 柚木紀子
両者目を閉じて立ち合ふ草相撲 23_愛知 青沼尾燈子
犬待たせ用足しにけり秋うらら 23_愛知 青沼尾燈子
薄選ぶ人次つぎや川堤防 23_愛知 服部紀子
@人またここに川堤
日日に瓢の色にその形に 26_京都 佐々木まき
馬鹿のつく正直者や蕎麦の花 27_大阪 内山薫
仕込み水一口秋を飲み込めり 27_大阪 福田弘子
母の忌を吾が季語とせん新酒汲む 27_大阪 齊藤遼風
おでこからつるんと出でて子芋の句 28_兵庫 加藤百合子
@おでこからつるんと出でよ衣被
花木槿馬に喰はれてなるものか 37_香川 曽根崇
手渡せぬ恋がいちりんコスモス畑 38_愛媛 岡崎陽市
己が身もうち震ゆるかつくつくし 42_長崎 川辺酸模
@震へるか
われもまた産土の土大根蒔く 42_長崎 川辺酸模
突然に朝寒といふ贈りもの 44_大分 山本桃潤
炊事とか妻に教はる秋日かな 44_大分 山本桃潤
