一句欄について 「古志」2019年9月号から
「一句欄」の投句方法を今後、次のように修正したい。
一、一人一と月ハガキ五枚まで。一枚に一句。
二、封筒に入れずハガキで送ること。
これまでハガキに一句を書いて好きな枚数だけ投句していいことになっていたが、この方法だと不都合があることがだんだんわかってきた。
なかには何十枚も送ってくる人がいる。熱心さの表れであるから、それ自体問題はないが、入選句の数に大きな差ができてしまう。これも実力なら問題はないのが、入選句の数が実力の差であるかのように思われるのは問題である。俳句の数が俳句の質と勘違いされてしまうからである。
またハガキ大の紙を封筒にまとめて送ってくる人がいる。これも封筒をハサミで開封すればいいだけの話であるから問題はないはずだが、封筒の数が三十通、四十通と増えてくるとそれも厄介である。
何よりも問題なのは、この方法をとってから投句に「ただごと俳句」や「散文俳句」が増えたこと。想像するに投句の緊張感が失われてしまっているのではないか。
そんなただごと俳句、散文俳句は選句の段階で落とせばいいのだが、「何句でも出していい」というやり方が、投句の緊張感を失わせ、こうした句を量産させているのであれば、さっさと改めるに越したことはない。
この機会に俳句は数ではなく、あくまで質であるという原点にもう一度立ってほしい。そのうえで作句力と自選力を培ってほしい。
では高松句会から。
天空へ無限石階のぼる蟻 陽子
石の舟月夜に滑り出だすべし 育子
宇宙から石こぼれ来て涼しさよ 京子
石の滝月の光の流れけり 光枝
恐ろしき人に隣りてかき氷 広
おもかげのごとくに石立つ夏の雲 通江
石灼けて太陽の香を放ちけり 通江
新涼や億年前も山の石 洋子
石の家家の中へも水を打つ 光枝
遥かなる日へ帰りゆく白帆かな 陽子
雲の峰割つて庵治石切り出さん 崇
雲の峰宇宙の庭にたちのぼる 紫春
夏の月幾万の石眠るころ 真知子
(「古志」2019年9月号の「俳句自在」を転載)