KAI says:2013年12月2日 at 2:34 AM
@ネット投句(2013年11月30日)選句と選評
【特選】
風邪の神いつしか眠りの神となり 15_新潟 岩井善子
「いつしか」→「いつか」
くわりん漬く夫の力を借りて漬く 15_新潟 待雪三恵子
手加減が大事古家の障子張り 26_京都 諏訪いほり
亥の子餅亥の子十頭ねてゐたる 27_大阪 澤田美那子
おもしろし。
水やりの水仙の芽のおぼつかな 28_兵庫 加藤百合子
軽みには遠き境地や炬燵守る 37_香川 曽根崇
人間の現実。その嘆きが俳句になる。
埋火や死ぬまで夢を追ふもよし 38_愛媛 三木紀幸
埋火で味が深くなった。
【入選】
勢ひに後退りする焚火かな 11_埼玉 園田靖彦
鉄瓶の小躍りそめし囲炉裏かな 11_埼玉 園田靖彦
観音のおおきな顔や山眠る 11_埼玉 松本邦吉
ざくざくと葱大根の白さかな 11_埼玉 上田雅子
ハムスター回し続ける夜長かな 12_千葉 若土裕子
何を回すのか。夜長を回しているという句。
断乳に大泣きの子と冬の朝 13_東京 大塚哲也
「と」に迷いあり。
猫舌の君とすき焼き卵とく 13_東京 西川遊歩
病室の窓は額縁冬ごもり 13_東京 神谷宣行
古書肆にて買ひ来し本も日向ぼこ 13_東京 徳武信子
鈴懸の枯葉を割つてあそびけり 13_東京 篠原隆子
「割る」という言葉で落葉の質感が描けた。
酒焼けの貌に目深の冬帽子 14_神奈川 南川閏
猫の来て餌をねだるや風邪の床 15_新潟 岩井善子
大まかに数へて百羽田の白鳥 15_新潟 山本しほ
わが墓によき小春日の石一つ 15_新潟 北側松太
「よき」→「せよ」
白かぶら赤かぶら漬け母傘寿 15_新潟 北側松太
ふくろふのしわざ文字だらけの睡夢 20_長野 柚木紀子
凩やケースの中のいびきの図 23_愛知 小川もも子
しぐれてはまた日差しては蓑虫庵 23_愛知 小川もも子
着ぶくれてまた朝からの探し物 23_愛知 長谷川浩子
幾万と落ちし木の実の一つかな 23_愛知 稲垣雄二
明日はたつぷり歩くつもりの柚子湯かな 26_京都 黒部美栄子
しぐるるや真つ赤に熾る能登七輪 26_京都 黒部美栄子
大机修理に出しぬ十二月 26_京都 諏訪いほり
鬼瓦笑うてゐるや冬日向 27_大阪 安藤久美
しぐるるや新薬師寺へ裏の道 27_大阪 澤田美那子
棟梁はさつと離るる焚火かな 27_大阪 古味瑳楓
貫之の日記始まる千鳥かな 27_大阪 齊藤茂
我に未だ蒙古斑ある柚子湯かな 27_大阪 齊藤茂
たわわとはこの木のことよ柚子八十路 28_兵庫 藤岡美惠子
樹齢八十年。
ひと昔四人で囲みたる炬燵 28_兵庫 藤井実葉
「ひと昔」は言葉足りず。「その昔」。
しぐるるやわれも翁の弟子であり 33_岡山 齋藤嘉子
地球手で廻すごとくに林檎剥く 33_岡山 齋藤嘉子
報恩講寺は二男の継ぐらしき 37_香川 曽根崇
紅葉山ぽつりと雨が顔をうち 37_香川 曽根崇
肩出して抜かれるを待つ大根かな 38_愛媛 豊田喜久子
紅葉山しぐるるたびに華やぎて 38_愛媛 木下誠
返り花たちまち凍ててしまいたり 38_愛媛 才上宏子
「しまひ」。
もう一人迎へいれたる炬燵かな 38_愛媛 岡崎陽市
もみぢ谷底より昏れて大吊橋 42_長崎 米山瑠衣
「底より」に実がある。