古志仙台ズーム句会(2025年5月11日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
若鮎の腹は刃の色をして 服部尚子
家中の鍋ぴかぴかにして夏に入る 服部尚子
母逝きし空を遊ぶや鯉幟 川辺酸模
整然と僧兵のごと葱坊主 甲田雅子
曲り家の板の間の艶涼しけれ 谷村和華子
【入選】
南部富士けさも雲乗せ花林檎 及川由美子
予想屋の赤鉛筆や昭和の日 臼杵政治
初夏やピアノレッスン始まる日 佐伯律子
雷鳴の轟く薔薇を切りにけり 長谷川櫂
老鶯ののどをうるほす天の水 三玉一郎
母恋うてお前も鳴くか蟇 川辺酸模
退屈の子が軋ませる籐の椅子 平尾 福
畦青む踏みし大地の柔きこと 谷村和華子
魂の集ふや春の姥捨野 武藤主明
夏の炉や語り部炭を組み直す 谷村和華子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
用無しの大き浮き球卯波かな 上 俊一
目が覚めて魔の二時三時明易し 那珂侑子
退屈の虫が軋ます籐の椅子 平尾 福
針抜いてしづかになりぬ大岩魚 宮本みさ子
短夜や老犬は死と格闘中 青沼尾燈子
【入選】
家中の鍋ぴかぴかと夏に入る 服部尚子
老犬の隻眼うす目風薫る 青沼尾燈子
客人を迎へて林檎花盛り 阿部けいこ
母のなき空に遊ぶや鯉幟 川辺酸模
足載せて石冷たさよ川の底 宮本みさ子
母に見せたき山藤の長さかな 佐伯律子
板の間の艶涼しけれ大曲家 谷村和華子
掻き落とす泥田の蛭や田股引 上 俊一
【第二句座】(席題:さくらんぼ、豆飯、守宮)
長谷川冬虹
【特選】
さくらんぼ疵あるものも愛ほしき 谷村和華子
ガラス戸に腹の波打つ守宮かな 武藤主明
曲家の主の貌して守宮かな 武藤主明
【入選】
百歳の母の祝ひや豆の飯 川辺酸模
新築の家の匂ひや守宮来る 佐伯律子
ガラス戸に吸盤見えて守宮かな 阿部けいこ
享年は百歳の母豆御飯 佐藤和子
守宮めと丑三つ時の睨み合ひ 谷村和華子
入院の留守を守宮に頼みけり 臼杵政治
騒がれて死んだふりする守宮かな 及川由美子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
見つむれば母に似てくる守宮かな 川辺酸模
夕暮れて顔見せに来る守宮かな 平尾 福
桜桃の百粒揺るる紙の箱 石川桃瑪
【入選】
新築の家の匂ひに守宮来る 佐伯律子
窓に来て夕餉うらやむ守宮かな 平尾 福
豆飯の豆残すとや子の茶碗 阿部けいこ
勝手口窺ふ守宮今年なし 青沼尾燈子
ガラス戸に腹波打たせ守宮かな 武藤主明
大波の母の一生豆の飯 川辺酸模
さくらんぼ好みし夫の忌を修うす 甲田雅子