古志広島ズーム句会(2024年9月1日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
石あらばたれの墓ぞと秋遍路 矢田民也
神仏吹き飛ばされし野分朝 城山邦紀
銀漢や我が光陰はホ句の中 今村榾火
不知火の言葉の海へ帰省かな 長谷川櫂
父と子のだんまり続く榠樝の実 石塚純子
【入選】
独り居をたたくはクイナばかりなり 岡村美沙子
祝はれて酔ひほのぼのと温め酒 菅谷和子
ひとつ咲き暑さ嫌いの牽牛花 加藤裕子
ちちははと居た日は遠し初秋刀魚 高橋真樹子
荼毘に付すしづかな時を鉦叩 今村榾火
若冲の鶏になりたや羽抜鶏 大平佳余子
旅立つ日金魚を池へ放ちやる 伊藤靖子
すいつちよのちよいと飛び込む勝手口 ストーン睦美
ひげ生やし息子現はる盂蘭盆会 夏井通江
台風のぐづらぐづらや大混乱 大平佳余子
いびつでも愛しき家族吾亦紅 瑞木綾乃
お七夜を終えて連れ出す地蔵盆 ももたなおよ
先生の魔法の手なり小鳥来る 大場梅子
水柱噴いて厄日のマンホール 神戸秀子
アルプスの雫よシャインマスカット ももたなおよ
竹伐りの音叡山にこだまする 大平佳余子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
邯鄲と母が教へてくれし日よ 斉藤真知子
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
もう裂けるところはあらず破芭蕉 斉藤真知子
竹を伐る音こだませり比叡山 大平佳余子
にぎやかに月より戻る屋形船 今村榾火
【入選】
亡き犬が来て寄り添ひぬ秋の夜 夏井通江
悶々と術後の夜長いかにせん 大場梅子
野分晴マッターホルンのような雲 伊藤靖子
朝からの秋の暑さに家ごもり 夏井通江
台風に灼熱列島ひと呼吸 加藤裕子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
ふるさとの墓仕舞しぬつくつくし 神戸秀子
白桃を剥きゐて静かなる夜かな 斉藤真知子
赤ん坊も母も眠りぬ涼新た ももたなおよ
人無惨草木無惨秋に入る 矢野京子
台風一過青空のぼりゆく一機 斉藤真知子
第二句座(席題:朝顔、秋高し)
・矢野京子選
【特選】
山一つ湖に浮かべて秋高し 高橋真樹子
朝顔棚藍一色の瀧をなす 長谷川櫂
朝顔の色を殺してしぼみけり 矢田民也
【入選】
朝顔の開きそこねに手をかして 大平佳余子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔が見送ってゐる登校子 石塚純子
年ごとに色淡くなり牽牛花 原京子
朝顔にきのふの夜の匂ひあり 高橋真樹子
朝顔やきのふの花をもう忘れ 斉藤真知子
この先はすべてが記録秋高し 金田伸一
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
朝顔や今朝は不調の俳句会 金田伸一
秋高しされど不作や秋津洲 菅谷和子
朝顔や今朝の花さへもう忘れ 斉藤真知子
【入選】
父愛す藍の朝顔ひらきけり 菅谷和子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔の一輪ひらく大事かな 斉藤真知子
朝顔と大きく書きぬ種袋 高橋真樹子