古志仙台ズーム句会(2024年7月28日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
十薬や今も生家に外厠 武藤主明
八月がくる一塊の岩のごと 三玉一郎
鳥のよに礫のやうに夏落葉 及川由美子
暑ささへ力に変へて百日紅 齋藤嘉子
【入選】
扇風機ときどき眠つてゐるらしく 平尾 福
おぬしなど知つたものかと蟇鳴けり 青沼尾燈子
冷し酒彼奴どこまで行つたやら 青沼尾燈子
やはりをる我に似た奴蟻の列 川辺酸模
この三日源氏にひたる端居かな 川村杳平
龍神の岩かげに鮎湧きゐたり 長谷川櫂
棟梁は柾目の板に大昼寝 宮本みさ子
牛蛙ブレストの脚ぐいと伸び 上 俊一
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
はるばると一生の果てへ昼寝覚 上村幸三
空気燃ゆる音の聞こゆや百日紅 齋藤嘉子
戦争へ敗戦へ死へ水を打つ 三玉一郎
【入選】
夕蝉や氷枕のぬるくなり 阿部けいこ
扇風機ときどき眠りゐるらしく 平尾 福
足はがすやうに歩くや油照り 齋藤嘉子
夕立が過ぎるのを待つホームかな 那珂侑子
落ち口の飛沫煌めき滝となる 佐藤和子
八月がくる一塊の岩のごと 三玉一郎
棟梁は柾目の板に大昼寝 宮本みさ子
被曝地は今も丈余の夏の草 佐藤和子
暑ささへ力に変へて百日紅 齋藤嘉子
庭仕事耳の後ろを汗流る 石川桃瑪
爆心地のうぜんの花駆けのぼる 平尾 福
滝音の近くなりつつ足速む 石川桃瑪
満場の団扇揺れをり名古屋場所 上 俊一
第二句座(席題:蝨、泥鰌鍋、水草の花)
長谷川冬虹選
【特選】
とき卵くるみて鍋の泥鰌かな 川村杳平
存へて恋の話や泥鰌鍋 川辺酸模
壁蝨の字を初めて書くやうごきだす 三玉一郎
蓋をしてきゆうと鳴きしが泥鰌鍋 佐藤和子
蚤にさへ蔑まるるも蝨のさが 長谷川櫂
【入選】
疎まれて強く生き抜く壁蝨ならん 三玉一郎
白抜きの藍の暖簾や泥鰌鍋 川辺酸模
どぢやう鍋山盛り牛蒡のうれしさよ 上村幸三
終はつたぞ皆繰り出さん泥鰌鍋 齋藤嘉子
うじやうじやと放り込みたる泥鰌鍋 佐伯律子
流れきてよどむ藻の花敗戦忌 服部尚子
山小屋の壁蝨の蒲団へ日の光 三玉一郎
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
睡蓮を戻しぬ除染作業員 宮本みさ子
暫らくは眺めてゐたり泥鰌鍋 武藤主明
おそるべき人の欲望泥鰌鍋 川辺酸模
流れきてよどむ藻の花敗戦忌 服部尚子
山小屋の壁蝨の蒲団へ日の光 三玉一郎
【入選】
いまはただ花水草の鉢となり 那珂侑子
道灌も蓑傘置かむ泥鰌鍋 臼杵政治
藻の花の隣にラムネ冷やしあり 平尾 福
田の神や水草の花守りをり 佐伯律子
どぢやう鍋煮えたぎり蓋揺るるかな 宮本みさ子
五分ほどの仏性ありぬ泥鰌鍋 武藤主明
壁蝨の字をを書くやたちまちうごきだす 三玉一郎
うじやうじやと放り込みたる泥鰌鍋 佐伯律子
老し身へ叱咤激励どぢやう鍋 青沼尾燈子
水草の花人知れず山上に 及川由美子
豆腐へと頭隠しぬ泥鰌鍋 武藤主明
穴二つダニの噛み跡紛れなく 平尾 福