古志仙台ズーム句会(2023年9月24日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
天守より鏑矢ひゆつと秋祭 武藤主明
わが子よりはるかに若し獺祭忌 齋藤嘉子
天上は一気に秋よ鰯雲 上 俊一
業平になりきつてゐる村芝居 那珂侑子
草の穂や鼻寄せあへる犬と犬 及川由美子
【入選】
ぐづぐづと寝屋より出でし龍田姫 青沼尾燈子
地下鉄や夏の終はりの闇の音 長谷川櫂
小鳥来てしきりに妻を呼びにけり 平尾 福
処理水と名を変へ海へ星月夜 武藤主明
名月をへうたんに入れもてなさる 上村幸三
稲刈り機稲の機嫌をこはさずに 宮本みさ子
曼殊沙華鎮守の杜は伐られけり 上 俊一
良い月が出てゐますよと操縦士 平尾 福
秋空に並ぶ二台の車椅子 佐伯律子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
小鳥来てしきりに妻を呼ぶ日かな 平尾 福
稲の香にまみれて昇る棚田かな 武藤主明
よい月が出てゐますよと操縦士 平尾 福
【特選】
わが子よりはるかに若し獺祭忌 齋藤嘉子
離れ住む子の誕生日栗ごはん 長谷川冬虹
鹿垣とおぼしきものが山の中 齋藤嘉子
露けしや鼻寄せあへる犬と犬 及川由美子
【入選】
猫つれて猫戻り来る良夜かな 平尾 福
処理水と名前だけ変へ星月夜 武藤主明
怒るほど心離るる秋の風 青沼尾燈子
新涼のゆるりと香る緑茶かな 阿部けいこ
母に少し用事を頼む敬老日 齋藤嘉子
病む夫の夏の帽子を助手席に 甲田雅子
草取りの進まぬ畑昼の虫 阿部けいこ
第二句座(席題:秋簾、糸瓜水、蚯蚓鳴く)
・長谷川冬虹選
【特選】
蚯蚓鳴く山盧の橋の短かさよ 宮本みさ子
ITの声かも知れず蚯蚓鳴く 平尾 福
干天の慈雨やれやれと蚯蚓鳴く 服部尚子
青空にバーコードのやう秋簾 佐藤和子
【入選】
蓑虫に負けてはならじ蚯蚓鳴く 青沼尾燈子
葱箸で蕎麦をすするや秋簾 武藤主明
効能は祖母の美肌か糸瓜水 及川由美子
若き日の母が使ひし糸瓜水 佐藤和子
おづおづと妻に糸瓜の水渡し 臼杵政治
黒々と原爆ドーム蚯蚓鳴く 三玉一郎
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
いつまでも綺麗な女房糸瓜水 平尾 福
裏表色をたがへて秋簾 阿部けいこ
蚯蚓鳴く外に風呂場のありし頃 阿部けいこ
【入選】
使はざる部屋の簾も仕舞ひたり 石川桃瑪
旱天の慈雨やれやれと蚯蚓鳴く 服部尚子
葦抜けてそぞろとなりぬ秋簾 及川由美子
しばらくは残す書斎の秋簾 臼杵政治
寝そびれて声の聞こゆる蚯蚓かな 上 俊一
染みだらけなれど朝晩へちま水 齋藤嘉子
若き日の母が使ひし糸瓜水 佐藤和子