古志金沢ズーム句会(2023年9月17日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
うす紙に落雁の秋こぼれけり 飛岡光枝
ラ・フランス面影といふ香りかな 趙栄順
曾良の海語りきかせよ渡り鳥 玉置陽子
瀧となり千年ののち君を待つ 長谷川櫂
世をはなれ干潟にあそぶ鴫の群 梅田恵美子
瓜揉んで裏も表もなき暮らし 安藤久美
秋真昼ぬつと寂しき腕二本 松川まさみ
ふらふらの脳細胞や新生姜 酒井きよみ
いちじくの秘めたる花を啜りけり 稲垣雄二
【入選】
秋空へふはり鯊釣る糸舞へり 近藤沙羅
声かけて人のぬくみの墓洗ふ 趙栄順
けさ月へ戻りし妻の笑顔かな 花井淳
レモングラス今宵の月に洗はれて 藤倉桂
露草や母は小さく眠りをり 飛岡光枝
千切れては雲流れゆく秋彼岸 田村史生
真つ青な十四歳の終戦日 山本桃潤
うつちやりに行司も転ぶ草相撲 田村史生
望月はなんと大きな器かな 清水薫
かみ合わぬ臓器あちこち秋暑し 密田妖子
鈴虫に霧ふいて出る留守ひと夜 酒井きよみ
蘭の香や生きてる限り眉を描き 間宮伸子
・長谷川櫂選
【特々選】
いちじくの秘めたる花を啜りけり 稲垣雄二
祖母の訃に五歳号泣秋彼岸 氷室茉胡
ラ・フランス円熟の尻かがれたり 松川まさみ
マスカット水跳ね返す水の中 玉置陽子
うつちやりに行司も転ぶ草相撲 田村史生
【特選】
うす紙に落雁の秋こぼれけり 飛岡光枝
白山へいよいよ白し風の道 安藤久美
いつまでも秋の団扇を傍らに 飛岡光枝
町中の水に柳の散る日かな 飛岡光枝
酢橘しぼる酢橘の花を思ひつつ 安藤久美
玉なれと一句磨くや茶立虫 松川まさみ
かみ合わぬ臓器あちこち秋暑し 密田妖子
【入選】
老眼に辞書をひきよせ秋灯 橋詰育子
尻ゆすりムジナ消えたり萩の花 密田妖子
親指の腹すべらせて鰯裂く 玉置陽子
電子辞書片へに句集良夜かな 藤倉桂
上の菊橋下の菊橋十三夜 松川まさみ
日差しより雨に親しき芭蕉かな 氷室茉胡
稲刈つて田圃千枚明らかに 清水薫
川音も囃子してゐるや風の盆 宮田勝
この道は能登線の跡虫しぐれ 清水薫
花芙蓉夕べは紅をふかめけり 橋詰育子
曾良の島の話きかせよ浜千鳥 玉置陽子
けふよりもきのふが近し秋簾 玉置陽子
いつの間に腕を組みたる秋思かな 橋詰育子
もがく蛾をすくつて捨つる秋団扇 稲垣雄二
有り余る小さな秋の金魚かな 越智淳子
日々に減りる貯へ釣瓶落しかな 氷室茉胡
吟味するほどの穴なし穴惑 泉早苗
瓜揉んで裏も表もなかりけり 安藤久美
秋真昼ぬつと寂しき腕二本 松川まさみ
小鳥来よ眼を病んでゐる母へ 安藤久美
白山の水はつめたし新豆腐 趙栄順
スカスカの脳細胞や新生姜 酒井きよみ
酒豪の血子へ脈々と新酒かな 氷室茉胡
がちゃがちゃの鳴きていよいよ一人かな 川上あきこ
色白く味濃く母の衣被 越智淳子
無花果は乳房でありぬ捥ぎにけり 藤倉桂
バツタとぶ今朝降りし雨きらめかせ 近藤沙羅
もう出せぬ母への手紙けふの月 玉置陽子
聡太もゐ翔平もゐる案山子かな 田村史生
鈴虫に霧ふいて出るひと夜かな 酒井きよみ
老犬と交はす眼差し秋の夜 山本桃潤
病む星に白露重陽秋の月 泉早苗
せせらぎの音のしてゐる花野かな 橋詰育子
蝶番外れたる木戸大野分 川上あきこ
秋あかね石のぬくみに休みをり 泉早苗
余生なほまだまだ続く鰯雲 梅田恵美子
奥能登へ霧流れけり松林図 山本桃潤
第二句座(席:運動会、蟋蟀)
・鬼川こまち選
【特選】
虫の闇みな蟋蟀に聞こえたる 泉早苗
コロコロリ閻魔こおろぎ誰裁く 間宮伸子
校長の靴は真つ白運動会 趙栄順
こほろぎの声やむときの淋しかり 近藤沙羅
こほろぎや月の出しも知らざりき 近藤沙羅
白線の空へ伸びゆく運動会 藤倉桂
ちちろ虫人なき里を守りをり 清水薫
【入選】
こおろぎや子ら脱ぎ散らす靴の陰 安藤久美
アンカーは少女よ区民運動会 氷室茉胡
山廬いま美しき闇ちちろ虫 趙栄順
こほろぎの声をたよりに歩きけり 橋詰育子
足腰をのばし玉入れ運動会 酒井きよみ
目印は虹の靴下運動会 田村史生
伴走もゐる車いす運動会 宮田勝
アベック走男子ひきずり一等賞 密田妖子
蟋蟀は雨夜の闇さへ囃しけり 越智淳子
こほろぎや憂きこと知らぬ仏たち 宮田勝
運動会今も歌える校歌かな 間宮伸子
一番に祖母が席取り運動会 酒井きよみ
いなり寿司若き母との運動会 梅田恵美子
運動会父の自慢の土踏まず 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特選】
香林坊にあまた闇ありちちろ虫 鬼川こまち
島中の人の走るや運動会 飛岡光枝
犀星の碑を宿としてちちろ虫 清水薫
蟋蟀の声麗しき顔知るや 山本桃潤
白線の空へ伸びゆく運動会 藤倉桂
【入選】
蟋蟀や死を考ふる顔しづか 松川まさみ
こほろぎの声をたよりに歩きけり 橋詰育子
こほろぎや小菊縫ひ取る金の糸 玉置陽子
ブルーマーの脚細かりし運動会 越智淳子
アベック走男子ひきずり一等賞 密田妖子
屑茄子のかけらに鳴くかちちろ虫 稲垣雄二
今は無きパン食ひ競争運動会 飛岡光枝
我去りし鏡に宿るちちろ虫 松川まさみ
運動会父の自慢の土踏まず 玉置陽子