古志仙台ズーム句会(2023年7月30日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
時々は母に戻らる生身魂 川辺酸模
分蘖の音と田水の沸く音と 齋藤嘉子
見出しだけ走り読みして猛暑かな 上 俊一
手にのせて命つめたき守宮かな 齋藤嘉子
亀の子よ海は向かうと判るのか 上 俊一
【入選】
灼け道を帰還の父よ遠き日よ 甲田雅子
記念樹は空を突きたり花柘榴 及川由美子
半月の白きを衝いて雲の峰 上 俊一
尻に花付けたままなり朝胡瓜 平尾 福
一本の草の涼しき唐津かな 川辺酸模
手花火は帰省の兄のにほひかな 上村幸三
飛魚やジャックナイフの滑空す 武藤主明
昼顔や未来の沖へ汚染水 長谷川櫂
長谷川櫂選
【特選】
地下足袋に藺草からまり昼寝人 齋藤嘉子
母の髪の針刺し今も藍浴衣 佐藤和子
水一本ぶらさげて出る油照 石川桃瑪
黒々と人間つどふ原爆忌 甲田雅子
蝉時雨へと爆弾の落ちゆくも 平尾 福
【入選】
灼け道を帰還の父よ遠き日よ 甲田雅子
時々は母に戻らる生身魂 川辺酸模
ユリノキの夏葉の美しき影を踏む 阿部けいこ
猫の来て茅の輪潜つて行きにけり 平尾 福
こはごはと外を窺ふ暑さかな 平尾 福
涼風や蝙蝠の棲む岩屋より 及川由美子
見出しだけ走り読みして猛暑かな 上 俊一
手にのせて命つめたき守宮かな 齋藤嘉子
心エコー透ける命の涼しさよ 川辺酸模
故郷は山百合高く咲くころよ 甲田雅子
悠々と山百合揺れてゐる故郷 川村杳平
たじろぎぬ重さ大きさ山百合よ 服部尚子
尻に花付けたままなり朝胡瓜 平尾 福
一本の草の涼しき唐津かな 川辺酸模
滝の音からだで聞いてをりにけり 三玉一郎
梅漬ける母の色には及ばざる 武藤主明
死者の霊柱と数へ八月来 及川由美子
いましばしきみのとなりに夕涼み 川辺酸模
父母の魂が呼ぶ帰省かな 三玉一郎
ずぶ濡れで行く青春の大夕立 平尾 福
青春の水辺は遠く草いきれ 石川桃瑪
はるかより龍のごとくに夏怒濤 長谷川冬虹
同窓の友も減りけり田水沸く 川辺酸模
浜えんどう津波禍の魂戻り来ず 甲田雅子
第二句座 (席題:行水、生姜、蝮)
長谷川冬虹選
【特選】
行水のへそが笑つてをりにけり 三玉一郎
枝張つて扇さながら大生姜 長谷川櫂
孫ひ孫次々にふゆる生姜かな 長谷川櫂
【入選】
味噌つけて辛さの旨し新生姜 佐藤和子
蝮酒島の自慢と振る舞はる 谷村和華子
蝮酒未だ貰ひ手見つからず 武藤主明
素麺に気合ひ入れたる生姜かな 平尾 福
蝮酒小屋に秘したる天狗山 及川由美子
セルロイドのひよこ侍らせ行水す 及川由美子
長谷川櫂選
【特選】
晒されて風に鳴りゐる蝮かな 川辺酸模
行水に冷ます頼みのあばら骨 臼杵政治
浮世絵の行水美人老もせず 上村幸三
【入選】
祖母愛用祖父の遺しし蝮酒 齋藤嘉子
みちのくや学費にあてる蝮酒 阿部けいこ
爺は逝き蝮は壜に存へて 上 俊一
蝮酒未だ貰ひ手見つからず 武藤主明
行水の子に桃の葉をぴちやぴちやと 佐藤和子
竹棒に日陰干しする蝮かな 川辺酸模