古志金沢ズーム句会(2023年7月23日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
雷神の踏みはづしたる音ならん 橋詰育子
風蘭のかすかに香る夜の地震 飛岡光枝
白銀の月一片を扇かな 玉置陽子
古き代の朝が明けたり茄子漬 山本桃潤
月涼し大船鉾も灯りけり 田村史生
鬼灯のからくれなゐの涙かな 趙栄順
快音のボールの行方夏の果 松川まさみ
【入選】
星の竹一節削ぎて扇かな 玉置陽子
白玉や笑うては泣き母のこと 玉置陽子
遥かなるものみな青し昼寝覚 宮田勝
八十歳やつと裸になりし我 山本桃潤
稲妻の傷ごと茄子焼かれをり 田村史生
重き耳垂れて雨聴く杜若 趙栄順
大花火水のごとくにしたたれり 安藤久美
老いてなほ夢あるごとし夏帽子 橋詰育子
向日葵や磨き磨きて空の青 宮田勝
墳動く流星の塵あびしより 泉早苗
恐竜の走るがごとく羽抜鶏 長谷川櫂
螢籠空つぽなれば寛ぎぬ 松川まさみ
仏花剪る青葉時雨をかいくぐり 密田妖子
蒲の穂や今も神代の水明かり 松川まさみ
蛍の夜この手伴侶と決めにけり 藤倉桂
農神の田まはりならん青田風 酒井きよみ
この星に疲労の兆し草いきれ 清水薫
水匂う鵜川のはてや星ひとつ 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特々選】
遥かなるものみな青し昼寝覚 宮田勝
恐ろしき世へそうめんを流しけり 鬼川こまち
分け入つて雲のほとりに夏花摘む 酒井きよみ
ややのため乳房を冷ます団扇かな 稲垣雄二
舟の上シテさながらに鵜匠立つ 密田妖子
朝顔や人の命の一大事 飛岡光枝
【特選】
空蝉や今ごろどこで鳴きしきる 越智淳子
鬼灯市少女は草の匂ひして 飛岡光枝
土用波つぎつぎ海をめくり来る 鬼川こまち
山椒魚にやりと笑ふ夢みしが 趙栄順
つぎつぎにひらきて花火あひ触れず 安藤久美
戦争へ背を向けて草むしりをり 稲垣雄二
白桃のしづかに人を拒みけり 玉置陽子
流木に寄りて風蘭花ひらく 飛岡光枝
【入選】
風蘭のかすかに香る夜の地震 飛岡光枝
白玉や笑うては泣き母のこと 玉置陽子
八十歳やつと裸になりし我 山本桃潤
新しき闘志ありけり昼寝覚 橋詰育子
鮎炙る金のはららご零すまじ 酒井きよみ
とらはれて哀れ蚯蚓の蟻まみれ 梅田恵美子
大花火水のごとくにしたたれり 安藤久美
神水で浄めし辻に鉾廻す 氷室茉胡
白銀の月一片を扇かな 玉置陽子
金沢の街をはみ出す虹の橋 清水薫
軒低き六角小路扇売る 玉置陽子
笹に乗り吉野川より走り鮎 泉早苗
農神の田まはりならん青田風 酒井きよみ
冷麦の水まで干して百賀なる 宮田勝
水無月や親にもらひし胃へカメラ 間宮伸子
鈍臭き我を嗤ふや入道雲 近藤沙羅
雨の日は葉の裏にゐる雨蛙 清水薫
第二句座(席題:生身魂、胡瓜揉)
・鬼川こまち選
【特選】
風呂上がり湯気に紛れし生身魂 田中紫春
久々に酔うて謡を生身魂 密田妖子
よく食べてよく笑ふなり生身魂 泉早苗
生身魂悟らぬことの尊さよ 長谷川櫂
淡海の水の匂ひや胡瓜揉み 安藤久美
【入選】
胸つまる思ひの丈を生身魂 宮田勝
あをあをとせつせつと揉む胡瓜かな 玉置陽子
声かけの糸口探す胡瓜もみ 宮田勝
母の手と見えて我が手や胡瓜揉む 松川まさみ
白山の水と刻みて胡瓜揉 花井淳
父逝きし後の歳月生身魂 趙栄順
生身魂壮年の夫恋ひたまふ 安藤久美
生身魂水の流れに逆らはず 飛岡光枝
胡瓜揉む如くに子らを育つ母 山本桃潤
いつしかに妻より上手胡瓜揉 氷室茉胡
手の平の皴の深さよ胡瓜揉み 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】
今もなほ母を恋しと生身魂 玉置陽子
裸にはならぬ覚悟や生身魂 趙栄順
生身魂いよいよ耳の聡きかな 飛岡光枝
【入選】
久々に酔へば謡を生身魂 密田妖子
推敲す一句胡瓜を揉むごとく 山本桃潤
淡海の水の匂ひや胡瓜揉み 安藤久美
母の手と見ゆる我が手や胡瓜揉む 松川まさみ
雷の近づく厨胡瓜揉 田村史生
大瀬戸の藻塩ひとふり胡瓜揉む 安藤久美
いつしかに妻より上手胡瓜揉 氷室茉胡
手の平の皴の深さよ胡瓜揉む 清水薫