古志金沢ズーム句会(2023年6月25日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
余生とて紆余曲折や泥鰌汁 氷室茉胡
胸板の二倍とならん帰省の子 宮田勝
闇を出て命はてたる螢かな 安藤久美
まだ餌にはならざる我ぞ蟻の群 松川まさみ
中華鍋大きく振つて夏料理 稲垣雄二
週刊朝日終刊の日も蟻の列 清水薫
黒あげは一羽の夏の嵐かな 長谷川櫂
手花火のたましひ揺れて落ちにけり 趙栄順
【入選】
古簾エンジン音はたぶん君 川上あきこ
夏料理君の声する京のれん 田中紫春
白山の山守ならん朴の花 趙栄順
風入れん我が身すつぽり裏返し 松川まさみ
くちなしの香りは月の香と思ふ 間宮信子
続きゆく除染労働梅雨晴間 越智淳子
楸邨忌焦土の色の蟻走る 玉置陽子
君に似合ふサブリナパンツ梅雨明ける 花井淳
花火果つこの世の闇のいよよ濃く 玉置陽子
列島のそこかしこ震る冷奴 川上あきこ
風通さん八十歳の記憶にも 泉早苗
国宝を虫干しするも人の技 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】
白山の山守ならん朴の花 趙栄順
余生とて紆余曲折や泥鰌汁 氷室茉胡
川とんぼ一ひろとんで又しづか 酒井きよみ
炎昼の奥より人の来つつあり 宮田勝
父の日の父いとほしく老いにけり 安藤久美
【入選】
短夜や自動で焼けるパン一斤 間宮信子
老いていま自立の一歩雲の峰 藤倉桂
睡蓮の水に映れるしづけさよ 橋詰育子
草木にも晩年はあり夏至の夕 間宮信子
命あれ藜の杖となるまでは 橋詰育子
渓谷に雨や昼餉の洗鯉 越智淳子
胸板の二倍とならん帰省の子 宮田勝
牛蛙愚かであれと鳴きにけり 梅田恵美子
川とんぼ畑に水やる長柄杓 酒井きよみ
ぴかぴかの青葉の色や猿の糞 梅田恵美子
物干して白湯ひと口の涼しさよ 花井淳
週刊朝日終刊の日も蟻の列 清水薫
風涼し金比羅舟に揺られ逝く 趙栄順
つぎつぎに風渡りゆく青田かな 橋詰育子
子がひよこ買つてとせがむ夜店かな 氷室茉胡
ほの温き一椀のあり夏料理 稲垣雄二
列島のそこかしこ震る冷奴 川上あきこ
息をつく静かな世界片かげり 山本桃潤
火を入れて青より青き青山椒 趙栄順
第二句座(席題:夏休み、蚕豆)
・鬼川こまち選
【特選】
胸の内吐露してみたきはじき豆 清水薫
そら豆のさやの堅くして反抗期 川上あきこ
子の髪が草の香となる夏休み 趙栄順
夏休み足裏は川を覚えをり 花井淳
蚕豆や白雲まとふ莢の中 玉置陽子
石割つて恐竜探す夏休み 稲垣雄二
【入選】
夏休み小雨ふる日もプールかな 近藤沙羅
村川は河童であふれ夏休み 飛岡光枝
空豆や赤子すやすや揺りかごに 酒井きよみ
平和つて蚕豆に似ていませんか 清水薫
計画表大きく貼つて夏休み 酒井きよみ
空豆をラピスラズリのごとく茹で 田中紫春
雲梯の隙間の空よ夏休み 田中紫春
宿題は宮に集まり夏休み 酒井きよみ
四肢の色くつきり分けて夏休み 越智淳子
持て余す長き手脚や夏休み 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特選】
貝殻で恋がはじまる夏休み 泉早苗
蚕豆の莢剥かせれば天下一 田村史生
石割つて恐竜探す夏休み 稲垣雄二
持て余す長き手脚や夏休み 玉置陽子
民宿の主は海女や夏休み 間宮伸子
【入選】
子の髪が草の香となる夏休み 趙栄順
莢ばかり肥えし豌豆いかんせん 安藤久美
はじき豆自給自足の二人かな 藤倉桂
孫ふたり来るの来ないの夏休み 梅田恵美子
そら豆をさやごと焼けばさや旨し 川上あきこ
草亀の卵が三つ夏休み 藤倉桂
蚕豆やいつぱいくれて逝かれけり 近藤沙羅