古志仙台ズーム句会(2023年2月26日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
忽然と柩現る春野かな 三玉一郎
鬼とても子あり親あり鬼やらふ 長谷川櫂
朧にて死ぬることさへ忘れをり 川辺酸模
鳥帰るひの字くの字と列を替へ 及川由美子
【入選】
鋤かれずに花のままなりげんげん田 上 俊一
生え変はる歯形の残る春苺 佐伯律子
春愁ひこの骨壺は狭いぞと 青沼尾燈子
うららかや胎児もろとも伸びをせむ 谷村和華子
のどかにも見えて競争蝌蚪の国 齋藤嘉子
砲弾のごとく寒鯉鎮もれり 武藤主明
楸邨の大樹呼びこむ百千鳥 宮本みさ子
さつきからついて来るなり春の月 平尾 福
野焼あと真白き骨のありにけり 三玉一郎
潮風をたらふく食うて海苔育つ 辻奈央子
・長谷川櫂選
【特選】
春朧棺に入れし十一句 青沼尾燈子
蛤は雀の日々を懐かしむ 平尾 福
蛤も口閉ぢるほど冴え返る 辻奈央子
朧にて死ぬることさへ忘れをり 川辺酸模
推敲はいちじく剪定するごとく 齋藤嘉子
【入選】
鋤かれずに花のままなりげんげん田 上 俊一
雛飾る涙のあとのありにけり 那珂侑子
春の鳥こうじ屋を越え番屋まで 及川由美子
水鳥の眠れる闇の白さかな 上村幸三
剪定や音は響けどはかどらず 辻奈央子
風花や菩提寺までの橋長く 阿部けいこ
ロボットの運んで来たる鮪鮨 武藤主明
うららかや胎児もろとも伸びをせむ 谷村和華子
仙台の自慢の根芹この太さ 宮本みさ子
病床の母へ薫れや梅の花 川辺酸模
アラビア文字さわらび萌ゆるごとくあり 齋藤嘉子
二階へと行くたび匂ふ梅一枝 那珂侑子
雛の顔避難の地獄ともに見て 宮本みさ子
砲弾のごとく寒鯉鎮もれり 武藤主明
北帰近き白鳥の嘴泥まみれ 佐藤和子
山を打つ雪解の瀧や凄まじき 服部尚子
子の去りて夫婦二人の年の豆 長谷川冬虹
家ぢゆうの人形並べ雛祭り 谷村和華子
第二句座 (席題:朝寝、下萌ゆ、蜂)
・長谷川冬虹選
【特選】
たちまちに六十余年朝寝かな 長谷川櫂
女王蜂新居はすももの花の下 服部尚子
亡き母の声に驚く朝寝かな 甲田雅子
【入選】
十万億土旅してきたる朝寝かな 齋藤嘉子
羊水の中の記憶か大朝寝 谷村和華子
太腿の花粉まみれの蜂の飛ぶ 佐伯律子
一山を揺るがせ熊の朝寝とや 辻奈央子
遠くより犬の声する朝寝かな 平尾 福
一心に蜜に溺るる熊ん蜂 谷村和華子
土手青むそろそろ寅さん帰るころ 齋藤嘉子
カフェオレとクロワッサンと朝寝こそ 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
この世へと足向けてゐる朝寝かな 三玉一郎
死んだかと間違へられし朝寝かな 齋藤嘉子
なつかしき人と出逢ひし朝寝かな 川辺酸模
【入選】
もう二度と覚めることなき朝寝かな 三玉一郎
一瞥し我を過ぎりぬ熊ん蜂 川辺酸模
排尿のあと底なしの朝寝かな 上 俊一
とりあえず雨戸を開けて朝寝せん 那珂侑子