古志仙台ズーム句会(2022年10月23日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
海苔ひびを挿せば津波の記憶あり 甲田雅子
松手入れ梯子を松のふところに 宮本みさ子
螻蛄鳴くやおまへも国を逃れしか 上村幸三
世の掟軽々かはし衣被 及川由美子
栗もなか割れば宝珠の一つ栗 長谷川櫂
【入選】
母の忌やコスモス揺れてばかりゐる 平尾 福
月清しミサイル乱れ飛ぶ空に 青沼尾燈子
十三夜小声で話す夫婦かな 平尾 福
ハロウィンのお化けに逃げる秋の蝶 那珂侑子
てらてらと滅するいのち鵙の贄 佐藤和子
一抱へ芋がら干せど一握り 武藤主明
折り紙のやうに平らか初秋刀魚 及川由美子
金柑や昴のやうに五つ六つ 上 俊一
葡萄棚くぐり介護士やつて来る 阿部けいこ
一万の鶴に刈田を明け渡す 齋藤嘉子
・長谷川櫂選
【特選】
天空へ鋏の音や松手入 武藤主明
松手入れ梯子を松のふところに 宮本みさ子
在所より今年限りの衣被 武藤主明
【入選】
鹿もまた聞き惚れてゐる鹿威し 上 俊一
末枯れて悟りに遠き余生かな 川辺酸模
助手席に犬乗せ妻の秋日和 平尾 福
さりながら回る地球よ芋煮会 上村幸三
星月夜母の命の尽き給ふ 長谷川冬虹
逝きてなほ足裏ぬくし鵙の声 長谷川冬虹
田仕舞ひの煙のにほふ出羽の旅 甲田雅子
手始めはワクチン予約冬支度 及川由美子
秋晴れの途方に暮れてゐたりけり 平尾 福
第二句座 (席題:秋の薔薇、鮭、火恋し)
・長谷川冬虹選
【特選】
鮭の目の鮭の恨みに見られをり 三玉一郎
生みをへし襤褸の鮭を鳥獣 齋藤嘉子
川底に鮭しろじろと身を晒す 及川由美子
【入選】
病棟が見おろす秋の薔薇の園 青沼尾燈子
まな板に鮭一匹と荒事師 青沼尾燈子
もう何も見えざる鮭の上りゆく 長谷川櫂
亡骸となりても鮭の息しをり 長谷川櫂
鮭の腹裂けてはららご溢れけり 長谷川櫂
秋薔薇きのふの空の深さかな 上村幸三
鮭漁や浜までならぶ酒の樽 服部尚子
・長谷川櫂
【特選】
母の手を双手で包まん火の恋し 谷村和華子
腹裂けば炎のごとくはららごよ 長谷川冬虹
運命に驚いてゐる乾び鮭 平尾 福
【入選】
産み終へて鮭づたづたに流れ行く 武藤主明
荒ぶれば石狩の鮭鼻曲がり 服部尚子
生みをへし襤褸の鮭を鳥獣 齋藤嘉子
肉裂けてまだも上るか老い鮭は 齋藤嘉子
長旅の鮭はおんぼろ鰭も尾も 上 俊一
川底に鮭しろじろと身を晒す 及川由美子
鮭打ちし簗場と伝へ供養塔 宮本みさ子
鮭の腹裂いて刃物が鮮血に 宮本みさ子
乱打して手負ひの鮭を生け捕りぬ 上 俊一
月の夜に上り上りてほちゃれ鮭 甲田雅子
鮭漁や浜までならぶ酒の樽 服部尚子
枯ながら莟のままに秋の薔薇 上村幸三