古志金沢ズーム句会(2022年10月16日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
雲割つて沖に日の差す梅室忌 宮田勝
世はなべて塵となるらん梅室忌 中野徹
大加賀に披講の声や梅室忌 田村史生
梅室忌加賀のふと葱ふとるころ 泉早苗
萩刈るや風の塒をこはしつつ 玉置陽子
病む雁を守れる棹や卯辰山 山本桃潤
片町は時雨てゐるか梅室忌 近藤沙羅
穂高より消しゴムほどや秋の富士 梅田恵美子
縫ひおへば梅室忌なり針数ふ 越智淳子
埋み火をほり熾したり梅室忌 酒井きよみ
眠さうな白山なりや梅室忌 松川まさみ
【入選】
刀研ぐすなはち推敲梅室忌 花井淳
切株に大樹を思ふ梅室忌 花井淳
きんと貼る障子一枚梅室忌 安藤久美
その墓に小鳥のあそぶ梅室忌 酒井きよみ
菊の香のよき連衆よ梅室忌 山本桃潤
空高く通草の笑ひゐたりけり 橋詰育子
捨て舟の秋草に花梅室忌 藤倉桂
秋の社光もろとも餅拾ふ 近藤沙羅
秋燕いつそこのまま能登の人 中野徹
小鳥来るゆつくり覚むる母の夢 趙栄順
小壺には加賀の水あめ梅室忌 酒井きよみ
戦争をおこすはをとこ放屁虫 梅田恵美子
年重ね見ゆるものあり星月夜 中野徹
白山に名残の月や梅室忌 趙栄順
芳墨の発句付句や梅室忌 宮田勝
柳散る水しづかなり梅室忌 飛岡光枝
落し水は瑞穂の国の寝息かな 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
襟立てて友をなくせし顔がゆく 安藤久美
大加賀に披講の声や梅室忌 田村史生
釣忍枯れなんとして空にあり 飛岡光枝
柳散る水しづかなり梅室忌 飛岡光枝
老い母に花のかんばせ今年米 趙栄順
【入選】
かへり花一花を供花に梅室忌 泉早苗
その墓に小鳥のあそぶ梅室忌 酒井きよみ
腸へ沁むひやおろし梅室忌 玉置陽子
白山もあたりの山も冬を待つ 佐々木まき
義仲寺や湖は昔よ秋の暮 越智淳子
玉の句をひろひ集めん梅室忌 酒井きよみ
御濃茶で偲ぶ梅室の忌なりけり 鬼川こまち
秋深き靴音止まる扉かな 松川まさみ
新米や生涯越の米愛す 趙栄順
存分に古びて軽き簾かな 玉置陽子
太陽の孫やひ孫や茨の実 鬼川こまち
茶屋町をそばへが通る梅室忌 酒井きよみ
梅室忌加賀のふと葱ふとるころ 泉早苗
梅室忌路傍の花を祀りけり 宮田勝
白山の氷はじめや梅室忌 梅田恵美子
夫婦とてそれぞれ秘策菊作り 氷室茉胡
片町は時雨てゐるか梅室忌 近藤沙羅
芳墨の発句付句や梅室忌 宮田勝
埋み火をほり熾したり梅室忌 酒井きよみ
梅室忌碑に玉の露しとど 佐々木まき
第二句座(席題=冬支度、下り鮎)
・鬼川こまち選
【特選】
秋の鮎光は影と変りけり 花井淳
理と情のぶつかる夫婦冬支度 間宮伸子
鮎落ちて竹美しき山廬かな 飛岡光枝
枯れ枯れて鮎の落ちゆく夢の中 飛岡光枝
錆鮎の色深みゆく人の世も 近藤沙羅
落ち鮎の落つることなき生の淵 稲垣雄二
落鮎の安らかなりやただ流る 越智淳子
【入選】
白山の渓の香りの下り鮎 花井淳
腹割かぬやうに煮つめる子持鮎 長谷川櫂
母もまたひとつ年寄る冬支度 安藤久美
旨かりし四万十川の下り鮎 橋詰育子
犀川の水澄むころに冬支度 清水薫
秋の鮎さみしき味のしてゐたる 趙栄順
遺されし日々に我あり秋の鮎 山本桃潤
植木屋を手伝ふ晴れ間冬支度 密田妖子
半畳の机一つの冬支度 安藤久美
吾に遠き枯淡の境地下り鮎 氷室茉胡
水に生れ水に落ちたり秋の鮎 趙栄順
部屋ぢゆうを煙らせ食うや下り鮎 橋詰育子
大原の枯れ木を拾ふ冬支度 山本桃潤
下り鮎比良の頂き光りたる 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】
さびしさは売るほどにあり冬仕度 田村史生
錆鮎の骨は二合の酒のなか 宮田勝
ひるがへり鮎落ちゆくや月の川 飛岡光枝
枯れ枯れて鮎の落ちゆく夢の中 飛岡光枝
【入選】
籾殻に埋むる子芋冬仕度 酒井きよみ
冬を待つ設へ終えし応接間 密田妖子
半畳の机一つの冬支度 安藤久美
大原の枯れ木を拾ふ冬支度 山本桃潤
はいはいと妻に従ふ冬用意 氷室茉胡
どこまでにするか思案の冬支度 泉早苗
東京の空美しや冬支度 趙栄順
冬支度一二の友をおとなへり 宮田勝
ひとりゐのしずなかときを炭支度 田中紫春