中秋の名月ズーム句会 2022年9月10日
長谷川櫂選
【特選】
大仏も眼を見開かん今日の月 矢野京子
しんしんと葱の根をはる月夜かな 梅田恵美子
名月や後山に登る人の影 飛岡光枝
戦争を静かに見てるけふの月 趙栄順
大阿蘇の草を一鎌月祀る 稲垣雄二
【入選】
月光のひとひらまとふ伎芸天 玉置陽子
望月や岩湯あふれて奥会津 宮本みさ子
床に伏し生き死に思ふ良夜かな 川辺酸模
戦争の星見捨てずに今日の月 稲垣雄二
コロナになりし友を思ふやけふの月 近藤沙羅
たうたうと月下を中村哲の川 齋藤嘉子
布に刺す花の模様も良夜かな 斉藤真知子
ぷくぷくと濁酒つぶやく良夜かな 玉置陽子
それぞれに心の月や句会せん 趙栄順
月見れば昔を思ふ齢かな 越智淳子
まだ熱き石に座りて月を待つ 飛岡光枝
てんでんに来て広縁の月見かな 曽根 崇
第二句座
【特選】
床に伏し心で仰ぐ良夜かな 川辺酸模
縁側のなき家に住み月祀る 北側松太
ふるさとを恋ふバンドーラ月の秋 玉置陽子
読み返す命の句集月の中 飛岡光枝
亡き人の句も浮かび来て月見かな 西川遊歩
【入選】
猫もまた夢を見てゐる月夜かな 北側松太
友くれし葡萄も供へ月見かな 近藤沙羅
潮騒の加太千軒の月夜かな 玉置陽子
名月や生後五日の嬰の声 越智淳子
月の光夜毎に浴びて柚子は黄に 澤田美那子
妻の膝借りてながめん今日の月 齋藤嘉子
琉球の月を呑み干す古酒かな 三玉一郎
遍路宿月の句会の始まりぬ 近藤沙羅
ひとりぼつちの守宮がのぞく月の窓 玉置陽子
ひと晩は月に寝かせて菊なます 北側松太
痛み一つ我が身にありて月さやか 喜田りえこ
からゆきの墓茫々たり今日の月 川辺酸模
月照らす道上りきて山廬あり 飛岡光枝
父と子が見おろす月の山廬かな 三玉一郎
瓜坊の野原駆けづる良夜かな 川辺酸模
月光やイサムノグチの石の庭 斉藤真知子