古志金沢ズーム句会(2022年8月21日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
腹爆ぜて哀れがうまし子持鮎 稲垣雄二
戦争の一寸みえたる団扇かな 長谷川櫂
蘆刈の刈り残したる夕日かな 玉置陽子
残生を句で貫かん大銀河 稲垣雄二
あをぞらは蒼き空洞鵙日和 宮田勝
雑巾の干からびてゐる敗戦日 中野徹
カンナ一列絶叫の応援団 松川まさみ
爽籟や命ひしめく水の星 松川まさみ
【入選】
男手の卵の焦げ目今朝の秋 花井淳
秋の蚊や黙って来れば叩かぬに 田中紫春
終戦日シャツにかくれし蝉逃がし 間宮伸子
白旗を上げて出てゆけ沖縄忌 山本桃潤
黒胡麻を落雁と見し干菓子かな 越智淳子
こほろぎの低音が好き草に坐す 密田妖子
泥まみれの林檎を思ふ秋出水 近藤沙羅
蟷螂や憤怒の斧を人の世へ 玉置陽子
地獄絵の寺しづもれる原爆忌 泉早苗
戦争の行方しれざる残暑かな 橋詰育子
あらぬものあらぬところへ野分かな 趙栄順
滝落ちて飛沫におどる虹のいろ 梅田恵美子
赤文字で残暑売りたるセールかな 中野徹
涼しさの花となりたる茗荷鮓 酒井きよみ
・長谷川櫂選
【特々選】
眼前に父ゐるごとし大文字 安藤久美
滝落ちて飛沫におどる虹のいろ 梅田恵美子
八月の雨に佇立す展宏碑 泉早苗
新涼の箸さらさらと飯を食ふ 趙栄順
薪はぜる音いさましや薪能 密田妖子
寂声をこの世あの世へ音頭取 酒井きよみ
子を送り妻を送りて生身霊 稲垣雄二
ほうとして道を照らすや盆の月 越智淳子
雨に触れ炎激しや大文字 趙栄順
爽籟や命ひしめく水の星 松川まさみ
【特選】
拍子木を打ちて点さん大文字 田村史生
曖昧に人と別れし秋思かな 松川まさみ
あをぞらは蒼き空洞鵙日和 宮田勝
泥まみれの林檎を思ふ秋出水 近藤沙羅
桃一つ盗らず殺めず豊かなり 山本桃潤
中の間の華やぐ今宵聖霊棚 藤倉桂
地獄絵の寺しづもれる原爆忌 泉早苗
語り部の背も老ひにし浦上忌 鬼川こまち
桃ひとつ水にひやしぬ爆心地 鬼川こまち
柚摘みに秋空深く入りける 山本桃潤
あらぬものあらぬところへ野分かな 趙栄順
今年又朝顔咲かせている余生 佐々木まき
死の刹那吾を想いしか流れ星 間宮伸子
語りけり詮無きことをへうたんに 酒井きよみ
かぐはしき燠となりけり大文字 佐々木まき
一献の酒一匹のちちろ虫 清水薫
ライン河の水減りしとふ秋の風 近藤沙羅
【入選】
昼も夜もクーラーつけて秋に入る 近藤沙羅
南部風鈴父の書斎の静けさよ 藤倉桂
一歳と半ばの頃に敗戦日 清水薫
穂を重く稗がかほ出す暑さかな 酒井きよみ
蘆刈の刈り残したる夕日かな 玉置陽子
火床一つ代々守り大文字 氷室茉胡
残生を句で貫かん大銀河 稲垣雄二
いとほしや夏のあざみに潜る蜂 梅田恵美子
露払ひとなりたる雷雨大文字 氷室茉胡
雑巾の干からびてゐる敗戦日 中野徹
生身魂エンディングノート講ず席にあり 鬼川こまち
空急に高くなりたり梨を食ふ 近藤沙羅
白桃の吐息ただよふ廊下かな 玉置陽子
ホスピスから母と見し日も大文字 氷室茉胡
墓参の列上る下るや五条坂 佐々木まき
カンナ一列絶叫の応援団 松川まさみ
茗荷ずき刻みしだけの酒の当 酒井きよみ
山門の外にひろがる青田かな 橋詰育子
大瀑布山響かせて落ちにけり 梅田恵美子
たわいなき会話嬉しや夜の秋 藤倉桂
滝おちて木曽の山々とどろけり 梅田恵美子
冬瓜や枕にしたき一つあり 橋詰育子
秋風や句帳忍ばす頭陀袋 花井淳
涼しさの花となりたる茗荷鮓 酒井きよみ
ざわざわと嵯峨野の竹や星の恋 安藤久美
高校野球わが全身の若がへる 間宮伸子
第二句座(席題:相撲、鬼灯)
・鬼川こまち選
【特選】
おさなごに負けてうれしき相撲かな 安藤久美
草相撲先陣はまだ幼顔 梅田恵美子
天地を踏み固めてや土俵入り 安藤久美
ほほづきも嚙んで食べたる戦後かな 橋詰育子
草相撲負けて泣く子のそばに立つ 近藤沙羅
思ひ出の中まで朱し山鬼灯 安藤久美
【入選】
鬼灯や姉はあつさり吹き鳴らす 宮田勝
ほほづきの一つに一つ御魂あり 稲垣雄二
網打ちは能登の荒技草相撲 宮田勝
関取や鬢付け油誉れの香 越智淳子
はじめから土俵などなし草相撲 稲垣雄二
細き子のぶつかつていく草相撲 近藤沙羅
老残の小町の鳴らす鬼灯よ 梅田恵美子
鳴らすためいくつ鬼灯潰したる 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特々選】
おさなごに負けてうれしき相撲かな 安藤久美
天地を踏み固めてや土俵入り 安藤久美
老残の小町の鳴らす鬼灯よ 梅田恵美子
ほほづきを鳴らせし友も姥となり 橋詰育子
【特選】
空はいま鬼灯の色埋め尽くす 宮田勝
大関は六十余歳宮相撲 清水薫
大鵬の肌美しや白廻し 田中紫春
ほほづきも嚙んで食べたる戦後かな 橋詰育子
鬼灯や種ぬく舌に吸うちから 鬼川こまち
赤鬼灯もみもみしたる小さき指 佐々木まき
草相撲とうとう父に勝てぬまま 田村史生
鳴らすためいくつ鬼灯潰したる 氷室茉胡
【入選】
鬼灯や姉はあつさり吹き鳴らす 宮田勝
豊作来い大漁来いと相撲かな 田村史生
館内に響く廻しを叩く音 田中紫春
踏んでゆく刈田続きの宮相撲 佐々木まき
網打ちは能登の荒技草相撲 宮田勝
秋刀魚択るくわい頭の相撲取 泉早苗
鬼灯の萎れていよよ真くれなゐ 玉置陽子
ほほづきのゆれて寺町願念寺 清水薫
はじめから土俵などなし草相撲 稲垣雄二
百万石見下ろす卯辰相撲かな 花井淳
草相撲小兵の使ふ猫だまし 間宮伸子
相撲とる出雲の国を土俵とし 山本桃潤
ほほづきを鳴らし母待つ夕べかな 酒井きよみ
鬼灯を鳴らして母や穏やかに 藤倉桂
鬼灯をゆつさゆつさと提げくる子 藤倉桂
大関のふぐり巨大や村相撲 山本桃潤