古志仙台ズーム句会(2022年5月29日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
芍薬の噴き出しさうな莟かな 那珂侑子
赤貝をとんと打ちつけ握りたる 上村幸三
たんぽぽの絮ふわふわと戦避け 青沼尾燈子
咲き満ちて薔薇に余白のなかりけり 那珂侑子
母の日や孤独なだめて母眠る 川辺酸模
【入選】
血と鉄の灼けし匂ひや今年梅雨 服部尚子
囀や糞にまみれしレニン像 石原夏生
涼やかに骨を戦がす目高かな 川辺酸模
徴兵令総動員令麦の秋 鈴木伊豆山
マリウポリてふ美しき名の街聖五月 谷村和華子
砂粒がこそりと動き蟻地獄 上 俊一
万緑の中に幾年能舞台 阿部けいこ
縄文の夜の森にほふ栗の花 石川桃瑪
ひやひやと陵守る蜥蜴かな 川辺酸模
夏来たる鵯すいと白き糞 上村幸三
・長谷川櫂選
【特選】
ぐんぐんと引くは父の手夜店の灯 石川桃瑪
人間を嗤ふ戦争春無慚 上村幸三
眠りより覚めし牡丹ゆれはじむ 甲田雅子
咲き満ちて薔薇に余白のなかりけり 那珂侑子
天と地が組んづ解れつ昼寝覚 青沼尾燈子
【入選】
薄めれば良しか処理水海霧の沖 鈴木伊豆山
おむつ干すことも無くなり鯉のぼり 阿部けいこ
田植終へ雲ひとつなき出羽の国 長谷川冬虹
決心をする前にまづ葛桜 辻奈央子
海霧の底逝きし人々やすらふや 上 俊一
囀りや五山声明凌ぐかに 鈴木伊豆山
咲きそめし花もろともやどくだみ茶 齋藤嘉子
満開の薔薇ばかりなり疲れけり 那珂侑子
徴兵令総動員令麦の秋 鈴木伊豆山
砂粒がこそりと動き蟻地獄 上 俊一
てふてふと一緒に歩く植田道 那珂侑子
まだ己が力を知らぬ素足かな 三玉一郎
のこされしわれわれもまた夏の雲 三玉一郎
扇風機向けて紅白餅冷ます 宮本みさ子
餌やるやいつも遅れてくる目高 那珂侑子
第二句座 (柿若葉、玉虫、電波の日)
・長谷川冬虹選
【特選】
玉虫や仏護りて千年余 青沼尾燈子
魂の黄泉より還る玉虫よ 上村幸三
玉虫の緑の翅の気高さよ 鈴木伊豆山
玉虫やクレオパトラの化粧箱 服部尚子
少年の素振り千回柿若葉 宮本みさ子
【入選】
玉虫や遥か一族土葬の地 阿部けいこ
終生の人と決めけり柿若葉 川辺酸模
柿若葉春慶塗のごとくあり 青沼尾燈子
谺みな虚空へ帰る電波の日 三玉一郎
わが町はほどよき田舎柿若葉 那珂侑子
おはようと駆けて行く子ら柿若葉 谷村和華子
隣国の声の混ぢりて電波の日 辻奈央子
機種変更しどろもどろや電波の日 佐伯律子
電波の日画面に会す句会かな 武藤主明
ピーガーと鉱石ラジオ電波の日 石川桃瑪
・長谷川櫂選
【特選】
谺みな虚空へ帰る電波の日 三玉一郎
玉虫の飛ぶを捕る網はなれ技 石川桃瑪
ピーガーと鉱石ラジオ電波の日 石川桃瑪
【入選】
玉虫や遥か一族土葬の地 阿部けいこ
終生の人と決めけり柿若葉 川辺酸模
柿若葉春慶塗のごとくあり 青沼尾燈子
窯出しの壺に沁みるや柿若葉 武藤主明
その屋根に玉虫が落ち乳母車 及川由美子
柿若葉古里出でて五十年 長谷川冬虹
師のほかに怖いものなし柿若葉 平尾 福
玉虫になり損なつて被曝虫 宮本みさ子
一人居や柿の若葉に力得て 齋藤嘉子
玉虫や仏護りて千年余 青沼尾燈子
抽斗の奥で絶えしか玉虫よ 谷村和華子
玉虫の軽き死骸や土の上 川辺酸模
庭に出て実梅を拾ふ電波の日 平尾 福
卓袱台を囲みし頃や電波の日 長谷川冬虹
玉虫や父母の墓参りたし 川村杳平
玉虫や森の朽ち木にびつしりと 齋藤嘉子