古志金沢ズーム句会(2022年1月23日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
松一本舳先に能登は漁はじめ 安藤久美
しなやかな獣となれり皮手套 玉置陽子
ゆきをんな螺旋階段下で消ゆ 泉早苗
大つらら鬼の住処にあらねども 酒井きよみ
かくれんぼうの鬼とはさびし龍の玉 橋詰育子
かの谷の羊歯や野老や懸蓬莱 酒井きよみ
かんばせを袂に隠す冬牡丹 花井淳
下萌やはるかにマグマ動くらし 橋詰育子
白山の水に馴染みて初句会 間宮伸子
【入選】
さみしさの極まりて山笑ひけり 趙栄順
この国の福は袋に入るほど 稲垣雄二
凍滝の凍り始めを誰も知らず 氷室茉胡
マスクする目玉あふるる交差点 趙栄順
鬼ひそむ気配深々寒の闇 泉早苗
尉飛びて年新たなる茶室かな 山本桃潤
淋しさがわれを養ふ雪ごもり 酒井きよみ
動かざるものが生き延び寒の鯉 氷室茉胡
無となりて空に刺さるや冬木立 中野徹
千代の富士名入りの桝よ鬼やらひ 越智淳子
新海苔や真白き紙縒りまづほどき 越智淳子
底冷えの底に一灯わが家かな 安藤久美
旅人に花の干菓子や加賀の雪 稲垣雄二
うみねこへ一尾投げやる漁はじめ 安藤久美
天辺に生まれ大揺れ冬木の芽 稲垣雄二
・長谷川櫂選
【特選】
ご神水春まだ遠き水の声 梅田恵美子
底冷えの底に一灯わが家かな 安藤久美
湖氷る獣の声をあげながら 山本桃潤
【入選】
松一本舳先に能登は漁はじめ 安藤久美
舞ひ降りし花ひとひらや花びら餅 趙栄順
大つらら鬼の住処にあらねども 酒井きよみ
千代の富士名入りの桝よ鬼やらひ 越智淳子
ほほ痛き風もうれしや初山河 梅田恵美子
とびきりの鯛選ばんや初戎 田村史生
冬ぼたん太地喜和子の大笑ひ 花井淳
かの谷の羊歯や野老や懸蓬莱 酒井きよみ
根深汁家族九人でありし頃 密田妖子
子はそれぞれ一家を成せり福寿草 氷室茉胡
冬日向君の影なき寒さかな 稲垣雄二
目の悪き友より一行の賀状 清水薫
うみねこへ一尾投げやる漁はじめ 安藤久美
第二句座(席題=探梅、鯛焼)
・鬼川こまち選
【特選】
園丁とふたことみこと梅探る 酒井きよみ
白壁によき日のありて梅探る 酒井きよみ
しんがりで皆の声聞く探梅行 中野徹
探梅や一輪ながら心満つ 密田妖子
振りかへる海に影なし探梅行 安藤久美
探梅やまづ貫之の邸まで 橋詰育子
【入選】
この道の果てに崖あり探梅行 中野徹
鯛焼きの一尾で愛を語りけり 稲垣雄二
鯛焼やひふみよいつむ焼きあがる 長谷川櫂
探梅や土佐の山里かけめぐり 橋詰育子
鯛焼やいちごの味に生まれしか 田村史生
海のなき国に鯛焼並びをり 田村史生
残業の机に届く鯛焼きよ 稲垣雄二
鯛焼や小走り運ぶ母のもと 越智淳子
探梅に一輪摘みて終ひ風呂 清水薫
ささ鳴きの道がいざなふ野梅かな 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】
誰がさきに梅を探りし雪の跡 酒井きよみ
鯛焼きの一尾で愛を語りけり 稲垣雄二
探梅や空美しき辺りまで 山本桃潤
探梅や一輪ながら心満つ 密田妖子
探梅や町の上なる日本海 松川まさみ
【入選】
いそいそと鯛焼胸に抱きゆく 松川まさみ
この道の果てに崖あり探梅行 中野徹
探梅や莟ほどけし一つにて 橋詰育子
園丁とふたことみこと梅探る 酒井きよみ
あの人の家見ゆ辺り探梅行 山本桃潤
影もまた固き蕾や探梅行 安藤久美
鯛焼きのぬくもり抱へ青年くる 梅田恵美子
鯛焼の列に並びてかしましく 近藤沙羅
探梅やかたき蕾の空ばかり 梅田恵美子
探梅やすこし奥まで卯辰山 泉早苗
鯛焼や漱石の猫塀の上 花井淳
海のなき国に鯛焼並びをり 田村史生
残業の机に届く鯛焼きよ 稲垣雄二
思はざる吹雪にあふて鯛焼屋 鬼川こまち
探梅やまづ貫之の邸まで 橋詰育子