古志ズーム句会(2021年12月5日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
寒木の数だけしづけさ重ねけり 夏井通江
小春日の瓢箪振れば金平糖 飛岡光枝
雪掻きの雪の重さが故郷かな ストーン睦美
追憶の糸をほぐして毛糸編む ももたなおよ
日向ぼこ庭にしばしや聞き耳頭巾 米山瑠衣
【入選】
エバンスのワルツ踊れる冬帽子 高橋真樹子
しばらくは土に馴染まず朴落ち葉 石塚純子
トロ箱に四角四面や大鮟鱇 飛岡光枝
マスク捨て寒紅つけて外に出たし 大平佳余子
ゆつくりと煮ゆる湯豆腐待ちきれず 安藤文
遠吠えを忘れし犬と冬ごもり 神戸秀子
懐手勝手耳を決め込んで 丸亀葉七子
久女ともノラともならず年暮るる ストーン睦美
枯蟷螂枯れゆくことを知らぬまま 斉藤真知子
降りつもる雪より白し千枚漬 大場梅子
手袋捨てなでてやりたいさすりたい 石塚純子
初日いま真白き山の上とほる 長谷川櫂
足跡の途切れたところに雪達磨 長井亜紀
着ぶくれて散歩の犬の伴をする ストーン睦美
掴まれて物言ひたげな海鼠かな 斉藤真知子
冬の池黙りこくつてをりにけり 安藤文
冬麗のひと日を歩み退院す 城山邦紀
縄跳の波にそつくりひとクラス 神戸秀子
風日和切り干し芋はあめ色に 丸亀葉七子
・長谷川櫂選
【特選】
しばらくは土に馴染まず朴落ち葉 石塚純子
遠吠えを忘れし犬と冬ごもり 神戸秀子
海鼠突く冷たき雨に打たれつつ 飛岡光枝
葛湯吹く手柄もたてず悪もせず 大場梅子
池干しや細く残れる水のみち 米山瑠衣
【入選】
牡丹焚き金の屏風が燃ゆるごと 菅谷和子
何縫ふやあまたの糸と冬ごもり 斉藤真知子
加湿器の音よりほかに音のなし 長井亜紀
降りつもる雪より白し千枚漬 大場梅子
笑顔の目きびしき寂聴冬の星 夏井通江
地下鉄の窓にあまたの冬の顔 斉藤真知子
冬靴にしばしいこへるしじみ蝶 上松美智子
晩秋や残照巨大なホリゾント 林弘美
風日和切り干し芋はあめ色に 丸亀葉七子
第二句座(席題:初日、冬ごもり )
・矢野京子選
【特選】
君とならいついつまでも冬籠 ストーン睦美
冬ごもりいよいよ遠き故郷よ 米山瑠衣
渾沌といふ怪物と冬ごもり 長谷川櫂
【入選】
「太陽の門」をかたへに冬籠り ももたなおよ
ひとつだけ誓いを立てむ初日の出 高橋真樹子
もろもろを紅にして初日の出 長井亜紀
空広くなりたる庭に初日かな 米山瑠衣
初日の出いざ眉をかけ紅ささめ 高橋真樹子
初日の出いつもと同じ志 夏井通江
初日の出時空をゆつくり開きゆく 米山瑠衣
潮騒を聞きつつ迎ふ初日の出 伊藤靖子
富士見えて東京湾の初日かな 大場梅子
仏にもお目にかけやう初日今日 原京子
・長谷川櫂選
【特選】
おおぞらにあたためられてて冬ごもり 高橋真樹子
どの家も冬を籠りてをるらしき 矢野京子
初日の出いつもと同じ志 夏井通江
雪原を染めて転がる初日かな 飛岡光枝
冬ごもりいよいよ遠き故郷よ 米山瑠衣
【入選】
コロナ禍の地球をてらす初日かな 斉藤真知子
ちはやぶる俳句の神と冬ごもり 菅谷和子
空広くなりたる庭に初日かな 米山瑠衣
高々と上りて初日今年又 原京子
初日さす金紙銀紙の障子にも 大場梅子
初日差電車が川へかかるとき 神戸秀子
少年の頬はくれなゐ初日の出 長井亜紀
松の木の枝の先まで初日かな 斉藤真知子
短冊に春の一句や初日さす 矢野京子
冬ごもりしている場合ではなしか 土谷眞理子