古志金沢ズーム句会(2021年11月21日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
降るならば波郷忌に降れ一の霜 篠原隆子
落葉して隠すものなき桜かな 田村史生
真ん中に小さき布団干しにけり 稲垣雄二
ひと山づつ下りくる雪や急がねば 酒井きよみ
かざす手に透く火のいろや忍冬忌 篠原隆子
襖絵の濤も吠ゆるか鑑真に 酒井きよみ
鐘楼の近くに笹子ゐるらしく 橋詰育子
赤銅の月わたりゆく荒野かな 安藤久美
【入選】
都鳥川の向かふは八十路かな 間宮伸子
まどろみてこの世のまほら蒲団かな 梅田恵美子
奥能登の時雨肴に酌みなほす 花井淳
夫逝きてころりと変はるおでん種 氷室茉胡
綿虫やそこそこに生き死んで行く 中野徹
冬麗の命を綱に窓を拭く 稲垣雄二
打ち直し新婚の香の布団かな 稲垣雄二
風よ吹くな蝶いま冬の海渡る 田中紫春
退院の三重丸や古暦 氷室茉胡
小夜しぐれ寝息の波の安らけく 松川まさみ
軒に積む薪に木の香や冬隣 稲垣雄二
幾重にも続く雪山句集編む 山本桃潤
よく晴れて水の紅葉や池四角 密田妖子
大蕪どこから刃入れやうぞ 泉早苗
展宏と鬼柚子の笑む展宏忌 泉早苗
枯蓮に小さき虹の懸かりをり 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】
奥能登の時雨肴に酌みなほす 花井淳
祖父の硯乾くままなり冬に入る 密田妖子
白山のいま眠りゆく静けさよ 趙栄順
【入選】
ひと山に家散らばりて小春かな 橋詰育子
北国の小春日和へ出張す 田村史生
綿虫の心学ばん展宏忌 宮田勝
美しき秘仏開かれ冬に入る 田村史生
風よ吹くな蝶いま冬の海渡る 田中紫春
宮の鶏追ひかける子や七五三 近藤沙羅
軒に積む薪に木の香や冬隣 稲垣雄二
幾重にも続く雪山句集編む 山本桃潤
煮凝りて目玉飛び出す鰈かな 玉置陽子
暮早し冷え冷え硬き石畳 越智淳子
第二句座(席題:氷柱、春着)
・鬼川こまち選
【特選】
龍の棲む瀧の氷柱となりにけり 趙栄順
星と語るつらら夜毎に太りけり 泉早苗
男の世切り裂いていけ春小袖 稲垣雄二
突き刺さる氷柱は師の言葉なり 稲垣雄二
滴一滴月光こぼる氷柱かな 玉置陽子
綿飴が歩いて来たる春着かな 田村史生
【入選】
山の子に氷柱も馳走なりしかな 橋詰育子
かろやかや春着なき身の五十年 梅田恵美子
花で染め草で染めたる春着かな 長谷川櫂
くるくると廻す小袖や春着の子 氷室茉胡
戸のかげに恥づかしさうに春着の子 近藤沙羅
日輪のさすらふてゐる氷柱かな 趙栄順
白馬村青き空より大氷柱 梅田恵美子
襲名の役者は若き春着かな 越智淳子
この軒の氷柱太しや父遠し 篠原隆子
袖広げ衣桁に春を待つところ 山本桃潤
・長谷川櫂選
【特選】
樋割れて氷柱の並ぶ山家かな 橋詰育子
白馬村青き空より大氷柱 梅田恵美子
み熊野の闇に育ちし氷柱かな 玉置陽子
【入選】
十二歳花のつぼみの春着かな 趙栄順
北国や永遠に在れかし大氷柱 篠原隆子
お揃ひの春着が不満あねいもと 泉早苗
日輪のさすらふてゐる氷柱かな 趙栄順
土産とて氷柱一本根こそぎに 松川まさみ
傾きし軒より氷柱垂れにけり 安藤久美
綿飴が歩いて来たる春着かな 田村史生
交し合ふつららのやふな言葉かな 田村史生