古志仙台ズーム句会(2021年10月24日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
最期まで演じきつたる穴惑 武藤主明
背中より水を貰ひし菊人形 武藤主明
月光を纏ひて黒き犬眠る 阿部けいこ
自然薯はもののはじめの姿かな 長谷川櫂
人間を諦めてゐる案山子かな 長谷川櫂
【入選】
しののめの湯気かぐはしき新豆腐 齋藤嘉子
桔梗やおのれを限る五角形 服部尚子
アフガンの野に咲かば咲け曼珠沙華 長谷川櫂
身中の鬼がぶつぶつ温め酒 上村幸三
瓜坊の罪なき貌をしてゐたり 武藤主明
天龍と思へばつぐみ空覆ふ 齋藤嘉子
希望欄あらば書き足す夜長かな 佐伯律子
菊師の眼慶喜公を立たせたり 佐藤和子
・長谷川櫂選
【特選】
新藁の匂ひに眠る牝牛かな 川辺酸模
畑から大きな声す朝の霧 平尾 福
点灯をためらふやうに夜寒かな 上 俊一
身中の鬼がぶつぶつ温め酒 上村幸三
なげうたれ黙す原発すさまじき 青沼尾燈子
【入選】
柚子たわわきのふの脚立そのままに 石川桃瑪
畑仕事終へて荷台に通草の実 川辺酸模
背中より水を貰ひし菊人形 武藤主明
ここかしこジジババ元気菊日和 石原夏生
ざるそばと酒一合の秋思かな 上村幸三
煮詰めればいちじくいよよ陽の香り 長谷川冬虹
カフ巻いて食後二錠や今朝の冬 鈴木伊豆山
菊摘みて笊いつぱいに菊の精 佐藤和子
食へぬのが何やら悔し烏瓜 上 俊一
あばら屋の格は上がりぬ松手入 齋藤嘉子
第二句座(席題:猪、障子貼る、芙蓉)
・長谷川冬虹選
【特選】
瓜坊の一目散の面構へ 上 俊一
教師とて猪割く一人ダムの村 佐藤和子
猪の泥を浴びゐる月夜かな 川辺酸模
障子貼る祖母の遺愛の鯨尺 及川由美子
【入選】
さくらまたさくら障子の穴塞ぐ 宮本みさ子
瓜坊のどれがどれやら一目散 長谷川櫂
厳かに猪の死体運ばれり 谷村和華子
新障子イサムノグチを灯しけり 鈴木伊豆山
晩年は静かなくらし酔芙蓉 武藤主明
意外にも猪の目の可愛さよ 谷村和華子
猪罠を仕掛けて帰る月の道 川辺酸模
猪や熊野は古き神の国 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
いざ子ども障子破れよ洗ふ前 齋藤嘉子
懐に抱へて赤き猪の肉 佐伯律子
縁側に今日貼る障子並べをり 阿部けいこ
俳諧の力にせんと猪食らふ 辻奈央子
毎年でなくてもいいか障子貼る 伊藤 寛
【入選】
障子貼る老いの継ぎめの一つかな 上村幸三
さくらまたさくら障子の穴塞ぐ 宮本みさ子
ばりばりと破る快感障子張る 石原夏生
原発に棲めぬ山里猪走る 甲田雅子
八十は青春の門酔芙蓉 宮本みさ子
猪の泥を浴びゐる月夜かな 川辺酸模
猪罠を仕掛けて帰る月の道 川辺酸模
障子貼りかがやくばかりのわが家かな 齋藤嘉子
二人居の大仕事まづ障子貼る 佐藤和子