古志金沢ズーム句会(2021年10月17日)
第一句座
「梅室忌」または当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
無花果や老いていよいよ夢見がち 玉置陽子
百韻を巻きてたむけん梅室忌 泉早苗
古き日の良き日の匂ひ梅室忌 中野徹
我ら皆太陽の子ぞ柿たわわ 清水薫
待ち侘びて季語となりけり梅室忌 花井淳
菊の露受けて供へん梅室忌 酒井きよみ
白峰や一夜は月の梅室忌 安藤久美
月光の渦巻く苦悩ファンゴッホ 山本桃潤
かぐはしき菊炭つがん梅室忌 安藤久美
梅室忌ことばのひかり研ぎ出さん 松川まさみ
坊守は世話や句作や梅室忌 花井淳
月光の巻き上げてゐる鉋屑 宮田勝
俳諧の鬼が集まる梅室忌 酒井きよみ
【入選】
死するべきところにあらず花野かな 宮田勝
吽形に飽いて阿形へ秋の蝶 田村史生
金婚の二人金木犀の道 氷室茉胡
梅室の骨壺黒し露の萩 花井淳
秋の日や夢の中まで透き通り 趙栄順
胸中に句敵ひとり茨の実 玉置陽子
梅室忌形見の包丁研ぎに出す 氷室茉胡
梅室忌今日のいのちのありどころ 中野徹
好く晴れて加賀の梅室忌なりけり 花井淳
おもしろの天保の花梅室忌 篠原隆子
羊羹に栗しんかんと沈みけり 長谷川櫂
銀杏は月に染まりて落ちにけり 稲垣雄二
梅室忌大きく貼りぬ寺の門 酒井きよみ
空に満つ飛天の楽や梅室忌 松川まさみ
稲刈つて千の安らぎ千枚田 稲垣雄二
・長谷川櫂選
【特選】
梅室忌まだ俳諧のいろはのい 田村史生
梅室忌修す一揆の寺しずか 密田妖子
ひらきゆく菊真白ぞ梅室忌 安藤久美
こつくりと煮込む治部煮や梅室忌 酒井きよみ
俳諧の鬼が集まる梅室忌 酒井きよみ
【入選】
百韻を巻きてたむけん梅室忌 泉早苗
誰が供ふ梅室塚の柿照葉 泉早苗
吽形に飽いて阿形へ秋の蝶 田村史生
梅室の骨壺黒し露の萩 花井淳
萩の葉の露ころがるや梅室忌 近藤沙羅
能登の灯のみぞるる頃や梅室忌 玉置陽子
白山の雪を待つころ梅室忌 篠原隆子
梅室忌加賀の菊姫あたためん 佐々木まき
菊の露受けて供へん梅室忌 酒井きよみ
たふれ伏す萩を起こして梅室忌 鬼川こまち
卯辰山色づく頃や梅室忌 梅田恵美子
かぐはしき菊炭つがん梅室忌 安藤久美
梅室忌夜ごと澄みゆく加賀の月 安藤久美
奉納の祖父の句見るや梅室忌 密田妖子
梅室忌名もなき草も紅葉して 佐々木まき
坊守は世話や句作や梅室忌 花井淳
梅室忌加賀には加賀の情かな 趙栄順
蝗捕り母の縫ひたる布袋 清水薫
第二句座
席題 「囮」、「新蕎麦」
・鬼川こまち選
【特選】
乾びたる足音近し囮籠 田村史生
たかぶりておとりたることふと忘れ 佐々木まき
囮籠紙のやうなる昼の月 間宮伸子
囮籠はつしと一羽落としけり 長谷川櫂
身を隠すいつもの大樹囮守 酒井きよみ
【入選】
黒々と一茶の里の走り蕎麦 篠原隆子
今はもう空っぽなりし囮籠 近藤沙羅
いつまでも空のままなり囮籠 泉早苗
いざ一枚脱いで新蕎麦打たんとす 安藤久美
別荘地の名残りそこここ走り蕎麦 間宮伸子
江戸つ子を気取り新そば塩で食う 間宮伸子
頬白の囮よく鳴く日和かな 長谷川櫂
割箸を割る音よけれ走り蕎麦 宮田勝
囮籠吊るして昼寝してをりぬ 近藤沙羅
蕎麦好きの講釈ながし走り蕎麦 酒井きよみ
・長谷川櫂選
【特選】
今はもう空っぽなりし囮籠 近藤沙羅
新蕎麦や全滅したる一揆跡 密田妖子
走り蕎麦誰憚らず啜るかな 玉置陽子
身を隠すいつもの大樹囮守 酒井きよみ
【入選】
薀蓄の主に飽きぬ走り蕎麦 梅田恵美子
傍らに置きいとほしむ囮かな 花井淳
職退いて新蕎麦を打つあばら骨 密田妖子
伊賀の子の手わざ見せたり囮籠 篠原隆子
鳴きもせずこちら見つむる囮かな 安藤久美
囮籠吊るして昼寝してをりぬ 近藤沙羅