古志仙台ズーム句会(2021年7月31日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
妻の背の灼けて発せる怒りかな 青沼尾燈子
嘶くや梅雨の明けたる相馬郷 甲田雅子
大空にスケボー躍れ雲の峰 長谷川櫂
捩花や少女無口の自己主張 佐藤和子
誰よりも汗かいてゐるビール瓶 伊藤 寛
北斎の浪に舞ふかにサーファーよ 谷村和華子
【入選】
朝涼やほたるぶくろに寝てゐたり 上村幸三
妻となる人かもしれぬ水羊羹 川辺酸模
空へ飛ぶ術が有つたかごきかぶり 川辺酸模
向日葵のブーケや胸に金メダル 武藤主明
コロナ五輪火達磨となる炎暑かな 長谷川櫂
汗しとど雄叫び似合ふ敗者かな 川村杳平
青葉風祝詞の声の良く通る 阿部けいこ
問はれゐてしどろもどろの夏の夢 甲田雅子
大虹や爪先立ちて手を伸ばし 谷村和華子
新幹線北に貫く青田かな 佐伯律子
・長谷川櫂選
【特選】
苔桃の花に息つく山路かな 川辺酸模
鴉さへうんざりしたる暑さかな 那珂侑子
青春の蛇口上向く夏の空 平尾福
行つてみたい国がいつぱい夏帽子 森 凜柚
草に寝て月光涼し坊がつる 川辺酸模
【入選】
四方より青田波寄す新校舎 阿部けいこ
あんみつや聞き役はずつと聞き役 森 凜柚
きらら虫昔の本は美味かつた 上村幸三
扇風機胸にかざして孫娘 石原夏生
夏蝶や風のささやく百葉箱 谷村和華子
塩足して薬缶の麦茶庭師へと 及川由美子
妻となる人かもしれぬ水羊羹 川辺酸模
捨てきれず香水の瓶思ひ出も 谷村和華子
半生を一書になせり更衣 長谷川冬虹
草いきれローマ帝国滅亡す 平尾 福
髪洗ふ被曝の髪の白むまで 宮本みさ子
遥かなる福島想ふ仏桑花 青沼尾燈子
老翁の背籠溢るる布海苔かな 佐伯律子
誰よりも汗かいてゐるビール瓶 伊藤 寛
愚痴壺に納まりきれぬ暑さかな 武藤主明
第二句座(席題:鰻、帰省、睡蓮)
・長谷川冬虹選
【特選】
土用鰻やはらかに箸沈めけり 長谷川櫂
鰻食う江戸の力を我がものに 上村幸三
わが心青田の空を帰省かな 上村幸三
【入選】
声変はりせし子を連れて帰省かな 那珂侑子
未草水の底なる浄土かな 武藤主明
睡蓮やシャトルコックが飛んで来る 長谷川櫂
この国の疲れを取りし鰻かな 森 凜柚
イヤリング似合ふ娘の帰省かな 及川由美子
泣き虫が嫁さん連れて帰省せり 武藤主明
・長谷川櫂選
【特選】
うなぎ屋の長き暖簾に誘わるる 武藤主明
わが心青田の空を帰省かな 上村幸三
鰻焼く煙の中や太き声 及川由美子
【入選】
又してもかなはぬ帰省烏兎十年 佐藤和子
睡蓮の眠れる頃に句会かな 石原夏生
ふんどしの父の速さよ鰻掻 川辺酸模
さながらに日輪降りし睡蓮よ 長谷川冬虹
睡蓮や歩いてみたき水のうへ 森 凜柚
うなぎ屋のメニューは今も鰻だけ 阿部けいこ
うなぎ食べあれが母との最期かな 那珂侑子
帰省子や低き裏山細き川 青沼尾燈子
すぐにまた眠つてしまふ未草 平尾 福
死ぬほどに列車の混みし帰省かな 甲田雅子
桃の香の駅に降り立つ帰省かな 齋藤嘉子
あな短か五十年目のうなぎ包丁 齋藤嘉子